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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
108/321

108.美容師~緊急依頼の説明を受ける


「みんなよく集まってくれた。

 昨夜から待機してくれている者達、朝早くから来てくれた者達、いち早く情報を届けてくれた商人と護衛についていた冒険者達にも感謝を。

 長く待たせたが、ようやく方針が固まった。皆が予想していた通り、今回の件は冒険者ギルドからの緊急依頼とさせてもらう。

 Eランク以上の者達は悪いが強制参加とさせてくれ。Fランクの者達は後方支援、Gランクの者達はその補佐に回ってもらう」


 ギルマスが良く通る低い声で皆を労い、注目を集めた。


「まずはここにいる者達で情報共有といこうか。キンバリー、頼む」


 後を任されたキンバリーさんがギルマスの横に一歩進み出て、紙の束に目を落として読み上げる。


「昨夜、セタの街から来た商人と護衛に付いていた冒険者からの証言によると、アンガスの峠からこのニムル平原側に降りてくる途中、土蜘蛛に襲われたということだ。

 幸いその時は1匹だったので撃退に成功したが、知っての通り土蜘蛛が1匹いたということは、ほぼ間違いなく近くに群れがいるはずだ。

 情報が入ってすぐにギルドで雇った斥候役の冒険者数人に現地の状況を探ってもらったところ、どうやら土蜘蛛はアンガスの峠道から少し外れた場所にある洞窟を出入りしていることがわかった。

 その奥に土蜘蛛の群れがいる可能性が高い。予想では50~100匹は覚悟してくれ。

 他にも魔物はいるだろうし、3人以上でパーティーを組んでいる者以外の者達は、それぞれ相談して臨時でパーティーを組んでくれ。

 緊急依頼の報酬は現地で討伐を行う者は1万リム、後方支援を行うものは2千リムとする。

 ちなみに倒した魔物の魔核、討伐部やその他権利は戦闘に参加した者達で相談して決めてくれ。それについてはギルドから口を出す事はない。

 ただし、余計な揉め事は起こさないように気を付けてくれよ。こちらからは以上だ。

 質問がなければ、皆速やかに行動してくれ。1時間後に門の前に集合だ」

 

 ギルド内を一周見渡して誰からも質問が来ないことを確認し、キンバリーさんがギルマスに場所を譲る。


「相手は単体でEランク、群れで襲ってきたらDランク相当だ。なるべく臨機応変に立ちまわれるようにパーティーを組めよ! 

 ここにいる中で一番ランクが高いのは……お前達かCランクパーティー『狼の遠吠え』。なるべくでいいから他の奴らにも目を向けておいてくれ。死人はできるかぎり出したくないんでな」


 どうやら彼らは、DランクからCランクに上がっていたようだ。


「わかりました」


「了解っす」


「俺に任せておけ」


 名指しで頼まれた彼らは、それぞれの言葉でそれに答えた。

 そして、ギルマスの目が彼らのそばにいた僕を捉える。


「お、ソーヤか。悪いがお前も参加してくれ。良ければこちらで参加するパーティーを紹介してもいいが――」


「ギルマス、ソーヤ君はうちのパーティーで引き受けますよ。すでに話はついていますし」


 顔馴染みだからこそ気を利かせてギルマスが提案してくれたのだが、ケネスさんがやんわりと断ってくれたので、そういうことですと頷いておく。


「そうか。こいつらと一緒なら安心だな。

 よかったぜ、うるさいアイツに見つかったらなんて言われるかと思うと、紹介するパーティーを吟味しなくちゃならんと――」


「ソーヤさん! 前線に出るのは認めませんよ!」


 どうやらギルマスの言う『うるさいアイツ』のお出ましのようだ。

 マリーが駆け寄ってくるなり、つま先でギルマスの脛を蹴飛ばした。


「いてぇな! 何すんだいきなり」


 脛を抑えて文句を言うギルマスに、負けじとマリーが口撃する。


「こそこそと人の悪口を言うからですよ!」


「なんだよ、聴こえてたのかよ」


 バツが悪そうに顔を背けたギルマスに、


「やっぱりわたしの悪口を言っていたんですね。なんだかそんな気がしたから、蹴っておいてよかったです」


 背後に黒い影を纏わせたマリーが笑顔で睨みつける。


「ちっ、こいつどんどん性格が悪くなりやがる」


 ぼやくギルマスを押しのけるように僕に近づき、


「ソーヤさん!」

 

 マリーが肩に手を伸ばしてくる。


「はいっ!」


 何故か足が床に縫いとめられたように動かないので避けることもできず、僕の両肩にマリーの手が乗せられた。


「今回は後方支援組みに入って下さい。前線に出てはダメですよ。わかりましたね?」


「でもマリー。僕だってEランクの冒険者なわけだし、少しでも前線に出たほうが――」


「ダメです!! ソーヤさんは確かにEランク冒険者ですが、レベルが基準値に達していません!」


 僕の言葉を遮るようにしてマリーが声を荒げた。


「レベルが足りないってどういうことだ? 例の問題は解決したんだろ?」

 

ギルマスが怪訝そうに尋ねてくるので、マリーにそれ以上は言わないでほしいと目で訴えると、気まずそうに一瞬視線を床に落としたが、何かを振り切ったように再び口を開いた。




お読みいただきありがとうございます。



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