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ダーザ・オーサムというショタキャラ12

 連れて行かれたのは、学園のすぐ隣に隣接する学生寮の三棟。

寮費が安く、余り裕福でない貴族が利用する三棟は、プライベートルームはあるがトイレ、風呂、キッチン、リビングは共同の二人部屋になっている。

入るのは初めてだが、貧乏貴族寮と揶揄されているわりに、普通に広いし、綺麗だ。 前世でいうなら、マンションレベル。だが全てが規格外なボレア家で過ごしたせいで、残念ながら、うわ、狭っ、兎小屋レベルじゃね?…と思ってしまう自分もいる 

 ……あかんね。金持ち基準は。思いだそう、慎ましやかな、一般日本人女性的(やまとなでしこ)だったあの頃を…!!


 さて。そんな三棟のディビットとキエラの部屋。

 存外すっきり整理整頓されているリビングのソファの上。

 何故か私は、その上で正座させられていた。

 ……あれ、これソファの使い方間違ってないかい。


 そして私の目の前には、完全に不機嫌オーラ全開で仁王立ちするディビット。

 当然ながら、学園では取り繕っていた笑みは、今やかけらもない。

 完全に、切れてらっしゃる。

 ……救いなのは、ディビットの怒りの対象が私ではないことか。……うん。今はまだ。


「……あぁ、鬱陶しい…っ!!」


 ……あ、鬘ぶん投げた。

 床に叩きつけられる、本物のエンジェちゃんの髪を模したらしい、本物そっくりのキラキラさらさらなパツ金鬘。

 ……ああ、絶対良いものなのに、鬘界では恐らく一級品だろうに、ディビットときたらなんちゅう扱いをするんだ。鬘様がかわいそうじゃないか。

 鬘を粗末に扱ったバチが当たって、将来鬘無しでは生きられない頭になったらどうするんだい!?その頃になって、鬘の大切さを思い知っても遅いんだよ!?



 ……なんてこと、当然ながら口が裂けても言えやしません。悪魔様の反応が怖すぎて。


 ディビットは露になった短い黒髪を、ガリガリかきむしった。


「…あんの、糞王子、俺を見かける度、聞きたくもねぇノロケ話を延々と聞かせてきやがって…てめぇと愚姉の進展なんかどうでもいいんだよっ!!あいつの男の好みなんか知るかっ!!…ああ、糞うぜぇーっ!!」



 ディビットをぶち切らせている人物。

 それは恋に浮かれる皇太子、オージン・メトオグであった。


 私が手紙を渡しに行く度のろけ話を仕掛けて来て、大抵躱すことに失敗して話付き合ってやってんのに、オージンめ、それじゃあ不足だったらしい。

 恋する少年の心中は、実に複雑かつ面倒だ。


 恋に一喜一憂するこの気持ちを、色んな人に伝えたい。自分の愛の深さを声高に叫びたい。

 だが、この恋は、秘密にしなければならないもの。気軽に他人に言い触らすわけにはいかない。

 秘密を知るのは、私とデイジー(ディビット)のみ。

 一番話を聞いて欲しいのは、恋しい人の兄弟である、デイジー(ディビット)。ついでに、彼の人の情報も聞き出したい。

 だが、デイジー(ディビット)は後ろ盾の無い一般庶民。おいそれと話しかけるわけにはいかない。下手すれば、自分のファンから目をつけられかねない。

 もし自分が原因で、愛しい人の兄弟が辛い目にあったら、そして愛おしい人がそれが原因で自分を嫌ったら。

 そう思うと、うかつに声を掛けられない。

 だが、どうしてもデイジー(ディビット)に話を聞いて欲しい。叶うならば、話を聞いて、もっとエンジェ本人と親密になる為のアドバイスが欲しい。


 そんな欲求がむくむくと膨らんだオージンは、とうとうろくでもないことを思いついた。



 --『ルクレア嬢について話をしたい』って声を掛ければ、デイジー(ディビット)が虐められることなくね?


 --寧ろ、恋焦がれている相手をルクレア嬢(私)ということににすれば、ルクレア嬢(私)の名前で愛を語れば、万が一誰かに聞かれても問題なくね?




 …うん。声を大にして叫びたい。



 勝手に人の名、隠れ蓑に使ってんじゃねぇええ、糞王子!!!!

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