第3話
静かになったギルド内の酒場では3人の男女が話し合っていた。
「それじゃあ、旅の護衛ってことでいいのかな。」
「おい、お嬢さまに対してその口の利き方は何だ」
「いいのですよ。私が気にしないといったのですから」
3人とは、護衛の依頼を出しに来たユーリ、エリスそして騒ぎを収め依頼を引き受けたアルという冒険者の男だった。
「アルさん、あなたはパーティーとやらを組んではいないのですか?」
「ええ、俺は基本ソロでやってるんでね。今回も俺一人のつもりだが、他にいたほうが良いのかな」
「いえ、私たちの他に荷物があるでもありませんので大丈夫だと思います。」
ユーリはこの男を気に入ったようで、会話を楽しんでいた。
そんななかひとりエリスだけが男を睨みつけていた
(姫に妙な真似をしたらたたっきってやるからな)
そのころ王城では国王エゼルベルトが政務卿のヴィード侯爵と姫のお忍びの旅について話をしていた。
「陛下、いくら姫様の頼みといえ旅に出させるなどよいことではありませんぞ。ただでさえ軍務卿の一派が陛下の弟君であるエドワード公を次期国王にしようと画策しているのです。姫になにかあれば大問題ですぞ。」
「分かっておるわ。だから手は打ってある。」
「ほうどのような。」
「私の息子が姫の護衛につくのですよ。」
2人の会話に突如現れた男が口をはさむ。
「おお、オーランド公爵ではございませんか。王都にいらしていたのですか。」
「ええ、つい先日ね。ついて早々、陛下に息子を貸せと脅されてましてね。」
2人の会話に入ってきたのは北部を治める王家の分家で国王の盟友であり親友でもあるウィルソン・オーランド公爵であった。
「では御子息のアルフレッド殿に姫様の護衛をお頼みしたのですか?」
「うむ、領内をお忍びで旅し、悪を討つ公爵家嫡男殿がついていれば安心であろう」
オーランド公爵の嫡男アルフレッドは身分を隠し領内の悪人を退治することから領内での人気は高くその名声は王国全土に響いていた。
「覚えていないだろうがユーリにとっても10年以上前にあって一緒に遊んだ相手だからのう。久々の王都で悪いと思ったが護衛を頼んだのだ。」
「息子も姫と会いたがっていましたからねえ。一緒に旅をできるので喜んでいるのではないですか。」
「それに護衛は他にもつけておいた。これで多少は安心できるわ。」
「ええ、後の問題は姫が余計なことに首を突っ込まないかですが。」
「ユーリは父上の影響をつよくうけているからのう。」
お転婆な姫の旅を心配しながらも応援する3人であった。
一方ユーリ一行は王都の門をでて、いざ東部へ向けての旅を始めようとしていた。
「お嬢さん、いよいよ旅の始まりですよ。ここら辺は王都の威光が行き届いているが、ちょっと離れたら治安の悪い町や、モンスターや盗賊のでる場所もあります。気を引き締めてくださいよ。」
「ええわかってます。護衛はよろしくお願いしますよ。」
「おいあまりお嬢様になれなれしくするな。」
「はいはい。大丈夫ですよ、お供のお嬢さん。」
ユーリ一行の旅の第一歩をふみだすのであった。