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アルク・ティムシーというドエム18

『ルクレア…天使が住む村に、一緒に行ってみないかい?最近随分煮詰まっているようだ。少しはお前の気分転換になるだろう?』


『天使が今もなお実在するのかって?…いや、単にそう言われているだけだよ。本物の天使がいるわけじゃない。…おや、随分と肩を落として。伝説に憧れるなんて、最近とみに大人びてきたと思っていたけど、やはり私のお姫様はまだまだお子様なんだね』


『ははは、怒るな。怒るな。いいんだよ、お前はまだ子供で。だってまだ、6歳なのだから。――ルクレア、お前はまだ、子供なんだよ。お前は随分と年齢以上に背伸びをしようとしているが、それは事実だ。お前の脳もまた、6歳児の物なんだ…例えお前の魂にどんな記憶が刻まれていようともね』


『ん?何か知っているのかって?いや、私は何も知らないよ。ただ、思ったことを言ったまでさ。深い意味はないから、そう気にしなくてもいい。――それで、ルクレア、どうする?私と一緒に行くかい?』



「……っ」


 飛び起きたベッドの上で、ほんの少し前に見た夢の内容を思い出して、一人頭を抱える。

 語られる父の言葉。これは、ただの夢だ。

 ただの夢だけど――確かに私はこの言葉を過去に聞いた気がする。


 メイドの世話の元身支度を整えて食堂へ赴くと、そこには両親の姿は無かった。

 席につくなり運ばれて来た朝食もまた私の分だけで、それは極力朝食くらいは共に取ろうと努めている両親の不在を意味していた。


「――お父様とお母様は、隣国への訪問だったかしら?」


「ええ。今回は随分長い訪問のようで、一月は戻られないとのことです」


「…そう」


 傍仕えの返答に、あっさりと頷いて朝食に手を伸ばしながらも、内心では酷く落胆していた。

 …何もこのタイミングで隣国に行かなくてもいいだろう。せめて、一日遅かったら…。


 しかし、いくら嘆いても父が当分不在な事実は変わらない。

 かといって、隣国にいる父に早馬を飛ばす要件でもないが故に、もし父に話を聞くのなら、ひと月後ということになる。…とても待ってられんな。

 焼きたてのパンを優雅にかじりつきながら、まだ半覚醒の状態の脳でぼんやりと今後のシミュレーションをする。


 ――お父様が駄目なら、聞く相手は一人しかおるまい。うむ。





「…ッテ、マタコンナ時間ニ森に行クノカ!!馬鹿マスター!!」


「サーラムッテバ、マスターノスルコトガ不満ナラ、別ニ帰ッテモイーンダヨ?私ガ傍ニイルカラ、マスターニ危険ナコトナンカ何モナイシ」


「…ッ今マデ、アノ男ニ会ウノガ嫌デ、逃ゲ回ッテタ癖ニヨク言ウ!!シルフィ、オ前コソ、サッサト精霊界ニ帰レ!!マスターヲ守ルノハ、俺ノ役目ダッ!!」


「…イエ。イツモサーラム二バカリ任セテイテハ、申シ訳ナイデス。ナノデ今回ハ私ガマスターノ護衛ヲ…」


「……ディーネ…無理、スルナ…アイツ、怖イ、ダロ?……俺ガ護衛スル…」


「――お前ら、糞可愛いな、おい」


 目の前に天使が4体いる。――あ、天使じゃない、精霊だった。

 我こそはと、護衛を立候補する愛しの精霊ズに、顔がでれんでれんになるのが分かる。…やばい、何この取り合われている状況。幸せすぎる。…4体とも、どうか私の為に争わないで…嘘です。もっと争って!!私の為に争って!!超大好き、お前ら…っ!!


 サーラムはともかく、今までデイビットに会うことを忌避していた他3体まで今回護衛を買ってでたのは、全てが先日のシルフィとの喧嘩が原因だった。

 あの件以来、シルフィは今までよりも明らかにツンの割合を少なく、デレの割合を多く接してくるようになった。

 そんなシルフィが可愛くて可愛くて、贔屓は良くないと分かっても、ついつい構い倒してしまう私の姿に、サーラムは勿論、ディーネとノムルまで嫉妬の火が付いたらしい。明らかに今までよりも出現頻度も、デレ度も高く、接触してくる三体。それに負けじと、さらに私にべったりになるシルフィ。

 …誰が一番とか、選べないから、板挟みで辛い。辛いけど、どうしようもなく、顔がにやけて仕方ない。苦しいけど、しかしどうしようもなく嬉しくて幸せでもあるという、この矛盾。


 ――ああ。前世ではいまいち理解出来なかった男性の気持ちが、今の私なら分かる。

 声を大にして叫ぼうじゃないか。


『ハーレム最高』と…っ!!



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