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行方不明な「またいつか」  作者: 二尾 二穂
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本文

 診断メーカーで出てきたお題が、何か書けそうなお題だった。

 結局、結果は「タイトル」だけど。


 動機は、ちょっと前に読んだ異世界転生のチートなハーレム物が、あんまり好きじゃなかった。

 読むのに費やした時間のために、舞台も、登場人物も、設定もババンと変えて書きました。

 



 

「わたしは、あなたを許してあげる。こんなわたしに、さいごまでつきあわせるんだもの」


 でも、すごく苦しかった。


 そうっと私は囁く。もう、声なんて届かないけど。

 怒りと、悲しみと、それでも捨てきれない愛という名の執着が、私を苦しめた。


「あなたが、わたしにやさしくなんてするから。ひと1人変えられないちっぽけなあなたは、それでも、わたしの心を捕らえたの。あなたは馬鹿だよね?ちっぽけなあなたを愛することは、けっきょく、わたしを変えることにはならないって、きづかなかった」

 

 同情したの?

 主人公ヒーローにでもなりたかった?

 そうなれるって、信じていたの?


 人に好かれる以外に何のとりえもない、平凡なあなたが。


 あなたは、私にこう言った。


『1人が好きなの?でも、楽しそうには見えないね』


 あの時、私は何も言わなかったけど。

 私はあなたの問いの答えを知っていた。


 1人は嫌い。


 1人は嫌い。大っ嫌い。


 でも、1人でいなければ。


 私は、私自身のことを知っていたから。


 それなのに、あなたは私に構ってきた。

 優しくして、言葉をかけて、あなたの輪の中に手を引いて連れていってくれた。

 

 1人は嫌い。

 みんなと、いる方が好き。

 

 だれかと、いるのが好き。

 

 あなたと、一緒に居たい。

 

 だけど、それは駄目だって分かってた。

 なのに、あなたは私に、孤独に耐えるすべを失わせた。


 愛さずには、いられなかった。

 駄目だと分かっていたけど。

 あなたを好きにならないことは無理だった。

 

 だから、あなたに好きだといった。

 恋人になりたいと。 

 もしも、叶ったとしても、わたしがこうなる前には別れを告げようと思っていたけど。

 

 あなたは、私の気持ちを受け入れてくれた。

 それまで以上に優しく、大切にしてくれた。

 

 なのに、あなたは、そのささやかな関係すら裏切っていた。

 あなたは、裏切ってなどいないといったけど、私にとって裏切りだった。


 ねえ、どうして、あなたは他の女の子と一緒に笑っているの? 


 どうして、写真の中で、あなたはあなたがただの友達だと言った、沢山の女の子たちと手をつないだり、キスをしたり、腕を組んだりしているの?


 どうして、そんな写真を微笑む彼女たちから受け取らなければならないの?


『あの人は、みんなの特別なんだよ?あんただけの恋人じゃないの』


 それは、“私”と同じくらい奇妙なことだった。

 

 でも。

 いいの。

 ゆるしてあげる。


 私は、最後の我儘で、あなたを連れていく。

 あなたのほうから手を差し出したんだから、私は最後まで離してなんてあげない。


「ずっと、1人きりで、おわるんだとおもってた」


 ふと見上げた木の、枝と枝の間には蜘蛛の巣がかかっていた。

 捕らわれている虫はいない。

 

 私とあなた。

 本当に捕らわれてしまったのは、どっちかな?


「だから、うれしい。わたしは、あなたとともに逝けるもの」


 そして、彼女は事切れた。


 真新しく掘り返された地面の横で。


 不自然に破られた、愛する男が映る写真が散乱する中で。


 うれしそうに微笑みながら。




 その終わりを見ていたのは、すぐそばの木の上で、枝と枝の間に巣を張った、一匹の蜘蛛だけだった。



 ハーレムもほどほどに、という話。

 女の子の心情が中心で、分かりにくかった部分は次話のネタバレで。

 ネタバレは時間経過とか、設定とか。


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