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「ごめんなさい。」


 ユウリはフローリゼルたちだけになると頭を下げた。


「ユウリ?」

「……。」

「えーと……。」

「ふえ?」


 四人はそれぞれの反応を見せる。


「妹が迷惑を掛けて。」

「そんな事ないわ。」

「そうだ、寧ろこっちの方が。」

「……でも、あの子がいなかったらきっと無難に終わったと思うし。」

「……それはこっちも同じかもしれないわね。」

「「「……。」」」


 ルシスとチサトの冷戦を思い出したそれぞれは完全に顔を引き攣らせている。


「まさか、チサトとあそこまで相性の悪い人がいるなんて、想像もしていなかった。」

「そうね……ルシスもあそこまでなる人は滅多にいないわね。」

「そうだな、確か最近あいつがあのようになったのは。」

「チェレーノに言い寄ったあの変態王子でしょ?」

「ふえ?い、言い寄られた?いつですか?」

「「「「……。」」」」


 ユウリたちはチェレーノの言葉を聞き、同時に溜息を吐いた。


「まるで、ミナミを見ているような子ね。」

「ルシスも可哀想に。」

「同感だ。」

「チェレーノがここまで鈍感だなんて…。」

「へ?へ?へ?皆さんどうされたんですか!?」


 チェレーノ一人だけ分かっていないようだ。


「まあ、お互い様という事で。」

「そうね。」

「それが一番だ。」

「その方がいいね。」

「あ、あの?皆さん?」


 チェレーノはまだ首を傾げているようだが、ユウリはそんな彼女を無視して部屋割りを考え始める。


「フローリゼルは一人部屋がいい?それとも、護衛を考えて何人かの部屋がいいかな?」

「どちらでも構わないけど……。」

「一応は護衛を考えて隣接した部屋なら構わないと思うが。」

「そう良かった。」


 フローリゼルはどうやら一人部屋が良かったのか、ホッと息をはいた。


「それなら、私の部屋の隣からが空いてるから、そこが良いわね。」

「え?」

「だって、私騎士だもの、フローリゼルを守るわ。」

「ユウリ……。」


 同じ姫であるというのにこんなにも凛としたユウリがフローリゼルには眩しく感じた。同時にユウリも同じ姫であるフローリゼルがこんなにも可憐で守りたいと思った。


「う~ん、あっ、そうだ。」


 ユウリは何かを思いついたのか、満面の笑みを浮かべる。


「皆でお風呂に入りませんか?」

「えっ?」

「「「お風呂?」」」


 何で唐突にそんな事を言い出すのかとユウリ以外の四人は思った。


「部屋に案内するまでの廊下に大きな風呂場があるんです。」

「そうなの?」

「ええ、皆さんだって、汗をかいたでしょうし、疲れだって取ってもらいたいんで、良ければ、案内させてください。」

「ユウリ。」

「はい?」

「敬語に戻っているわ。」

「あっ、ごめんなさい、じゃなっかた、ごめん。」


 ユウリは苦笑を浮かべ、何とか言いなおした。


「ふふふ、気をつけてね。」

「分かったわ、フローリゼル。」


 あって間もないというのに二人はかなり仲良くなった。


「で、皆さんどうします?」

「行ってみようかしら?」

「姫様!」

「駄目かしら?エル?」

「そりゃ……。」

「あ、あの…別に構わないんじゃないでしょうか?」

「……チェレーノ!」

「そんなにカリカリしていると、皺が増えますよ。」

「リディアナ!」


 ユウリはぼんやりとこの光景を見ていた。


「え~と、いつも、こんな感じなの?」

「そうね、概ねは。」

「そうなの?」

「ええ、皆さん真面目ですけど、エルは頑固で、リディアナはある程度自分の欲を入れる、チェレーノは周りの空気を読んでいるんですよ。」

「へ~……。」

「ちゃんと纏まっている時は纏まっているんですよ?」

「例えば?」

「カイザー。」

「……へ?」


 意外な名前を出され、ユウリの頭が一瞬止まる。


「わたくしたちは皆カイザーに惹かれていますの。」

「……えっ…え~と…。」


 ユウリは鈍くなった頭で必死になって考え始める。

 確か、リディアナとカイザーは兄妹であるはずで、カイザーの弟のルシスとチェレーノは恋人同士のはずで――。


「ふふふ、カイザーのファンといいますのかしら?」

「あっ、ああ…そういう意味何だ…。」

「まあ、それはチェレーノだけだったりしますけど。」

「へ?」


 何気なく爆弾発言をされ、ユウリは再び凍りついた。


「え、えええええええええっ!」

「ふふふ……。」


 混乱するユウリが絶叫する側でフローリゼルは微笑んでいた。

 そして、その周りにはエルとリディアナが言い争いをしており、それをチェレーノが必死になって止めようとしている、という可笑しな光景があった。

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