表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームの悪(中略)ヒロインが鬼畜女装野郎だったので、助けて下さい  作者: 空飛ぶひよこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/213

ルカ・ポアネスという不良12

「どーもー。ルクレア様。毎度おおきに。またご依頼頂けて嬉しいわ~」


 放課後の、4階多目的教室。

 予め結界を張って置いたそこに、指定した通りキエラは現れた。

 榛色の目を猫の様に細めながら、両手を揉み揉み体勢を低くする様は、相変わらず怪しげな商売人オーラを纏っている。


「で、今回は何の情報をお求めで?…今度こそ、マシェル・メネガ様の好感度を…」


「ち が い ま す わ」


 思わず、大声でキエラの言葉を遮った。

 知りたくない。前回みたいに無料でも、絶対そんな情報要らない。

 聞いたら後悔すること間違いないから…っ!!もう自分自身に言い訳とか誤魔化しとか聞かなくなるから…っ!!


「…ごほん」


 気を取り直すように、わざとらしく咳払いを一つ漏らす。…駄目だ、駄目だ。こんな風に動揺を表に出しちゃいけない。

 情報を扱う人間というのは目端が聞くのだ。


「…今回は、誰かの好感度を知りたいわけでないんですの。純粋に貴方から、情報を買いたいだけですわ。能力とは関係なく」


「へぇ…珍しい依頼やなぁ」


 私の言葉にキエラは目を輝かせた。その表情は、どこか愉しげで、嬉しそうだ。


「いつもいつも、私に対する依頼は能力絡みばっかで、そういう正統派な依頼は滅多に来んくて。なんか、ちょっとわくわくしてきましたわ。…ルクレア様はそれで、何を知りたいんです?」


「期待させてしまって悪いけど、そんなに入手が難しい情報というわけではないですわ。…貴女なら既にもう、持っている情報ですもの。でも、貴女以外知りえない情報って言ってもよいかしら?」


 残念ながら、情報屋の仕事のメインかつ腕の見せ所である情報収集は、全く必要ない依頼である。

 意図せずとも勝手に手に入っているだろう情報だ。それをただ提供するだけというのは、情報屋の仕事としては、ちょっと物足りないかもしれない。

 だけどその情報は、私にとっては、必死に苦労して収集してもらう情報なんかより、よほど価値があるのだから仕方ない。


「……武術大会まで、二週間を切りましたわ。デイビットは最近どうしているのかしら?」


 話している途中でどこか気恥ずかしくなり、最後は思わず口元を扇で隠して視線を逸らしてしまった。

 思いがけない言葉にきょとんとしているキエラの表情が、居たたまれない。

 キエラは一瞬黙り込んだあと、小さく噴き出した。


「何や、ルクレア様。改めて依頼してくるから、どないな話かと思いましたら…っ!!金払って、そないなこと聞くとかどんだけ勿体無いことしとるんですか~。そんなこと、普通にデイビットに聞けばいいやないですか」


「……そう簡単には聞けないから、貴女に依頼したのですわ」


「まぁ、隷属契約結んでいる以上、主のすることにはなかなか口を出せんでもしゃあないっちゃ、しゃあないかもしれませんが…にしても、遠慮しすぎちゃいますか?大貴族ボレア家のお嬢様ともあろう方が」


 く、屈辱…!!


 今、グレーゾーンでこそあるものの、キエラの言葉若干私の琴線触れたぞ…。


 発言にどこか馬鹿にするかのようなニュアンスが感じ取れて、思わず口の端が引きつった。


 だが、耐えろ…私…。今はそんなことに、腹を立てている状況で無い。

 プライドは捨てて、情報を得ることにただ専念するんだ…。



「…私のことはどうでもいいですわ。そんなことより、早く最近のデイビットに関して教えて頂戴」


「へいへい。お嬢様の仰せのままに」


 茶化すような返答がさらに私の琴線を揺らし、ぴくぴくとこめかみの辺りが引きつったが、大きく息を吸い込んで、湧き上がってくるものを抑え込む。


 …しかし、キエラ。前あった時も、こんな腹が立つようなキャラだっけ…?気のせいかもしれないけど、なんかわざと私のこと怒らせようとしてないか。


「…しっかし、最近のデイビットの動向なぁ。いつも通り、特に変わったことしとらんけど」


 私の疑念をよそに、キエラは顎に手を当てて片眉を顰めて思案しはじめた。

 そんなキエラの様子に、私は一端キエラに対する疑惑を脇に置いて、質問に集中することにする。


「いつも通りって、具体的にはどんな状態なのかしら?いつも部屋では、デイビットはどうやって過ごしているのかしら?」


「――基本デイビットは、部屋では、勉強と寝る以外はせんし、そもそも夜中にならんと部屋に帰って来んで」


 …え?


 じゃあ一体、夜中までどこんで何してんの?



 思わず困惑の表情を浮かべた私に、キエラは口端を吊り上げながら、想定外の情報を口にした。


「デイビット、あいつな。放課後になると一人森ん中に篭って、夜中まで延々体鍛えてんのや。入学してからずうっと。雨の日も、風の日も、一日も欠かすことなく」









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ