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ハイスペックな幼馴染が嫌です  作者: Ash
シャーリーVS
7/8

初カノ

昼食を終えたシャルルは選択している授業の違うロロロッサと別れ、自分の選択授業の教室に向かう。

まだ早い時間帯だからか、教室には人が少ない。

席に鞄をろしたシャルルは、近付いて来る男子学生に気付き、顔を上げる。


「シャルル。カノジョが呼んでるぞ」


シャルルは席に鞄を残し、教室の入口に向かう。

男子学生の言うとおり、入口にはカノジョがいた。飴色の髪に青い目のふわふわとした綿菓子のような印象の少女が、不安げな様子で立っている。

ベラはシャルルにとって初めて出来た恋人だ。

シャルルが初めて好きになった女の子は近所のパン屋の娘メリーで、ロロロッサにとっても初めて好きになった女の子だった。どちらから相談したのかわからないが、二人共彼女が好きだと打ち明けあい、告白どころか二人して諦めた経緯がある。その時、シャルルとロロロッサは互いの友情にひびを入れてまで女と付き合う価値はないということを確認した。

女性と付き合ったことがないシャルルにとって、告白してきたベラに流された付き合いはどこかぎこちないものの、シャルル本人はこれで良いのではないかと納得のいくものだった。

いつにないベラの沈んだ表情はシャルルの心配を掻き立てる。いつもなら昼食はベラはシャルルやロロロッサととるのに、今日はいなかったからだ。


「ベラ?」


ビクリと震え、ベラが顔を上げる。

ベラは小さく震えた声で言う。


「シャルルくん・・・。今、時間ある?」

「ああ、あるよ」


長い話だと困るが、ベラの様子が気懸かりなシャルルはそれを言わず、彼女を優先した。


「話があるの」


ベラの後ろから教室に入ろうとする学生が見え、シャルルは「邪魔になっているから」と、教室の入口から少し離れた場所に移動する。その後をベラはおとなしくついてきた。


「ところで、ベラ。話って?」


俯いたまま上目遣いでチラリとシャルルを見たベラは、言い辛そうに身体をモジモジしている。


「実はね、シャルルくん。私・・・」


ベラは涙をその青い目に溜めて、シャルルの顔を見る。


「私、ロロロッサくんにいきなり抱きつかれて、キスされたの。前から好きだったんだって」

「え?」


一瞬何のことだかシャルルには理解できなかった。

しゃくり上げる目の前の少女を目を丸くして見るしかなかった。


ロロがベラに抱きついてキスした?

ロロは前からベラが好きだった?


シャルルは目の前の少女をよく見た。飴色の髪をしたふわふわと甘く、柔らかい印象の少女。いつも微笑んでいる印象のある、今は少し、泣きそうな顔をしている少女。付き合っていると思っていた少女。よく知っていると思っていた少女。でも、よく知らない少女。


なるほど。


シャルルは納得した。目が据わり、口の端が片方だけ上がる。


最近、少し冷たかった。

唇にキスをしようとすると顔を逸らされて、頬に当たる。

抱きしめようとするとスルリと躱される。

そういえば、昼食以外、あまり一緒にいることがなくなった。


ロロロッサに近付こうとした女たちはまず、シャルルに話しかけて、取り巻きになるか、頼んでくる。

今回は告白してきて、カノジョになっただけ。


何だ、そういうことか。


納得してしまうと、目の前の少女の様子などシャルルにとって、どうでもよくなってくる。

嘘だらけの言葉。嘘だらけの涙。嘘だらけの表情。嘘だらけの演技。


ロロは同じ女の子を好きになったら、自分に話してくれる。

もちろん、違う女の子でも好きになったら話してくれるだろう。

少女が言うようなことはしない。

それぐらいなら、何も言わずに諦めるだろう。

それだけはハッキリ言える。

パン屋のメリーの時に二人の友情のほうがずっと大事なものだとロロと僕は知ったのだから。


初恋のことなど、ベラは知らない。シャルルにとって、ベラはそんなことを言う仲じゃなかったから。カノジョなのに。


こんな嘘吐きな尻軽女はいらない。

僕にも、ロロにも。


「そう。ちょうど良かった。僕は前からベラと別れたかったんだ」


少しばかりの嘘を込めてシャルルは言った。

少しばかりの嘘は・・・シャルルにとっても必要だった。

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