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ルカ・ポアネスという不良26

 私の言葉を聞いた瞬間、ルカの顔が一気に凶悪に歪んだ。


「なんで、ここであの糞女の名前が…」


「あら。貴方が糞女とおっしゃるエンジェは、キエラと同室者で、とても仲が良いのですわよ?」


 …すぐ傍で並んで、その未来を見たいと思われるぐらい、特別な存在のようだよ、と内心で付け足す。

 流石にそこまで言ったら、ルカがショックを受けそうだし(デイビットが実は男だと知ることになったら猶更)自分的にも何となく複雑な事実なので、敢えて言葉にはしないでおこう。

 ……なんてか、深く考えてはいけない事実な気がするんだ。私の精神衛生上の為に。


「エンジェと主従契約を結んだら、必然的にキエラと交流する機会も増えますわ。エンジェの従者としてなら、キエラも積極的に貴方と関わろうとするでしょう。…そうすれば、貴方の想いがキエラに届く可能性も高くなるんでなくって?」



 私の言葉に、ルカの眉間に刻まれた皺が、きりきりと深くなる。

 …迷ってる、迷ってる。

 ルカは腕組みをしながら、一人唸っていたが、暫くして心を決めたように一つ頷いて、伏せていた視線を私に向けた。


「――検討はしてみたが、例えどんだけメリットがあろうが、ただ後ろに立ったくらいでいきなり人を容赦なく蹴飛ばす糞女に一生従うのは、ぜってぇ嫌だ」


 ……まぁ、そうだろうな。

 

 表は澄ました顔のままで、心の中だけでうんうんと頷く。分かるよ、その気持ち。


 提案しといてなんだけど、嫌だよな、流石に。

 うん、ルカ、あんたの決断は正しいと思うよ。恋の為に人生を棒に振る覚悟が例えあったとしても、流石にこの選択肢はねぇわな。メリットに対してデメリットが高すぎるもん。デイビット、まじ悪魔だもん。


 ……しかし、その提案が却下だとするなら、考えられる方法としては―……。



 私は脇に置いていたカバンから、メモと筆記用具を取り出すとそこに7桁の数字を書き記した。

 数字を書いたメモを丁寧に切り取ると、突然の私の行動に戸惑っているルカの目の前にメモを差し出す

 ルカは私の手の中のメモに訝しげな視線を送った。


「……?」


「これ、差し上げますわ」


「差し上げるって…何の数字だ。これは」


「キエラの携帯番号ですわ」


 そう言った瞬間、カッと目を見開いたルカは差し出したメモを、ひったくる勢いで取って抱え込んだ。

 ……本当に動きが動物的というか、即物的というか。…脳で考えるよりも早く、脊髄反射で動いているよね。こいつ。


「キ、キエラの番号だと…!?」


「…まぁ、携帯番号といっても、プライベート用ではなくて仕事用のナンバーでございますけど」


 ちょっと調べれば簡単に調べがつく番号で、別に稀少な情報でも何でもないが、コミュ障故に何の人脈も情報源もないルカにとっては貴重な情報であろう。

 大事そうにメモを抱え込むルカに、思わず漏れそうになった溜息を飲みこむ。


 ……ほんと、世話が焼けるなぁ。


「キエラは恋愛専門の情報屋だと言われていますが、実際には恋愛以外の情報も扱っておりますわ。…貴方、ポアネス家の直系ならそれなりに自己運営できるお金は持っているでしょう?その番号に電話を掛けて、情報を買いたいとそうおっしゃいなさい」


「情報?何の情報を買えばいいんだ!?」


「……何でもいいですわ。武闘大会が近いから、ライバルになりそうな相手の情報でも集めて貰えばいいじゃないんですの?」


 大事なことは、何の情報を買うかじゃない。

 情報を買うという行為を通して、いかにキエラと交流をとれるかだ。


「キエラは情報屋として、お金を出してくれるお客様を無下に扱うことはないですわ…拒絶される可能性が無いならば、貴方だってもう少し積極的にキエラと関わることが出来るのではありません?――お金で情報を買うという名目で、キエラと交流する時間を買えばいいのですわ」


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