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ルカ・ポアネスという不良14

 

…やだねー。やだねー。腹黒って人種。

 高位貴族になればなるほど多いから仕方ないけど、なんてかもっと純粋に人間と付き合えないんかなーって思うよ。

 貴族らしく生きていくためには仕方ない部分はあると思うけど、そんな裏表ありまくりで、人生楽しんかい?って思ったりもしなくもない。

 もっと皆、悪役令嬢とは名ばかりの、清らかな心の持ち主な私を見習えばいいのに。清らかで心優しいのに、ちゃんと上手に社交界、立ち回れているよ?私は。



 …と、まぁ自虐的ギャグはこのへんにして。(分かっているさ。自分が性格がよろしくないことなんか、今世は勿論、前世の頃から自覚しているさ。自覚して治す気無いんだ、ほっとけ)


「――そうね。私もそう思うわ」


 小さく息を吐きながらそう告げた瞬間、かちりと脳内のスイッチが切り替わるのが分かった。

 腹黒相手に、素の自分を晒すことは、弱みを見せることと同義だ。

 特に自身の腹黒さを露わにしている際は、完全に向こうは戦闘態勢に入っている状態だ。少しの油断が、命取りになる。


 口元に、自然に笑みが浮かぶ。

 愉快気にも、嘲笑にも、どちらとも見れる意味深な笑みが。

 笑みを浮かべたまま、私は真っ直ぐキエラを見据える。けして視線を逸らしなどしない。


「【ペナルティ】を用いた、痛みによる支配。それこそが、【隷属契約】の要ですもの。それを行わないデイビットは、愚かと言えば愚かですわね」



 先刻の昼休み。


 隷属契約において契約そのものが、隷属側の精神に作用することはあるのか気になって、私は禁書閲覧申請を届けだして、隷属契約に関する禁書を主要なものから目を通した。

 禁書を読むのは初めてではない。何冊かは、以前も読んだことがある。だからこそ、内容を復習するような、そんな気軽な気持ちだった。


 ――だが、しかし。


 隷属契約における、私が知りたかった精神作用の記述の代わりに、私の目に止まったのは、隷属契約の具体的な実例。

 記述される実例のそのほとんどにおいて、隷属側は完全に気が狂ってしまっているという事実を再確認せずにはいられなかった。


 あるものは、人間としての理性を失って、本能のまま獣のような行動しかとれなくなり、


 あるものは、精神退行を起こして、成人しているにも関わらず幼子の様に振る舞った。


 あるものは、ロボットの様に全ての感情を無くし


 あるものは、理性が崩壊しあらゆる感情のコントロールが出来なくなった。



 それらの作用は全て、【ペナルティ】によって、過剰に【調教された】結果の、慣れの果てだった。


【ペナルティ】は生殺与奪に関わること以外は、どんなものでも従わないといけない。

 例えば自身に拷問を与えるような、そんな極悪非道なことでも。

 更に恐ろしいのは、【ペナルティ】は、単に意志を操作するだけに止まらず、その脳に直接影響をもたらすことも出来ることだ。

「主なるもの」は【ペナルティ】として「従なるもの」脳に直接指令を与え、「死に至らないぎりぎりの」苦痛を与えることさえも可能なのだ。


【ペナルティ】として与えることが出来るのは、何も痛みだけではない。「快感」ですら、【ペナルティ】は引き出しうる。

 脳内の特定の神経伝達物質を増加させ、多幸感をもたらすその作用は、ドラッグと同じだ。

 与えられるたびに人間の脳を壊し、最終的には与えられたものを廃人まで突き落す。

 だが一度その快感を与えられたものは、再び同一の快感を得ようと常習性を持つようになり、やがてはその【ペナルティ】という名の【ご褒美】を求めて、従順になる。



『暴力と、ドラッグ』



 それこそが、【ペナルティ】の本質だ。


 人を、人ならざる畜生まで堕として支配することこそが、本来の隷属魔法の「正しい」あり方なのだ。



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