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オージン・メトオグという王子14

「…会いに行けばよろしいのではなくって」


 私は小さく肩を竦める。無駄にシリアスぶっているのが理解できない。


「殿下が私の大切な友人を偽物だというのならば、また彼女の家に行って存在を確かめればいいだけだと思いますわ。殿下は、それがどこかも自らの身で知ってらっしゃるのだから。また訪ねるのなんて簡単でしょう」


 実際そんなことやられたら、ディビットも本物のエンジェも困るが、どう考えてもそれが最善の、誰にでも思いつく方法だ。別に私が指摘しようとしなかろーと、どうせオージンの頭に既にあって却下した選択だろうから敢えて口にさせて頂く。…悪魔様どっかでみてねーだろうな。頼むよ。もし見ててもその変理解してくれよ。お願いだから。


「出来るものなら、とうにやっているさ」


 オージンは自嘲気味に笑った。こういう顔ですらイケメンなのだから腹が立つね。


「彼女の家は、ここから馬で一月は旅をしないと行けないような辺境だよ。転移魔法を使おうにも、式を狂わせる特殊な花粉を放つ木が生い茂った山にに囲まれているから、途中で不時着して遭難するのが目に見えている。そんな場所だからこそ、私はあの時死にかけていたのだよ。光魔法すら使えずに。…そう簡単には行けないさ」


 …うっほい。ゲームじゃ出なかったぞ。んな裏設定。もともと何でそんなとこに行ったし…って、あぁ、そういや他国の罠に嵌ったんだ。ショムテと裏でつながった、隣国の罠に。確かそんな設定だわ。

 …しかし悪魔様の出身地がそこまで魔境だとは…うん、なんてか本当人間離れしているよね。エンジェちゃんがそんな魔境出身ていうのはしっくり来ないけれど、悪魔様ならしっくりくるよ。私は悪魔様が、背中に羽根が生えて魔境の山飛んでたとしても驚かないもん。


「別に殿下が行かなくても、人をやって様子を見させれば…」


「そして私の最愛を、そして最大の弱点を、誰かに晒せというのかい?残念ながら、まだ若輩者の私には、そこまで信頼できる家臣を育成出来ていないんだ。父の代からの信頼できる召使はいるものの、彼らは私の私的感情に由来する命令にはけして言うことを聞かない。逆に、王族の私を惑わそうとしている彼女を排除しようとさえするかもしれないね…なんせ彼女は一般庶民だ。何の後ろ盾もない。きっと彼らは私に彼女は相応しくないと判断するだろう」


 そしてオージンは、真っ直ぐに私の目を見つめた。


「――だから、君、なんだ」


 おもわず息を飲んでしまうくらい、真剣な表情だった。きっと、今の彼は、演技じゃない。直感的にそう思った。



「…出世欲が薄く、よく回る頭を持ち、私が偽物と疑っているエンジェと急速に接近している君だからこそ、私は協力を仰ぎたい。君ならば、私の恋心を知っても、それを利用しようなぞと考えはしないだろうと確信をしていたから」


「…随分と私のことを熟知しているかのように語られますこと。私と殿下は今まで接点が無かったように思うのですが、私の思い違いかしら」


 ちゃんと面と向かって話すのは初めてだと、そう言ったのはオージンだ。


「接点は無かった…だけど、私は君を見てた」


 オージンが発する言葉は会いも変わらず口説き文句のように甘い。


「社交の場で、学園で、見掛ける度に、華やかな君は思わず目を引き付けられずにはいられなかったからね。分かるよ」


 本当にこいつは、人間を見りゃ口説かずにいられんのか。心底呆れる。

 思わず鼻で笑ってしまった。


「――そんな甘ったるい言葉で誤魔化さずに、ちゃんとおっしゃったら。要注意人物として、目をつけていたと」


 なんせこちとらボレア家の一人娘だ。王族を転覆させる力を持った大貴族だ。それくらい意識してもらわないと舐められていると逆に苛立たしい。

 美しさに惹きつけられた何ぞと言う言葉よりも、そっちの方が100倍嬉しい言葉だ。

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