ご主人様の名前
にっこり、にっこり微笑んだ悪魔様は、片手で私の顔を鷲掴み、頬を圧迫していわゆる「たこさん口」を作る。
あら、鬼畜な悪魔様にしては、存外ぬるいというか可愛らしいお仕置き…って、じゃねぇぇぇ!!
痛い痛い痛いっ!!指頬に食いこんどるっ!!指圧というか握力というかなんというか、圧迫感、マジぱねぇ!!痛ぇよ!!容赦ないよ!!
ちょ、痕ついちゃう、やめてっ!!ルクレアはゲームのキャラなだけに、無駄に肌白くて綺麗だから、絶対指の痕目立つから、やめてぇぇぇ!!
「ご主人様を悪魔だとかほざくとか…いやぁ調教がいがある奴隷だなぁ、てめぇは。」
「ほうほういははいへふははい!!(訳:調教言わないで下さい!!)」
「…まぁ、ちゃんと名乗らなかった俺にも、責はあるから、今回はこれで勘弁してやろう。愚姉の名前で呼ばれんのも、それはそれで不快だしな」
そう言って悪魔様は、私の剥き卵のごとき柔肌を、解放した。
…うう…ハイスッペク補正のせいか、特にお手入れしなくてもつやつやつるつるな美ほっぺだけど、このせいで肌荒れたらどうしよう…。
涙目になりながら、頬を撫でる私に、悪魔様はとんでもない事実を突きつける。
「一度しか言わねぇ。一度しか言わねぇから、ちゃんとそれでてめぇのちっさい脳みそに刻み込んでおけ」
そう言って口端を上げて笑う悪魔様の背中に、私は真っ黒な羽根が見えたような気がした。
――『君の背中に翼が見える』
漆黒に染まった、美しい闇色の翼が。
「――俺の名は、デイビッド・ルーチェ。てめぇの生涯の主人になる男の名前だ。絶対忘れるな」
デイビッド・ルーチェ
デイビ・ルー
デビル
devil
= 悪魔
…製作者ネタに素直過ぎんだろっ!!おいっ!!頼むから、いっぺん殴らせろっ!!マジで!!
――この日から、大変不本意ながらも、私が悪魔なご主人様に振り回される苦悩な日々が、始まったのだった。
完
…って、簡単に終わらないよ!!残念ながら、この先も続いてしまうよ!!
誰か、切実に、可哀想な私を、助けてくださいっ!!
【ルクレアが知らないゲーム事情】
エンド8:君は僕らの大王様
すべてのキャラにおいてラッキースケベイベントを発生させずに、可能な限り最大値まで好感度を上げた場合のみ発生するイベント。
大筋はエンド7:君は僕らの女王様と同じだが、その後、エンジェが実は本物のエンジェの双子の弟ディビッド・ルーチェだったと判明する。
しかし、マシェル・メネガをはじめ、ラッキースケベイベントは全ての攻略キャラに起こるイベントであり、また、そのイベントを避けたうえで、好感度をMAXまであげるのは非常に困難であるが故に、幻のエンドとされている。
なお、エンド中でも、原作のルクレアがディビットの下僕のように扱われ、犬の首輪をされ鎖に繋がれている描写がある為、残念ながら回避不能な事態だったと思われる。(合掌)
※完結しません。続きます。