104.美容師~調色スキルを使いこなそう
師匠も寝ていることだし、ノートを出してステータスの確認をしてみることに。
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名前 ソーヤ・オリガミ
種族 人間 男
年齢 26歳
職業:魔法使い
レベル:2
HP:30/30
MP:30/30
筋力:18
体力:18
魔力:20
器用:36
俊敏:20
テクニカルスキル:シザー7 1400/???
《Lv1》カット
ユニークスキル:言語翻訳《/》、回転《Lv5》、観察《Lv4》、好奇心耐性《Lv1》、調色《Lv2》
スキル:採取《Lv4》、恐怖耐性《Lv2》、身軽《Lv2》、剣術《Lv3》、聴覚拡張《Lv4》、気配察知《Lv3》、投擲《Lv3》、集中《Lv5》、忍び足《LV3》、脚力強化《Lv3》、心肺強化《Lv2》、精神耐性《Lv1》、調合《Lv1》、《魔力操作Lv2》、《水属性魔法Lv3》
称号:女神リリエンデールの加護
装備:カットソー、ジーンズ、シザーケース、腕時計、短剣×2、ナイフ、革の防具一式、黒曜の籠手
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レベルは相変わらず2から上がらない。
いつになったら3になることやら。
最近、またマリーが怪しみ始めたし、そろそろ何か手を打たないとまた騒ぎにされかねない。
水属性魔法はレベル3になり、魔力操作も2になった。
もう少し魔力操作のレベルが上がれば、魔法を使う時に細かい調整が効くようになると師匠が言っていたけれど。
さて、この中で何か使えるスキルはないものか。
またはヒントになるだけでもいいのだが。
上から順番に眺めてみる。
テクニカルスキルは順調に日々の練習で数字を増やしてはいるが、まだ変化は現れない。
次のレベル2に上がる数字が???なので想像するしかないのだが、2000なのか3000なのか、はたまた10000なのか。
気長に待つつもりだ。
次にユニークスキル、一般的ではない個人に与えられるスキルでオリジナルなもの。
《回転》《観察》《好奇心耐性》《調色》……《回転》は魔法には関係ないか……ブーメランは投げることで回転するからスキルを使う意味がないような。
むしろ使ってみると何かがあるのだろうか?
より回転スピードがUPするとか?
試してみる必要はあるかも。
次は《観察》か、このスキルは個人的にはかなり使えると思っている。
リリエンデール様はあまり関心がないようだったが、レベルが4に上がると格段に使い勝手が良くなった。
魔物の動きを目で追いかけやすいし、物の印象や人物のことがなんとなくわかるというか、説明は難しいが意識していなくても瞬時に発動してくれるので助かっている。
しかも最近わかったのだが《集中》と同時発動すると、魔物の動きをコンマ何秒かだが先読みすることもできたりする。
マッドウルフのフェイントに引っかからず冷静に対処できたのも、この二つのスキルのおかげだ。
他のスキルの増幅効果がある《集中》はもはや外せないスキルとなっている。
《観察》と《集中》は魔法行使においても有用かもしれない。
《好奇心耐性》はリリエンデール様の加護対策専用のものだし、最後に《調色》は……色を作ったりするのに補正がかかるスキルのようだし、魔法には関係なさそうだ。
いや、待てよ。
僕の使う魔法は水属性の魔法で、水は無色透明なわけだけど、これに《調色》を使うとどうなるのだろう。
チラリと師匠を横目で見るが、気持ちよさそうに眠っている。
目の前に僕と言う他人がいるのに、それだけ信頼してくれているということか。
だとすればその信頼には応えたい。
師匠を起こさないように小声で魔言を紡ぎ水を生み出す。
それを一塊りに操作し、お馴染みの手のひら大のスライム形状に。
頭頂部に角を立たせ完成。
テーブルの上でプルプルと揺れている。
ここで、スキル《調色》発動。
角の先端に視点を合わせ、とりあえず赤色になるようにイメージをする。
けれど、角は透明なままだ。
色が変わらない。
ダメか。
《調色》を発動させたまま《集中》も使い、より赤色に染まるイメージを高める。
透明な水を赤くするのだから……ナイフで指先を切り角の先端に1滴垂らした。
《魔力操作》を使い、侵食する赤を角の根元まででとどめる。
できた。
体は透明で角だけ赤いスライムの完成だ。
でもこれだと《調色》スキルは関係ないよな。
自らの血で水を赤くしただけだし。
やっぱり今回の問題解決には使えそうにない。
ダメか。
ため息をついて、ソファーにもたれかかる。
そもそも透明の水に色をつけたからといって、どうなるというのだ。
無色透明のままのほうが、風景と溶け込みやすく視認しづらいので攻撃としては理にかなっている。
わざわざ水の刃を見やすくして、どんな利点があるのか。
待てよ。
見やすくする……あった、利点が。
少なくとも今回に関しては僕にとって利点がある。
この《調色》スキルをもう少しうまく使いこなせるようになれば……。
「うーん、寝ちまったみたいだね。久しぶりにオリジナルの魔法を使ったから思いのほか疲れが出たのか……それにしてもソーヤ、あんたいったい何をしているんだい」
腕を天井に向けて伸びをし、体を左右に軽くひねってストレッチしていた師匠の目がテーブルの上の物にとまり、ついで僕を見てきた。
問いかけられているのはわかるのだが、今の僕にはそれに解答する余裕がない。
《魔力操作》に《調色》、それに《集中》でブーストをかけているので師匠のことは視界には入っているが正直、水の操作で手いっぱいなのだ。
師匠が何を気にしているのか、それはテーブルの上で揺れるスライムのことだろう。
ただし、そのスライムは自然界ではまず見かけないモノだと思われる。
何しろ、7色の斑模様をしたスライムなのだから。
師匠が「そのスライムはなんだい?」と聞かずに、「何をしているんだい?」と僕に聞いてきたのは、その現象を起こしているのが僕だと理解しているからだろう。
そう、目の前にいる7色斑模様のスライムは僕の製作したものだ。
角は赤色、その下は青色、紫色、黄色、緑色、橙色、桃色、子供の遊んだ塗り絵のようなスライムがここにいる。
そんなスライムが完成しているのに僕が何に集中しているかというと、《魔力操作》でそれぞれの色達が混ざらないように制御しながら色の並べ替え、つまり色ごとにスライムの体の中を移動させているというわけ。
これがまたとんでもなく難しく、ついさっきまでは色が混ざりあい、汚い色のスライムを何度も作り出してしまっていたのだ。
7色の色を別々に操作し、上から下まで一巡り。
ノルマ完了。
レベルが4に上がった《調色》で全ての色を消し去り、無色透明に戻した。
「ソーヤ、説明してくれるとありがたいのだけど」
質問に答えない弟子に向け、師匠が問いを重ねてくる。
それに対して僕はというと、
「師匠、見てもらいたい魔法があります」
言うが早いか、師匠の返答も待たずにさっと抱きかかえて車椅子に乗せ、秘密の特訓場へと急ぐ。
師匠はそんな僕を興味深く見つめ、されるがままでいてくれた。
きっと止めても無駄だとわかってくれたのだろう。
好きにさせるしかないと。
お読みいただきありがとうございます。




