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逆ハーエンドを目指します2

 さて。皆さん。

 今までの私の苛め描写に精霊たちくらいしか登場していないことから、私をぼっちだと勘違いしてはいないだろうか。一緒にエンジェを虐める取り巻きもいてくれないのかと、そんなことを思ってやしないだろうか。

 違うのである。確かにエンジェ虐めは単独で行ってはいたが、私は悪のカリスマ、ルクレア・ボレア。基本的に孤高な存在だが(あんまりプライベートまでべったりだと演技が疲れる)取り巻きというか、シンパというか、ファンというかはたくさんいるのだ。ただ集団虐めは格好悪いし、私の預かりしれないところで暴走されてエンジェちゃんがぼろぼろなっても寝覚めが悪いから、「あれは私の獲物だから手は出さないで下さる?」というスタンスをとっていただけなのだ。誤解しないで頂きたい。


「おねぇ…ルクレア様。あの、エンジェ嬢とは仲良くなられたのですか?」


 そして今、つぶらな琥珀色の瞳をうるうるさせて私に尋ねてくる彼女は、トリエット・シュガー。入学した時から慕ってくれる私のシンパ第一号であり、ゲーム中でもちらっと出番があったモブキャラである。

 エンジェを天使と例えるなら、彼女は妖精のごとき愛らしさ。小柄な体をふるふる震わすその様は、思わず抱き締めたくなる程可愛い。その愛らしさと、名前から、私は心の奥で「砂糖菓子ちゃん」と呼んでいる。


「ええ。私、どうも彼女のことを誤解していたようですの」


「…っ!!誤解、ですか?」


 あぁ、砂糖菓子ちゃん。私が(偽)エンジェと仲良くなったことを肯定したからって、そんな悲壮な顔をしないでおくれ。女の私でもちょっとくらっとするじゃないか。

 どうやら、彼女はカリスマドエスな私に憧れるあまり、親しくなった女の子に嫉妬しているらしい。同学年なのにしばしば私のこと「お姉様」と言いかけるしね。いやぁ、モテる女は辛いね。

 …ちなみに私のシンパは大多数が女の子であり、男はごく一部のドМ野郎だけなのだが、まぁいい。女の子可愛いし。悔しくなんかないさ。…本当だよっ!!


「えぇ、私は庶民の彼女が平和なこの学園を掻き乱すのではないかと、ずっと不安だったのですわ…だから、彼女を排除すべく、ついついあんなはしたない行動を取ってしまいましたの。でも、先日彼女と話して見て、考えを改めさせられましたわ…」


 行為自体には微塵も後悔など感じていない、寧ろ隷属の未来が回避できないならもっとやっとけば良かったと思っているが、深い悔恨を滲ませたようなトーンでそう告げながら、静かに目を伏せる。


「彼女は、確かにこの学園に変化をもたらす異分子ですわ。だけど、変化はけして悪いことではない。だって、この狭い学園という枠組みから離れたら、私達貴族は予想だにしないような様々な事柄にも対応できる能力が求められるのですもの。対応できて初めて、人の上に立つ身分に相応しい人間になれるのですわ。私は彼女という異分子を排除するのではなく、受け流す術を学ばなければならなかった…エンジェは私の、そのことを教えてくれましたの」


「…ルクレア様…」


 私は自嘲するような笑みを浮かべながら、泣きそうな砂糖菓子ちゃんの頬に手を添える。


「トリエット…貴女はあれほどの醜態を晒さなければ、そのことに気付けなかった、愚かな私を笑うかしら?」


「っいえ!!そんな!!」


 砂糖菓子ちゃんは顔を真っ赤にさせて、必死に首を横に振る。おおう、細い首がもげそうでちと怖いぞ。


「真に愚かな人とは、過ちに気づいてもそれを認めない人ですっ!!過ちを認めて、それを受け入れられるルクレア様は素敵ですっ!!愚かだなんて…私は、そんなルクレア様を心からお慕いし、尊敬します!!」


「…そう。ありがとう。トリエット」


 ちょろいのぅ。可愛いのぅ。やっぱ女の子はいい。悪魔様に神経がりがりやられた後だから、余計トリエットの単純さに癒される。


「皆にも伝えてくれるかしら?私はもう、エンジェ・ルーチェを敵視することはないということを」


「はいっ!!」


 …さて、これで数日もすれば混乱は収まる筈。これからいろんな生徒に、あんまり鬱陶しく詮索されるのはごめんだ。

 フラグになるようなエンジェへのの嫌がらせは、もうほとんど済ませているから、別にこれ以上ディビットとの関係拗らせる必要はないし、マブダチ宣言してももう大丈夫だよな…無かったよな…だってルクレア悪役キャラだけど色々ショボイ噛ませ犬悪役だから確かもう十分だった筈……うん、大丈夫だ。逆ハーエンドに必要な嫌がらせは全部済ませている。そもそも最初に親しげに訪ねてきたの、悪魔様だしな…っ!!



 ――しかし、放課後。私はこの短絡的な行動を、心から後悔することになる。


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