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ルカ・ポアネスという不良23

「…それって、キエラ・ポーサのことかしら?」


「キエラ…!!キエラっつーのか、あの娘は…っ!!」


 尻尾をますます強く振りながら、顔だけは相変わらず凶悪なままで、キエラ・ポーサ、キエラ・ポーサと何度もその名を反芻するルカ。


 んん?これって、もしや…。


「…その…キエ、キエラの学年は何年だ?」


「…一年ですわね」


「専攻は?」


「商業特化コースですわ。確か」


「お前と、キエラの関係は?」


「情報屋と、クライアントですわね」



 私の解答一つ一つに、喰らいつかんばかりに身を乗り出す、ルカに確信する。


 ………うーん。これって、どう考えてもアレだよな。


「……貴方、キエラに好意を抱いてますの?」


 恋しているとしか、思えん。


「―――っっっ!!!!!」


 私が指摘した瞬間、ルカの顔が面白いくらいに真っ赤に染まった。

 尻尾が動揺故に、不思議な動きではためく。


「んな、んなわけねぇだろーが!!ば、馬鹿じゃねぇのっ!?」


 ……そんな分かりやす過ぎる、ツンデレテンプレっぽい台詞で返されても。

 思わず生ぬるい視線を送ってしまう。


「…お、俺はあれだ…っ!!ただ、そのキエラに、恩義があるからっ!!だから恩人のことくらい知っておかなければと思っただけで…っ」


「…恩人?」


「以前あの糞女に蹴り飛ばされて身ぐるみ剥がされた時に、助けてもらったんだよ…っ!!」


 …あぁ、そういえばキエラ、責任もってルカ回収したとかんなこと言ってたな。んで、それで惚れちゃったと。

 ……チョロイな、ルカ。典型的チョーローじゃないか。


「……そう。恩人のことが知りたいだけですの」


「そ、そうだっ!!」


 顔真っ赤に、動揺全開で主張されても、全く説得力ないな。分かりやすいツンデレだ。

 だが、ここは敢えて乗っかってやろう。


「――残念ですわ」


 私は眉間に皺を寄せながら、大きくため息を吐いて肩を竦める。


「もし、貴方がキエラを好きだというのならば、もっと私に協力できることもあるかもしれないと思いましたのに。…質問はそれだけですわね。それじゃあ私はこれで失礼しますわ」


 そう言って身を翻して立ち去ろうとするなり、強い力で肩を掴まれた。


「――待て」


 振り返れば、予想通りそこには必死な形相のルカ・ポアネス。


「俺は、あの娘に…キエラに、惚れてる…認める…認めるから、協力しろ」



 うわあい。びっくりくらい計算通り。こいつ人間不信設定だったはずなんに、こんなチョロくて大丈夫なんか?お姉さん、ちょっと心配だよ。


 ――願い通り、分かりやすくてチョロくて、手のひらで簡単に転がされてもそれに気づかないような、単純な人間との分かりやすい交流タイム、ゲットです。


 ああ…癒やされるわぁー。




「――正直、どうすりゃあいいのか、わかんねぇんだ…。こんな気持ち、初めてで…」


 ……なんて、思っていた時期が、私にもありました。一瞬だけ。


「…うんうん」


「一瞬で惚れたはいいが、どこのだれかもわからねぇし。聞けるあてなんかねぇから、学園でうろうろして一人で探すしかなくてよ…で、今日たまたま見つかったはいいが、なんて声を掛けりゃわかんねぇままキエラは、俺のことなんか気づかねぇでさっさと部屋に入っちまうし。しかも、部屋には結界が貼ってて中の様子も探れねぇから、中で何が起こってんのか心配で心配で…ようやく出てきても、やっぱり声なんか掛けらんねぇまんまで…」


「ソーナンダ」


 今、とても、後悔しています。

 

 最初から、気が付くべきでした。だって、この状況、果てしなくデジャブ。

 どこぞの皇太子にのろけ話と、ベクトルは違うけど、シチュエーション的には、同じなのです。

 私は皇太子に対して、今までどう思っていたかなんて、ちょっと考えれば分かることでした。


「…誰かに相談に乗って貰いたかったんだ…だから、お前が協力してくれるっつってくれて嬉しかった」


 そう言ってはにかむルカに、思わず目を逸らす。…胸が、非常に痛い。


 ……言えない。心なしか、目ぇキラキラしちゃっているルカには、とても言えない。


 ――ツンデレを弄りたいあまり、ノリで協力するって言ったはいいが、改めて考えると他人の恋愛に首突っ込むなんて超面倒臭いじゃないか、と今頃気づいてしまったなんて言えやしない。


 なんで自分から、面倒事に首突っ込んでいったし。私のばかあああ!!!

 

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