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ルクレア・ボレアという少女2

 自慢じゃないが、ルクレア・ボレアの名前をこの辺りで知らないものは、まずいない。


 大貴族ボレア家の、直系の一人娘。

 黄金の豊かな髪に、ややきつい部分はあるが、まるで大輪の紅薔薇のようだと称えられる華やかな美貌。

 めったに契約出来ないとされる人形の高位精霊を、四対、しかも全て別の属性のものを、まだ五つの頃から従わせた高い能力。

 多くの取り巻きを引き連れる、高いカリスマ性。


 正直言って、超超超ハイスペックなのである。神様に心から感謝したい。



 しかし、その実態は、その有り余る有能さをもったいなくもフル活用して、乙女ゲームのヒロインをいじめ抜くのに、やったいじめが全てことごとく、ヒロインと攻略対象のラブイベントになってしまう、報われない噛ませ犬キャラ(転生喪女入り)なのである。

 実にしょっぱい事実だ。



 乙女ゲーム「君の背中に翼が見える」は、某大手サークルが販売した、知る人ぞ知るマニアック系同人乙女ゲームである。

 魔法が存在する異世界で、回復魔法にのみ特化している庶民のヒロインが、ある時行き倒れの男を介抱することになる。

 ヒロインの回復魔法をみて、驚く男。

 なんとヒロインの魔法は、単なる回復魔法ではなく、かつて聖女だけが行使できた失われた聖魔法だったのだ!!

 実は王族だった男は、聖魔法の使い手を庶民のままに捨て置けないとヒロインを王公貴族御用達の、魔法学園へと入学させる。

 しかし庶民のヒロインに待ち受けていたのは、大貴族ルクレア・ボレア主導の嫌がらせという洗礼だった…。

 度重なる嫌がらせに負けず、凛とした姿を貫くヒロインに、いつしか攻略対象は惹かれていき…


 と、いうのが、だいたいのゲームのあらすじだ。パッケージに書いてあった文、ほぼまんまだ。


 玄人顔負けの高いイラスト力で、同人ゲームとしてはかなり評価が高い名作だったと記憶しているが、一方で商業でない故か、色々つっこみどころが多い迷作でもあった。



 まずキャラクターの名前。

 大真面目なのかネタなのか、よく分からない名前がごろごろいる。

 その筆頭がヒロイン。

 物語でしばしば天使と例えられる彼女の名前は「エンジェ・ルーチェ」である。しかも、乙女ゲームの癖に、名前変換できないという不可解設定。

 そのまま過ぎんだろーが。ちったー捻れと、突っ込んでしまった私はきっと、悪くない。

 私の名前も一見普通に見えるが、どうもイタリアの某毒の一家の末娘の姫君の名前を意識しているように思えて仕方ない。

 別に、毒とか使う展開ないのに。

 鬼畜シスコン兄とかいないのに。

 てかまず、大貴族の娘とはいえ、王族というわけでもない。

 個人的には、製作者は悪役の名前をつけるのが面倒で、悪女エピソードをまとめた本を適当にめくって、目についた名前を文字ったのではないかと睨んでいる。(私としては彼女は悪女だと思っていないが、何故か悪女として扱われることが多い不憫キャラである。)

 他にも攻略対象の一人のの王子様キャラの名前が「オージン」だったり、ナイーブ系文学キャラが「ダーザ・オーサム」だったりと、際どいラインを攻めて来るのだ。そのまんま過ぎるエンジェもあれだが、そう言う微妙なラインの名づけが一番もやもやして仕方無かった記憶がある。元ネタはっきりしやがれ、合っているのかわかんねーじゃねーかと、何度か一人部屋で喚いて家族に白い眼で見られたのは、もう遠い昔の話だ。


 続いてエンディング。

 通常のエンディングは普通に乙女の夢をかなえる胸キュンエンドなのだが、それ以外のネタエンドが酷いし、その癖多い。

 ヒロインが、全ての攻略キャラをおとして下僕化し、国の女王に君臨する逆ハーエンド(エンド7:君は僕らの女王様)はまだいい。

 全てが夢落ちで、実はヒロインは現在を生きる女子高生だったエンド(エンド6:そして日常へ)があったり、攻略対象を急に突然剣で切り捨てるエンドがあったり(エンド13:愛などいらぬ。我、覇道の道を行く成)、ヒロインが実はサキュバスで、攻略は全てその能力故だったというエンドがあったり(エンド20:ご馳走様です。デザートはどこに)…。

 正規ルート以外のネタエンドが多過ぎて、しかも条件も本筋以上に微細だったが故に、コンプ出来ないユーザーが続出し、一時そのサークルのHPがお祭りになっていた時期があった。

 私も書き込んだのだが、返答が遅く、結局コンプせずに別のゲームを始めたのだがが、当事者になってみて初めてそれが悔やまれる。どんな恐ろしい未来が待ち受けているか分からないじゃないか…。


 その他にも、ファンタジーの癖に最先端現代機器がちらほら存在していたり、物理法則がおかしかったり、SF要素や陰陽道的要素が混在していたり、色々カオス要素を過分に含んでいた作品だった。


 そんなめちゃくちゃな異世界に転生してしまったと気付いた当初は頭を抱えた物だが、慣れてしまえば元の世界なんかより、よっぽど愉しい世界であった。

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