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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
106/321

106.美容師~狼の遠吠えと再会する

 

 朝6時に起床し、朝食を食べて冒険者ギルドに到着。

 何故か今日は、ギルド内に人が多いような気がした。


 5つあるテーブルは全て埋まっているし、壁際に何組かの冒険者のパーティーが固まっている。

 その中に見覚えのある顔を見つけたので、情報収集がてら近づいてみることに。


「おはようございます。僕の事、わかりますか?」


 大剣を背負った男に声をかけると一瞬警戒されたが、かわりに横にいたローブ姿の男がにこやかに対応してくれた。


「やぁ、たしかソーヤ君だったかな。久しぶりだね。元気そうでなによりだよ」


「確かグラリスの所で会った……普通種の狼を見たことがあるって人っすよね」


 槍を片手に、もう一人が会話に加わる。

 そう、彼らはグラリスさんのところで知り合ったDランクパーティー『狼の遠吠え』だ。

 

 やっと思いだしてくれたのか、大剣の男が


「あの時の……覚えてないが、グラリスの知り合いなら俺達の知り合いだな。うん、まぁ頑張れ」


 肩をバシンバシンと叩いてきた。

 覚えていないのか。

 他の二人がいてよかったよ。


 誰だお前? なんて警戒されたままだと面倒なことになっていたかもしれない。

 叩かれた肩の痺れを我慢しながら、一番まともそうなローブ姿の男に話を聞いてみることにした。


「なんだかいつもより人が多いような気がするんですが、何か御存じだったりしますか?」


「うん? 私達は外の街に出ていることが多くていつもここにいるわけではないから、ソーヤ君の言ういつもっていうのはわからないけれど、今のこの現状の説明ならできるよ?」


「でしたら是非教えてもらえると助かります。その前に、宜しければお名前をお伺いしてもいいですか?」


 頭の中だけとはいえ、いつまでもローブのとか槍のとかでは悪いと思って。


「ああ、まだ名乗ってなかったね、すまない。私の名前はケネスという。こっちがカシムでその体だけが大きくて礼儀の欠片もない男がランドールだよ。

 失礼だし手が早いのが難点だが、悪気はないので勘弁してやってくれ。改めてよろしくね」


「よろしくっす」


 カシムが陽気に片手を上げて挨拶しランドールはというと、


「まぁ、細かいことは気にするな」


 今度は背中を叩かれた。


 何か衝撃を増幅するスキルでも持っているのだろうか、ジンジン痺れて地味に痛い。

 

 だが「ガハハ」と豪快に笑う姿を見ていると、ケネスさんの言うとおり、悪気はなさそうだ。


 きっと本能の赴くままに生きているのだろう。

 そういう人だと納得することにした。


「それでギルドのこの状況についての説明だったね」


 ケネスさんが話を切り替えるように、咳払いをひとつ。


「ソーヤ君はセタの街には行ったことがあるかい? もしくはアンガスの峠道でもいいけど」


 セタの街?

 アンガスの峠道?

 うーん、聞き覚えはない。


「知りません」


「そうかい。なら最初から説明するね。この街の北西方向、ニムル平原のずっと先にアンガスの峠と呼ばれる山があってね、その先にセタと呼ばれる街があるんだ。

 セタの街に行く為にはアンガスの峠を通らないと行けないんだけど、当然魔物が出るので商人達は冒険者を護衛として雇うのが普通なんだよね。

 それで昨夜、セタの街からアンガスの峠道を通って複数の商人と護衛の冒険者がこの街にやってきたわけなんだけど、どうやらやっかいな魔物に襲われたみたいでね。それで今朝からこんな騒ぎになっているようだよ」


「そうなんですか。でも商人達は常に冒険者を護衛として雇っているってさっき言いましたよね? 魔物が出たり襲われたりするのは普通のことではないんですか?」


「うん、確かにソーヤ君の言うとおりだね。アンガスの峠を越えてそれぞれの街に辿り着くには全体で早くても7~10日程度はかかるから、少なくても数回の戦闘はしなくてはいけないんだ。

 一度も魔物に襲われないなんてことはめったにないから、護衛の依頼を受けられる冒険者は最低でもランクEからとされているんだよ。

 それに依頼主の商人は複数のパーティーを集めて、纏めて雇うんだ。その分の依頼量は必要になるけど、お金をケチって命の危険を冒すよりはマシだしね」


「そうなのですね。なら僕もEランクになったので護衛の依頼が受けられるということか」


 採取と討伐以外の依頼があることを知り、一度くらいは受けてみてもいいかと頭の片隅にとどめておく。


「おや、もうEランクになったのかい? 先日、グラリスの所で会った時はまだ駆け出しだって聞いていたけれど、もしかしてかなりのやり手なのかな?」


 ケネスさんが興味深そうに聞いてきたが、


「いえいえ、まだまだ駆け出しに毛の生えたようなものですよ」


 とりあえず謙遜しておいた。

 ローブと杖という姿から、魔法使いの職業だと思われるので、変に興味を持たれて僕の師匠について聞かれては困るからだ。




お読みいただきありがとうございます。


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