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終焉

作者: よしぼう

たかがお金…されどお金。人はみな、お金を自分の価値観と基準を定め、決してそれだけじゃないって理解する必要もあるはず。

行きつけの、半ば隠れ家的存在ね小料理屋に

今日は尊敬する先輩を連れて来たからと…仕事仲間の後輩に接待されてしまった。

喜んでいるのか、嬉しいのか、ひたすら呑むスピードは早く、自分のグラスが空く頃には3杯目に突入する勢い。

ほろ酔い気分で大将らしき人物に、自分が尊敬する人物であると淡々と誉めちぎる後輩。

いつの間にか、目はうつろになり、呂律が回らなくなりながらもトイレに駆け込んでしまった。

後輩のいない間に、大将が話しかけてきた。

よほど嬉しかったんでしょう。友達と呑みに来るなんて久しぶりですから…と、優しい眼差しで語りかけてきた。

10才年上の僕だが、話の内容は一寸の違和感もなく付き合ってる。若い子が性に合ってる気がする。屈託ない会話が、この年になると心地よいのだろうか。

ひとり干渉に更けりながら…かれこれ30分にはなろうかとしている。暴君はへたれこんでるのか…。

すかさず、トイレにうずくまった後輩を抱きかかえて、店を跡にした。

タクシーに押し込んで、安堵のため息をつく自分に苦笑いしたものだ。


あれから一年…仕事も別々になり、彼とも疎遠になった頃、偶然にも電車の改札口ですれ違った。確かに目線は合った。確実にお互いを認識したはずだ。


一年前、急な出費に見回れ、彼も知ってる仕事仲間数人からお金を借りた。今だに全額は返済しておらず…自分が去った後に、その事が会社内で噂になった様子を遠まわしに聞いた事があった。

不思議と、彼にはお金の無心をしなかった。今だに何故なのか自分でも理解出来ない。

そんな出来事が…彼の自分に対する反発だったのだろうか。尊敬する先輩像に違反してしまったのだろうか。

どことなく不愉快な…

どことなく、どことなく……。

何事もなかったかの様に、彼は足早に新しいであろう仕事先に向かって行った。

それはあたかも、あの小料理屋での全てが夢物語だったかの様に、冷たく寂しい後ろ姿に見えた。

公私混同はいけないけれど、人はみな完璧ではない。いかに補い合うか、そこにこそ信頼が生まれるはず。結果論だけで片付けられる社会に、少なくともひとりひとりが気付く事こそが、生きる意義だと思う。

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― 新着の感想 ―
[一言] 補い合い、これが優しさから全て生まれてくるものであればいいですよね。
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