俺と幼馴染2
わかり辛かったので、「シャーリーと幼馴染」を追加しました
鞄を親父と交換し、宿題の有無を確認して、自室まで行ってきた俺は、食卓の俺の席に座り、小腹を満たしているシャーリーに声をかける。
「お待たせ」
オカンはチビども(俺の弟妹だ)の朝食の世話をしながら、シャーリーの世話もしたらしい。
悪い、オカン。
俺の幼馴染の食い意地が張っていて、悪い。
鞄を間違えていても気付かない俺も悪い。
宿題を入れ忘れた俺が悪い。
ん?
悪いのは俺か?
「やあ、ロロ。あの鞄、小父さんのだった?」
そう言うシャーリーの口の周りにはパン屑が付いている。
お前、17になってまだ・・・ああ、そうだったな。
毎日、昼食を一緒に摂った後、お前の口を拭っているよな、俺。
俺って、オカンの素質があるのかも。
「いや、親父も間違えて持って帰って来たらしい」
「ええ?!じゃあ、誰の?!」
「わからない。だが、親父の鞄の中に這っているものがいないとわかっただけで、いい。それ以上は知りたくない・・・」
うん、知りたくない。
知らなくてもいいことは知りたくない。
知って後悔しそうな類は、知らないままがいい。
追求してはいけないと俺の本能が囁いている。
俺はげんなりした気分になり、目を泳がせる。
「じゃあ、あれが何なのかわからないまま?!」
「知らない方が、ヒトとして何か失くさなくていいと思う」
「ロロはヒトじゃなくて、XXXXだろ?」
「お前が、ヒトとして大切な何かを失くしそうだから、言っているんだ。俺は本能を信じているから、素直にソレに従おうと思う」
シャーリーは声を潜めて言う。
「ロロ・・・。それはXXXXとしてどうなの?」
シャーリー、コレは声を潜める内容ですらない。
お前に悪気がないのは知っている。
しかし、コレでは愉快犯だ。
「生物として危険を回避する本能に従うのが悪いのか?」
XXXXだって、生物だ。
無機物ではない。
「そういうわけじゃないけど、ロマンが足りない男だね」
「ロマンは顔に任せているから、あの這うものについては記憶から消す事にする」
「あ~あ。小父さんに訊けばわかるかな?」
「ああ、知ってると思うぞ」
食卓にあった布ナプキンでシャーリーの口の周りを拭ってやる。
老境にさしかかった時も、毎日、こうしていられたらと思ってしまう。
就職して、結婚して、年に数回、数年に一度しか顔を会わせなくなるなんて、考えられない。物心付いたときからだから、もう、15年近く毎日顔を会わしている。
互いの道が分かたれるのは、正直、寂しい。
俺とシャーリーの道はたまたま隣を平行して走っていた期間が長かっただけだ。それだけ。
「それより、学園だ。急がないと遅刻するぞ」
「あー!!遅刻!!」
音を立てていきなり立ち上がるシャーリー。勢いあまって、倒れ掛かった椅子を慌てて抑える俺。
オカンと弟妹が驚いてコッチを見ている。
「小母さん、朝食ありがとう」
それだけ言うと、シャーリーは走り出す。その後を俺は追いかける。
「オカン、チビども、行ってくるからな」
「いってらっしゃい、ロロ!」
オカンの声を背に家を飛び出し、近所の人たちが通勤で行き交う中、俺たちも学園に向かった。