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幕間、『未来へまこう混沌の種』

 それは、出発前の出来事。


「ねえ、魔女って若返ったり大人になる魔法が使えたりするってホント?」


 水魔女との一連のやりとりのせいでスネてたエルフィが、突然を奇妙な質問を口走る/ちょっと返答に困るくらい唐突なネタふり――けれど、なんとか対応/答える水魔女さん。

「……え、ええ。一応使えるわね」

 嘘ではない。

 むしろ年齢操作は魔女の基本――『フィア』を除く誰もが自分の理想の年齢に戻っている。

 エルフィさん、『ムスッ』とした顔から一転/瞳を期待に輝かせ――続けて質問。

「じゃあ、じゃあ、……私を十三歳以下にする事できる?」

「…………うう」

「なぜ泣く!?」

 女泣。

 恋するメイドの境遇が不憫すぎて水魔女は泣いた。

 さっきまで口喧嘩してた相手に『お願い』するほど悩んでいる――その崖っぷち具合に、同性として思いっきり同情した/強気な娘が見せる弱さにグッとくる……ギャップの一種です。


 だが、残念なことに魔法は万能ではない。


 できることはできるし、できないことはできない。

 できないと思い込んでいるだけで、新しい法則を発見すればできるようになる事はある。

 つまり結局のところ、『魔法』はただの『技術』なのだ。

 世界の根源に触れ、世界の仕組みを知った『天才』だけが使える、世界の裏をかく技術/あくまで限定的に、自分に都合良くなるように現実を偽る詐術――それが、魔法。


 年齢……『身体時間操作』魔法は魔女なら誰もが使える。

 むしろ使えなくてならない――たとえ才能があっても、才能を目覚めさせるためには基礎知識の充実が必要/その為、魔女が魔女として覚醒するためには長い時間がかかってしまう。

 ――外見そのままの年齢で『魔女』になったフィアちゃんの方が異質過ぎるんだよね。

 五人の中には老衰で死にかけ、生と死の間で世界の根源に触れた者も居るぐらいなのだ。

 その状態から日常に復帰するためには若返りは必須条件――だからこそ、魔女の誰もが最初にこの魔法を創りだす。

 それゆえに、『身体時間操作』はそれぞれジャンル分けした系統を研究している魔女にとって特別な共通魔法なのだが……使用条件はシビア。

「年齢操作は反動が凄いから、『世界の外側』の存在になっちゃってる魔女以外が使ったら命に関わるけど、それでもOK?」

「反動?」

「たぶん、一歳若返ったら、その後の一年で十年分老化しちゃう……とか?」

「……使えねえ」

 吐き捨てるエルフィさん。

 水魔女さん、普段なら怒って言い返す場面だが……今回は生暖かい哀れみの瞳をエルフィさんに注ぎ続ける/同情の視線/受ける方にとっては苛つく精神攻撃。

 エルフィもそのムカつく視線には気づいているが、文句を言うよりも質問を優先させる。


「……アナタは、若返る気はないの? 王子のこと気に入ったんでしょ?」


 別になんでもない事のように、そんな事を聞く。

 ゼクスに女性が言い寄るなんて日常茶飯事――怒るだけ馬鹿らしいという達観の境地。

 だけど、言った直後に『ある事実』に気づく。気づいてしまった。

 ――……待って。たしか魔女は不老って噂じゃなかったっけ? それで若返ることもできたら……王子の言ってた『永遠の美少女』って条件にピッタリ当てはまっちゃわない!?

 ぶっちゃけ迂闊者だった。

 心の中で『マズイですよ、これは!?』って焦りつつも、ポーカーフェイス――気付かれすにやり過ごすために、頭をフル回転して次のセリフを考えるエルフィさん。

 そんな彼女に、何故か水魔女の方が気まずそうな顔で、話しかけてくる。

「……でもね~、若返る方は一定以上若返ると能力下がるし、成長する方の魔法は怖くて使えたもんじゃないのよ。帰れない片道切符を買うほどの好感度はまだたまってないかな~」

「……怖い?」

「成長するってことは、細胞分裂を誘発するって事だから……力加減間違えると全身が癌化して醜い肉塊になって、死ねないまま苦しみ続けなくちゃいけないって可能性があるのよ」

「怖っ!!」

 それは自分へのリスクが高すぎて踏み出せないって告白。

 それを聞いてエルフィは安心した――彼女なら『精算度外視』で踏み出せるから。

 これ以上踏み込んだらヤバイって境界線を鼻歌まじりで超えていくのが彼女だから。

 解りやすく言うと狂ってる。

 …………いや、愛に狂ってる。


 だから、彼女はいつか必ず、踏み越える。


 水魔女は、その狂気を感じて恐怖した。

 だから――


「――エルフィ」


「へ!?」

 初めて、名前で呼ばれたことに驚くエルフィ。

 名前を呼ぶということは、『メイド』でなく個人として認めたということ。

 友達、仲間、敵――自分にとって意味がある存在として認め、尊重する行為。

 つまりこの瞬間、彼女は――


「アナタの未来に……災いあれ」

「突然呪いの言葉を吐くな――――ッ!」


 ――この国を護る魔女から『危険人物』として認められたのです。

 横で黙って聞いてたゼクスは苦笑するしか無かった。

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