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ルクレア・ボレアという少女3

 愉しいさ。

 愉しいに決まっているだろう。

 だって今世の私は、超超ちょーハイスペック少女。

 生まれながらの勝ち組。人生超イージーモード。

 ――愉しくないわけがないだろうっ!!


 神様。神様。本当にありがとうございます!!三拝九拝して感謝の言葉を叫びたいくらいです。


 こんだけの能力持ちなら、まず何があったとしても将来食いっぱぐれることはない。仕事を選ばなければ、なんとしてでも生きていける。

 万が一仕事が駄目だったとしても、実家は金持ち。ニート生活超余裕。ある程度豪遊も可。ボレア家の財力をもってすれば、美味しいもの食べられて、本が読めれば幸せな私なんて、余裕で養ってもらえる。

 一人娘だから、きっとニートでごろごろしてても、両親は可愛がってくれるだろうし(実際現在進行形で、蝶や花やと溺愛して頂いております)、ボレア家の直系の血筋を絶やすのは…と、有能でそこそこ見目良い旦那も見繕ってくれるだろう。三食昼寝付きのグータラ生活を保障してくれるなら、私は例え、愛が無くても構わない。「愛こそ全て…!!」と情熱を燃やすには、私は前世で色々現実を知り過ぎている。恋に夢見る少女にはもうなれない。

 相手は、ボレア家という家柄及び、財産を手に入れられてハッピー。私はグータラ生活漫喫出来てハッピー。そんなウィンウィンな関係希望だ。そして、私はその条件を満たす一番相応しい旦那を、選べる立場にある。親から選んでもらえる立場にある。


 あぁ、なんて、私の未来は輝いているのでしょう!!素晴らしすぎる、我が人生っ!!


 例えば、劣等感と人間関係に悩まされつつ漠然とした将来の不安を抱えながら悶々とした日々を送ったり。内定が貰えずに死んだ目で必死に何百社めかになる就職活動に励んだり。ようやく就職できた会社が、超ブラックで、自身の能力の低さに絶望しながらストレスフルで日々を過ごしたり。気が付けば結婚適齢期になっていて周囲はどんどん結婚していくのに、自分は結婚は愚か恋人もいないまま、現実逃避でゲーム三昧な日々を送っていたり。老後金も無く、伴侶もなく、一人寂しく暮らすことになるんだろうな…と思うようになったり。

 あくまで「例えば」の話ではあるんだが、この先私は、そんな「例えば」な生活とは無縁な生活が出来るのだ。なんと素晴らしいことだろう!!

 …あれ、おかしいな。これは、あくまで「例えば」の話なのに、なぜか涙が滲んできたよ。

 ちなみに私の前世は、20代最後の年に、今度こそ決めなければと気合を入れてお見合いパーティへ向かった途中、運悪く交通事故に巻き込まれて死んだんだが、まぁ、実に関係ない話だねっ!!

 …あれ、おかしいな。なんか、生暖かい液体が、頬を伝っている気がするけど。気のせいだよね、うん。気のせいに決まっているさ。


 …まぁ、ともかく私は今世では、非常に恵まれているのである。幸せ者なのである。

 前世で流行っていたネット小説では、乙女ゲームの悪役キャラが、悲惨すぎる未来を回避する為に悪戦苦闘する姿が好まれていたように記憶するが、このゲームではどんなエンドを迎えたとしても(もちろん私が知らないネタエンドではわからないが)最終的にルクレア・ボレアがヒロインに手酷く復讐されるような展開は存在しない。

 ヒロインことエンジェは、勝気で真っ直ぐな正義感溢れる少女である。彼女は、どんなにルクレアから酷い虐めを受けようが、攻略対象がルクレアを罰しようととすることを良しとはせず、一人で戦い抜くのだ。そんなエンジェの強さに、攻略対象はますます好感度を上げていくという展開は、全キャラ共通のテッパンエピソードだ。この部分は誰を攻略しようがまず、外れない。

 ルクレアが復讐されることと言えば、せいぜい、攻略対象といちゃラブしているところを目の前で見せつけられて、エンジェから勝ち誇った笑みを浮かべられることくらいだ。そのさい、私はハンカチを噛みしめて悔しがればいい。

 その代償が、このハイスペ人生だというのならば、何枚でもどんな素材のものでも、いくらでもハンカチを噛みしめてあげましょう。


 特に悲惨展開が待ち受けていないのならば、「悪役令嬢」というポジションを与えられても、私としては全く不満が無い。むしろ、そのポジションは、私にとって非常に魅力的ですらある。

 何故なら私が「悪役令嬢」というポジションを全うすることは、私の隠し持っていた、【サディスト】としての性癖を満足させてくれるからだ。




 私が自身の性癖を自覚したのは、前世で私がまだ女子高生だったころ。

 きっかけは、友人のこんな一言だった。


『面白い心理テストを知っているんだけど』

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