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アルク・ティムシーというドエム46

 シルフィは、普段もツンデレで可愛いが、眠いとデレ成分が一層強くなってなおのこと可愛い。…貴重な情報だ。覚えておこう。


「――それでね、シルフィ。ちょっと、風で木をあちこち揺らして、人が潜んでる感じにしてアルクの注意を逸らして欲しいんだけど」


「…フ、ハーイ。ヤッテミル…フワァ…」


 …しかし可愛いけど、やっぱり心配だな。なんか船漕いでるし。うつらうつらしてるし。

 だ、大丈夫か?シルフィ?…いや、信じてないとか、そういうわけじゃないんだけど。


「…ソレジャ、行キマース…」


 はらはらと見守る私を余所に、シルフィはいつものように風魔法を展開する。

 ちょうどアルクの後ろの当たりの木々が揺れ、アルクの視線がそちらに向く。


「っエンジェ嬢?そっちにいるのか…?」


 …おお!!いい感じ。いい感じに、アルク騙されている!!

 ナイス、シルフィ!!その調子でどうかアルクを攪乱してくれ…!!??


 両手を握りしめてシルフィの方を向いて、唖然と口を開く。


 …え、シルフィさん。ちょっと待って。ちょっと待って、君がアルクに向けて作ってるそれさ。


「っ!!!???な、何だ!!ぶおっふ!!」


 ――どっからどう見ても小型の竜巻だよね!?ちょ、直撃したアルク、今派手にぶっ飛んだよ!?


「…マスターノ敵ハ、排除スル…」


「い、いや、シルフィ!!今のどう考えてもやり過ぎだからっ!!攪乱の域を超えてるから!!」


「エ…マスター、マタ、喜ンデクレナイノ…??」


「っ!!ちょ、シルフィ、またそんな泣きそうな顔しないで!!グッジョブ、グッジョブだよ。シルフィ!!流石私の、愛する風精霊!!大好きだ!!超超超超愛している…だけど、今の状況的にはちょっとやり過ぎ…」


「…こ、この容赦ない攻撃…さては、エンジェ嬢、そっちの方向にいたのか!!」


「ひぃっ!!アルクに方向特定された!!ど、どうしよう…!!」


 …やっぱり眠い精霊に、魔法展開させてはいけないね…っ!!

 どうしよう、予想外にカオスな展開になって来たぞ…!!どうしよう…!!


「――取りあえず、あの攻撃の威力考えると、暫くはあのドエム野郎動けなさそうだな…」


 私がパニくっている一方で、デイビットは冷静に状況を分析していた。


「良くやった。風精霊。もう帰っていいぞ…行くぞ、ルクレア」


「…チョット、アンタニソンナ事言ワレル、筋合イナインダケド」


「…ほう」


 まずい…!!眠さのせいで、シルフィの危機回避能力が低下している…っ!!いつもは怯えているデイビットに喧嘩を売るなんて…!!

 シルフィに向けるデイビットの笑みが、なんか怖い…まずい。まずいぞ、このままじゃ、サーラムのようにお仕置きのシャッフルされて、トラウマ根付かされてしまう…!

 何とかして、私がシルフィを守らねば…!!


 慌ててシルフィとデイビットの間に入り、デイビットの手を握る。


「そんなことより、今は逃げるのが先刻でしょ。デイビット。アルクが回復する前にさ――シルフィ、眠い中本当ありがとうね。今日はもう、帰って寝な?ね?」


「…デモ」


「明日、今日の分、いーっぱいシルフィを褒めたげるからさ。…そうだ、お礼にシルフィのお願い、何でも一個聞いたげる。明日までに、それ考えといて?」


「ッ本当!?」


「うん。本当。約束」


「絶対ダヨ、マスター!!約束ネ」


 そういって、シルフィは満面の笑みを浮かべて精霊界に帰って行った。

 ……勢いで何でも願いを聞いてあげるとか言っちゃったけど、シルフィ一体何願うつもりだろ…。あんまり無茶なことを言わないでくれるといーんだけど…。


「…よっし、それじゃあ。逃げようか、デイビット」


 気を取り直してデイビットの方を向くと、デイビットはどこかぼうっとした顔つきで繋いだ手を見ていた。


「…デイビット?」


 訝しげに呼びかけながら繋いだ手に力を入れると、デイビットは我に返ったように顔をあげて私を見る。


「…ああ、そうだな。行くぞ、ルクレア」


 繋いだ手を強く握り返されて、デイビットはそのまま校舎の方へと駆けだした。

 デイビットに手を引かれるままに走りながら、ようやく私はデイビットの様子がおかしかった理由に思い至る。


 ……あれ…咄嗟につないでしまったこの手……指と指を絡める、いわゆる「恋人繋ぎ」って奴になってないか?


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