プロローグ
ローラン王国の第一王女ユーリシアは治癒魔法の使い手であり、庶民にもやさしく、美しいその姿は国中からあがめられ慕われていた。
そんな彼女には尊敬する人物がいる。もちろん父であり、賢王といわれる国王エゼルベルトや清廉潔白な前政務卿のバレント侯爵も尊敬している。
しかし、それらの人物以上に今は亡き祖父エドワードを尊敬していた。
彼は、善政を行い民を愛した。そして悪を憎んだ。
彼が王位について以降は不正を働く貴族や官僚を追放し、都市の整備や治安維持を行い、王都の犯罪がそれまでの三分の一に激減し、さらに街道の整備や冒険者といわれる存在を保護し、その地位を向上させたことによりモンスターからの被害も減らした。
エドワードによる38年の治世によって国は栄え、世界で大国といわれるまでに成長した。
そして、彼は王位を息子に譲ったあと、自身の目が届かないところで苦しんでいる人々を救うため身分を隠し、諸国を漫遊し悪事を行う者たちに鉄槌をくだした。
ユーリシアはそんな祖父にあこがれ、自分も苦しんでいる人々を助けたいと思い、密かに諸国漫遊の旅に出ることを決意するのであった。