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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
107/321

107.美容師~パーティーへの参加を誘われる

「ふーん、まぁその件はおいおいとだね。

 それで今回、何故魔物に襲われるのが普通のことなのに、こんなにも騒ぎになっているのかということなんだけど、襲ってきた魔物が問題視されているんだよ」


「そんなに強い魔物なんですか?」


「強いといえば強いね。Eランクのソーヤ君からしてみれば、マッドウルフと同レベルといえばわかりやすいかな?」


「ということは、その魔物もEランクの?」


「うん、土蜘蛛という魔物なんだけどね。単体だとEランクで群れになるとDランクと規定されている。

 単体でいることはほとんどなくて、1匹見つけた段階で近くに群れでいるのがほぼ確実というやっかいな魔物さ」


 ケネスさんが嫌そうに顔をしかめた。

 1匹見つけたら他にもたくさんいる……なんだかGみたいな生き物だな。


 それに蜘蛛の大量発生。

 うじゃうじゃ……想像するだけで気持ち悪い。


「その土蜘蛛っていう魔物は、普段は見かけない魔物なのですか?」


「この辺りではほとんど見かけない魔物だね。

 繁殖力も高いから、見つけた段階で殲滅させないとかなりのスピードで数を増やすし、国からも討伐指定されている魔物だよ。

 というわけで、冒険者ギルドからの緊急依頼で昨夜から冒険者が集められているというわけさ。

 ソーヤ君もEランクなら緊急依頼参加の対象になるし、せっかくだから私達と一緒に行かないかい? 

 確かソロで活動しているんだろ? 剣士のソロだと土蜘蛛相手はちょっと厳しいものがあるよ? 

 グラリスにも頼まれているからね。このままソロだとどこか寄せ集めのパーティに組み込まれるだろうし、私達と一緒の方が安全だと思うよ」


 Dランクの冒険者パーティーと一緒に行動できるのか。

 それはかなりの安心材料だ。


 師匠以外の魔法使いにも興味はある。

 ただ、こちらをあまり詮索されないように気をつけなくてはいけないという懸念があるのだが……。


「ケネス、パーティーへの勧誘っすか? それなら俺っち達にも事前に相談くらいしたらどーなんすか?」

 

 いつのまにかランドールさんとテーブルについて酒を飲んでいたカシムさんが、聴き耳を立てていたのか、急に会話に参加してきた。


「勧誘うというか、今回限りの共闘だね。

 ほらっ、カシムもグラリスにはお世話になっているだろ? その槍の購入資金が足りなくて30回払いの分割にしてもらったはずだ。

 ソーヤ君はソロの剣士みたいだし、変な寄せ集めのパーティーに入れられて怪我でもしてみろ。『どうしてお前達のパーティーに入れてくれなかったんだ!?』と絶対文句の1つは言われることになるぞ」


「うっ……それは困るっす。わかった、俺っちはソーヤを歓迎するっす。ランドールも文句はないっすよね?」


「ん? なんの話だ? お前達がいいなら、俺はいいぞ」


 カシムさんが見ていないのをいいことに、コップに注がないで酒瓶を直接口にしていたランドールさんが急いで酒瓶をテーブルに戻した。


「ああ!? お前、また一人で勝手にぐびぐび飲みやがって。それにこれは俺っちが買った酒なんだぞ、ちょっとは遠慮して飲めよ」


 テーブルの上からひったくるように酒瓶を取り、軽く振って確かめたが、どうやら中身は全てランドールさんの胃袋に入ってしまったようだ。


 カシムさんは悔しそうにランドールさんを睨みつけていたが、やがて諦めたようにため息を付き、給仕の職員にお代りを頼んでいた。


「ランドール、カシムは了承してくれましたので、今回の緊急依頼に限ってソーヤ君を我がパーティー『狼の遠吠え』に迎え入れることにしました。あまり迷惑をかけないように注意してくださいね」


 諭すように言い含めるケネスさんに向け、ランドールさんが発した一言は、


「ん? よくわからんが、俺に任せろ」


 やっぱりよくわかっていないようだった。

 大丈夫か、この人。




 それからしばらく、ケネスさんと情報交換というか冒険者に必要な知識を教えてもらっていると、周りがざわざわし始めた。

 なんだろうと思いケネスさんを見ると、


「ほら、ギルマスの登場だよ」


 視線を辿ると、階段を下りてくるギルマスのゴルダさん。

 後ろに控えるキンバリーさんと目が合い、軽く微笑みかけられたので会釈しておく。


「なんだいソーヤ君、キンバリーさんと知り合いなのかい?」


「ええ、色々と相談に乗ってもらっています。ケネスさんも?」


「ああ、彼は元Cランクの割と名の売れた剣士だったからね。私がというよりも、ランドールのことで何度か相談に乗ってもらってね」


 目を細めて何かを思い出すように苦笑いしている。

 きっと、何も考えなしに動こうとするランドールさんの手綱を握るのはそうとう大変なのだろう。


 気苦労がしれないケネスさんのことを不憫に思うが、それもお互いを補い合うパーティーの役割分担ともいえる。

 

 カシムさんもあまり細かいことには拘りはなさそうだし、ついさっきも簡単にケネスさんに言い含められていた所を鑑みるに、このパーティーの決定権は間違いなくケネスさんにあるのだろう。


 だからこそ彼が色々と考え、時に相談し決定したことに、ランドールさんは安心して委ねているのかも。




お読みいただきありがとうございます。


ご意見ご感想、評価等頂けると更新の励みになるので嬉しいです。


今度とも、宜しくお願い致します。


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