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 リョウタは一人ひとり目の前に立つ自分よりも年上の人を見た。

 金の髪の優しげな風貌の女性。

 ミナミに跪いた黒髪の男性。

 銀の髪の男は始めのうちこそ驚いた表情をしていたが、今では凛々しい顔をしている。

 なんともいえない表情で黒髪の男とミナミを交互に見る厳しい顔つきの女性。

 その隣に立つ派手な赤い髪の男性、いや、少年と青年との狭間の男は小さく肩を竦めている。

 黒髪の少女は呆然としており、黒髪の男性をただ見ていた。

 その隣の鋭い眼の男は特に何にも感じないのか、そっぽを向いている。

 一人、オロオロとしている三つ編みの少女が、こけた。


「きゃっ!」

「……。」


 リョウタはそれを見て、どこかの誰かさんを思い出し、溜息を一つ吐いた。その瞬間凍りつくような冷たい視線を感じた。


「――っ!」


 リョウタは辺りを見渡すと、三つ編みの少女に手を差し出す銀髪の青年がリョウタを睨んでいた。


「……ああ。」


 赤髪の青年が頭を掻き、困ったように笑った。


「悪いな小僧。」

「……。」


 リョウタは青年を軽く睨んだ。


「オレは小僧じゃない、オレはもう十五だ。」

「……十分ガキじゃないかよ。」

「……。」


 リョウタはピクリと頬を引き攣らせ、赤髪の青年を睨んだ。


「生意気なガキ――っ!」


 赤髪の青年がそう言った瞬間、彼の後頭部を殴る女性がいた。


「貴様もわたしから見れば十分ガキだ!」

「いって~っ!何すんだよ!」

「ふんっ、弱いものイジメをする貴様を成敗したまでだ。」

「……この…クソ女!」


 赤髪の青年がそう呟くと彼を殴った女性は笑った。


「貴様は口が悪いようだな。」

「……。」


 リョウタはこの女性の地雷を赤髪の青年が踏んでしまった事に気付いた。


「またですか。」

「こりないな。」


 慣れているのか黒髪の青年も銀髪の青年もこの二人の喧嘩の間に入ろうとはしない。


「まあ、しばらくすれば――。」

「悪かった!」

「やっぱりな……。」


 唐突に頭を下げる赤髪の青年を見て二人の青年は溜息を吐く。


「毎度同じ事を繰り返すのならば止めればいいのにな。」

「そうですよね。」

「うわっ!止めろ!」


 リョウタはその光景を見て唖然とするしか出来なかった。


「問答無用!」

「うえっ!」


 リョウタの横ではミナミが微かに震えている。その反応は当然といえよう。

 何故なら一人の女性がある男に対して剣を振り回しているのだから。


「……尻に敷かれてんな。」

「ふえ?」

「何でもねぇ、お前には関係ねぇよ。」


 不思議そうに首を傾げるミナミにリョウタは小さく溜息を吐いた。


「それにしても、こんな所でのんびりしてていいのか?」

「ふえ?」

「それ口癖か?」


 呆れたような表情をするリョウタにミナミは口を尖らせる。


「もう!」

「今度は牛かよ……。」

「違うわよ!」

「まあ、冗談はこの辺にしといてだな。」


 リョウタは何気なく入り口に近い扉を見詰めた。


「そろそろ――。」

「まだいたのか。」

「……ああ、マサシか。」

「……のんびりしすぎましたか。」

「うぎゃあああああああっ!」


 唐突のマサシの登場にカイザーは笑みを浮かべ、ルシスは苦笑いをし、そして、とうとう剣を振り回す女性に捕まった赤髪の青年は悲鳴を上げた。


「……何をやっているんだ…。」


 赤髪の青年を見たマサシは眉間に皺を寄せた。


「さあな。」


 小さく肩を竦めるリョウタを一瞥したマサシは溜息を一つ吐いた。


「ミナミ様、まだそのような格好をしておいでですか……。」

「うっ……。」


 ミナミはマサシが苦手なのか、リョウタの後ろに隠れた。


「貴女と、ユウリ様は本当に良く似ておりますよ。」

「ふえ?」


 何故かそんな事を言うマサシの目は優しく、ミナミは不思議そうな顔をした。


「早く着替えてきた方がいいですよ、チサト様に何か言われますから。」

「…はーい。」

「……。」


 暢気な返事をするミナミにマサシは頭痛を覚えたのか、彼は額に手を当てた。


「まあ、気にするなよ。」

「……お前も大変だな。」


 ポンとマサシの肩に手を乗せたのはリョウタで、マサシはミナミに振り回され続けている彼に同情の念を覚えた。


「……まあ、慣れた。」

「……。」


 おどけたように肩を竦ませるリョウタにマサシは苦笑を漏らす。


「まあ、俺たちは同類かもしれないな。」

「……お前もか?」

「ああ、俺もあいつに、あの女性ひとに振り回されているからな。」

「……。」


 どこか嬉しそうな瞳をするマサシを見ながら、リョウタはこの男が一体どんな女性の尻に敷かれているのかが気になった。


「いつか会う事になるのかな?」

「なるな、絶対。」


 苦笑を漏らすマサシにリョウタはその女性に早く会ってみたいと思ったのだった。

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