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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
100/321

100.美容師~亜空間に招待される

いつも読んでいただき、ありがとうございます。


記念すべき100話目となります。


毎日少しずつ書き貯めて、なんとかここまで来ました。


なるべく早く更新できるように、


今後も頑張りますので、おつきあいください。






「ソーヤ、ストップ! もっと詳しく話しておくれ」


 話の途中で師匠に止められたので、アクアバレットを3つ飛ばした所から詳しく説明をした。


「あんたも無茶をするね。うまく命中したからよかったけど、3つ全部外れていたらノーダメージで囲まれていたんだよ」


「外れていたらそうなりますね。当ってよかったです」


「よかったですじゃないよ、まったく。

 わたしにもマリーの気持ちがわかったよ。あんたは誰かが見張っていないとダメだね。放っておいたらどんな無茶をするかわからない」


 やれやれ、と師匠がため息をつく。


 自分ではそんなに無茶なことをしたつもりはないのだけど……それに狼親子を助ける為には逃げるという選択肢は選べなかったわけだし。


「すんだことはまぁいいさ。それに戦闘の組み立て方自体は悪くない。

 魔法の威力もまずまずのようだし、あとは魔力制御で3つ全てが狙い通りの場所に当る練習をするんだね。

 それに中級の魔法を覚えれば、単体じゃなく複数に使える面攻撃の手段もある。それなら狙いも曖昧なままで大丈夫さ。

 そうだね、とりあえず1つ教えておくとしようかね。ソーヤ、悪いけれどわたしを裏の庭まで運んでくれるかい?」


「裏の庭ですか? 運ぶのは構いませんが、どうやって? 抱き上げますか?」


 ステータスの上がっている今なら、師匠の一人くらい抱き上げて運ぶことは可能だと思うけど。


「あんたみたいな若い男に抱き上げてもらうのも悪くはないがね。カリムに裏庭に行くと言っておくれ。その為の道具を貸してくれるから」


「わかりました。では行ってきます」


 部屋を出て店の表に向かう。

 リンダさんとメェちゃんは、またお出かけのようだ。

 カリムさんが机に向かって椅子に座り、帳簿を付けていた。


「カリムさん、師匠が裏庭に出たいと言っているんですが」


「ちょっと待て、いま行く」


「はい、なんでもその為の道具を借りてきてほしいと」


「道具だけでいいのか? そう言われたのか?」


「ええ、カリムさんから借りてくるようにと」


「そうか……ついてこい」

 

 カリムさんが通路の途中で曲がり、茶色の布で覆われたものを引きずり出した。

 

 布を取ると、それは車椅子のようなものだった。

 木で出来た簡素な椅子に歪んだ木の車輪が2つついている。


「これを使え。使い方はわかるか? ゆっくり動かせよ。あとイリス様が落ちないように気を付けてな」


「わかりました。では、お借りします」


 背中部分についた持ち手を押して進むと、車輪が歪なのかガタガタと振動がある。

 

 木製なのでこんなものかもしれないが、グラリスさんに頼んで金属のホイールを作れば少しはマシになるのではないか?


 師匠の元に戻り、抱き上げてそっと車椅子に座らせた。


「ありがとう、ソーヤ」


 余りの軽さにびっくりし、顔に出そうになったが笑顔で覆い隠した。

 やっぱり歳のわりには元気そうに見えても、体は衰えているのだろう。

 

 膝の上に布をかけて、ゆっくりと押していくとガタンガタンと一定のリズムで衝撃が走る。


 決めた。

 この車椅子、借りていって改良しよう。


 本当はゴムがあれば衝撃を吸収できていいのだけど、この世界に来てからまだ見たことがない。

 それもグラリスさんに相談だ。


「そこの奥を右に進んでおくれ」


 言われたままに車椅子を押していくと、布で隠された扉を発見。


「ここのことはリンダやメイには内緒だよ」


「わかりました」


 扉を開けると、薄暗くて何も見えない。

 風を感じないし、室内のように思える。

 ここが庭なのか?


『大気に宿るマナよ、我が呼び声に答え、灯りを灯せ。トーチ』


 師匠の手の平からパリンと乾いた音がして、周囲が明るくなった。

 部屋は小学校の体育館くらいの広さがあり、部屋の四隅から光が溢れている。


 壁は木製で仕切られていて天井があり、足元は土だ。

 室内に作られた庭ということか。


「今のは灯りを作る魔法で『トーチ』だよ。火属性の魔法に分類されるから、火の魔素を込めた魔玉を使わないと発動できないがね。便利だからソーヤも覚えておいて損はないよ」


「魔玉は使用すると壊れるのですか?」


 師匠の手の平には何も残っていないし、何かが壊れるような音がしたので気になった。


「一般的にはそうだね。中には大量の魔素を込めた特殊な魔玉もあるので、魔素を使い果たさない限り使い続けることができるものはあるがね」


「それは便利ですね」


「ああ、確かに便利は便利なんだけど余り流通しないのと、いざ購入しようとしても高額過ぎて普通の人には手がでないのが現実だね」


「だから一般の人は使い捨ての魔玉を利用すると?」


「そうさ。使い捨ての安価な魔玉だって十分に貴重なものなんだよ。

 特殊な魔玉と比べるから安いだけで、ポンポンと使うには大金が必要さ。それに用は使い方次第だからね、余り馬鹿にするものではないよ」


「わかりました。それで師匠、ここで魔法の修行をするのですか? そもそもこの部屋はなんですか? 外から見る限り、こんなに広い空間があるとは思えないのですが」


 別に師匠の店が小さいと言っているわけではない。

 他の店舗に比べればそこそこの大きさがあるのだが、この部屋のスペースは外から見る限りはないように思えたのだ。


「ここはね、ちょっと特殊な空間だよ。若い頃に手に入れた貴重な魔法道具と錬金術で作られた部屋なんだ。

 ちょっと説明するのが難しいんだけど……ソーヤ、『亜空間』って言葉がわかるかい?」





お読みいただきありがとうございます。


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