表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームの悪(中略)ヒロインが鬼畜女装野郎だったので、助けて下さい  作者: 空飛ぶひよこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

190/213

それぞれの恋の行方14

本日投稿一回目。

 もう、隷属の印はない。

 確かな形の、デイビットとの繋がりはなくなってしまった。


 そう思ったら、どうしようもない、喪失感に襲われた。


 確かな繋がりが失われてしまった今、同じ学園の生徒でもなくなってしまったら、私はこの先どんな名目でデイビットに近づけば良いんだろう。

 どうやったら、デイビットの傍にいられるのだろう。


「――話したいのは、これだけだ。それじゃあ、俺は行くわ。お前もさっさと精霊呼びだして、安全な状態で戻れよ」


 そう言ってデイビットは背を向ける。


 待って


 行かないで


 そう叫んですがり付きたいのに、力が抜けた体はうまく動かない。


 ぼろりと目から涙が零れた。



 嫌だ、嫌だよ。デイビット。私から、離れて行かないで。

 下僕で、いいよ。関係の名前なんかどうでもいいよ。

 デイビットが、傍にいてくれるなら、なんだってかまわないんだ。



「――私、だよ」


 気がつけば涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、去りかけるその背に向かって叫んでいた。


「…私が、クレアだよ…!!11年前にデイビットを傷付けた、復讐の相手は、私なんだ…!!」


 私の言葉にデイビットが、驚いたように振り返った。

 振り返ったデイビットと視線があった瞬間、さらにぼろぼろと涙が零れてきた。

 嬉し、かった。

 その瞳に自分が映し出されていることが、ただただ嬉しかった。


「復讐、するんでしょ…?だから、駄目だよ…隷属契約解除なんかしたら…どっか遠くに行ったりなんかしたら、駄目だよ…」


 復讐で、いいよ。

 向ける感情が、負の感情でもかまわないよ。


 ひくりとしゃっくりが出た。


「だから、離れて行かないで…傍にいさせて…――デイビットが、好きなんだ」


 顔面をぐちゃぐちゃにして、泣いてすがる私はさぞかし、みっともない姿だろう。醜態という言葉が、まさに相応しい。

 それでも羞恥も何もかも投げ捨てて、必死に想いを叫ばずにはいられなかった。


「好きで好きで仕方ないんだっ……!!」



 ――ああ、馬鹿だな。私。復讐したい相手にこんなこと言われても、困るだけだろうに。

 寧ろ、復讐の為嬉々として拒絶される可能性が高いのに。こんな告白、叶うわけないじゃないか。


 うつむく私の視線の先に、いつの間にか目の前に来ていたデイビットの足が映る。

 頭上から降ってくる溜め息に、体が震える。


 不意にデイビットが私に視線を合わせるようにかがみこんだ。

 デイビットは仏頂面で私を睨みつけながら、そのエメラルドに大きく私を映し出した。


「――やっぱりあの時の糞女はてめぇか」


 憮然と吐き捨てられた言葉に、目を開く。


「…知って、いたの?」


「…確信はなかったけど、な」


 そう言いながらデイビットは苦虫を噛んだように、渋い顔で眉間に皺を寄せた。


「良く似た偽名。あの時のお前を彷彿させる高慢ちきな態度。身体的特徴の一致…そりゃあ、もしかしたらと思うだろう。それに…」


「それに…?」


 デイビットは僅かに逡巡してから、ふいと視線を反らして言い放った。


「――それに、俺は昔も今も、お前ほど綺麗な奴を見たことがねぇ」



『…お前、きれいだな。…お前みたいな、きれいな奴、初めて見た』


 デイビットの言葉が、11年前のあの時のそれと、重なった。


 カッと頬が熱くなるのがわかった。


「――あー。なんだ?お前、俺のことが好きなの?本気で?」


 自分で自分の言ったことが恥ずかしかったのか、デイビットもまた僅かに頬を染めながら、乱暴に自身の髪をかきむした。

 うまく状況についていけない私は、ただ一度こくりと頷く。

 そんな私の返答を、デイビットは鼻で笑った。


「……趣味悪ぃな」


「……―知ってるよ!!」


 この場面、この状況でこの言葉!?

 知っているよ!!趣味が悪いことなんて、重々知っているよ!!こんな性格が悪くて、私を11年も憎み続けている相手好きになるなんてさ!!


 だけど、趣味悪いって自覚しているけど、好きになってしまったんだから、仕方ないでしょうが!?


「――まあ、俺も人のこと言えねぇけど」


「…え」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ