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ダーザ・オーサムというショタキャラ18

『最近、ルクレア先輩と和解して、ようやく私は自分がしたことの愚かさに気づいたの…誰かに傷つけられたから、他の誰かを傷つけてもいいわけではない。…そんな当たり前の事さえ、あの時の私は忘れていた』


 デイビットは、両手で顔を覆って肩を震わせる。

 当然ながら、ただの泣き真似である。

 でもこれは、誰が見ても騙されるわ…。マジでデイビット、役者なれる。演技力高過ぎ。怖ぇぇぇ。


『ごめんなさい…許さなくても、いいわ…でも、ただそれだけが伝えたかったの』


 悔恨に震えて嗚咽を漏らす(ように見える)デイビットに、どうすればいいのか分からずにダーザは狼狽する。

 デイビットは啜り泣く(ふりをする)ばかりで、それ以上は何も口にしない。ダーザが何らかのアクションを起こさなければ、状況はこのままだ。

 きょろきょろと視線を彷徨わせ、ぱくぱくと何か言葉を紡ごうと口を動かしていたダーザが、やがて意を決したように目を瞑り、大きく息を吐き出した。


『――気に、しないで下さい』


 やっとのことで言葉を発したダーザは、制服のポケットに手を入れる。

 取り出すのはきちんとアイロンがけがされた、一枚のハンカチーフ。

 ダーザはぎこちない手つきで、それをデイビットに差し出した。


『どうか、涙を拭いてください。僕はもう、あなたを怒ってはいません…寧ろ、感謝をしているくらいです』


『…感謝…?』


『ええ、そうです』


 デイビットの問いかけに、ダーザは、びっくりする程優しい、大人びた笑みを浮かべた。


『あなたのお蔭で、僕は大切な気持ちを知ることが出来た。あなたがあの時、僕の教科書を奪ってくれたから、僕は変わろうと思えた…僕は今、僕に新たな世界を見出すきっかけをくれたあなたに、とても感謝しているんです』



 ダーザの言葉に、思わずガッツポーズをとる。


 キタキタキタキタ―――――!!


 これ、絶対滅茶苦茶ダーザのデイビットへの好感度上昇しているよね?寧ろ、これ、もう堕ちている感じだよね?


 …よっしゃぁああ!!私、マジ天才!!マジ有能脚本家!!策士!!


 ふふん。これであと何回かイベントこなせば、ダーザはデイビットにべた惚れして、下僕決定だね。

 わたしの解放までの、自由への道が一歩近づいたよ…!!



 その後、改めて互いに自己紹介をしあった後、ダーザとデイビットは解散した。

 ダーザが完全にいなくなったのをちゃんと確認してから、私は意気揚々と隣室へと向かう。



「…デイビット、ディーネ!!」


「…おう」


「マスター」


 ドヤ顔で入室した私を見て、何故か浮かない顔をしているデイビットと、嬉しそうな笑みを浮かべるディーネ。

 ディーネはそのまま真っ直ぐに私の傍に近寄ってくる。


「マスター…私、上手ク、魔法展開デキマシタ…?」


 上目使いで不安げに尋ねるディーネに、心臓が鷲掴みにされる。全てはときめき故に。

 あああ、この慎ましやかさんめ。

 ディーネは魔法展開も上手だし、ぷりちーでびゅーてぃふぉーなんだから、もっと自信持っていいんだよ?少しはサーラムの根拠のない自信を見習いなさい!!


「勿論だよ。ディーネ。タイミングも魔法量もばっちりだった!!さすが、ディーネ。私の自慢の精霊だ」


 指先でディーネの頭を思い切りなでなでしながら、褒めちぎると、ディーネの白い頬がほんのり赤く染まる。

 あぁ、もうかわいい。

 ディーネは精霊たちの中で、一番大人しくて控え目だから、ここぞという時にこそ思い切り誉めてやらにゃあ。


「大好きだよ。ディーネ」


 ちいさなディーネが潰れないような強さで(ちなみにここまで力加減気にするのはディーネだけだ。サーラムは潰れるくらいに抱き締められる方が実は好きだし、ノムルは例え潰されても反応が薄い。シルフィは力加減を察して勝手に抱擁を避ける。そして三体が三体ともいやなことは胸に秘めずに、その場ですぐにギャアギャア文句を言う。だから奴らは別に気を使ってやらないでも問題ない)そっとディーネを抱き締めて、頬に口づけを落とす。

 嬉しそうに微笑むディーネに、こっちまで嬉しくなる。


 さて。ディーネの愛らしさを堪能したところで。


 私はデイビットに視線を移した。


「…どうよ、デイビット。私の脚本は?」


 ふんと鼻息を吐いて、胸を張る。口元が勝手ににやける。


 --さぁ、デイビットよ。


 私を、天才だ、素晴らしいと褒めちぎってくれても構わないんだぜ?


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