第三章、『水色の魔女』
「――王子、最近宿屋にヒキコモリっぱなしですね」
狭く薄暗い部屋に一組の男女の姿。
ベッドの上で正座させられているゼクス王子と、お説教モードなエルフィさん。
男を正座させて、女性が仁王立ちしているという、倒錯的な香りが充満してる一室だった。
ちなみに、ゼクスの服装は一般の旅人がよく着る『丈夫な服』を自分好みにカスタマイズしたもの――身についてる優雅さに、ちょっとラフな感じが加わってエルフィさんはドキドキ。
対するエルフィさんは……メイド服。城で着ていたのと同じに見えるが、生地が厚くなってて耐久度の高い冒険用メイド服。外を歩いていると周りから注目されるが、本人は『制服だから恥ずかしく無いですよ』と言っている。隣にいる人の気持ちも考えましょう、と言いたい。
つまり、メイドに正座を強いられる御主人様の図………………倒錯度向上。
「……うむ。日中出歩くと、道行く女性たちが『好きです』とか『抱いて』とか『遊びでもいいんです』とか『思い出をください』とか言ってきて怖いからな」
「……私が男だったら、思わず殴ってますね」
ゼクス、反射的にクロスガード!
でも、エルフィさんは女の子なので殴りません。
……ゼクスの態度にムカついて蹴りは入れましたが、殴りはしませんでした。
現在、ゼクスとエルフィが居るのは東の国境付近の村。
あれから……二人が旅立ってから既に一週間が経過していた。
もちろん、無為に過ごしていたわけではない――二人は『住所不明な魔女達』を捜すための情報収集に勤しんでいたのである/魔女達五人の住処は『五芒星』の位置関係になっていて、この国を外敵から護る『大結界』を構成している……というのは子供でも知っている有名な話なのだが、彼女達の正確な居場所は謎に包まれていた。
……だって居場所が簡単に解ったら外敵に狙われるから。
つまり『魔女の住処』=『軍事機密』なのだ/……まあ、『五芒星の位置関係』=『最初の一人を見つければ連鎖的に他の四人の正確な居場所もわかる』って情報が漏れている時点で本気で隠すつもりがあるのかどうか謎だが、それも含めて謎に包まれているのである。
「――王子、アナタは私にばっかり情報収集させて悪いとは思わないんですか?」
「思わないな」
「をいっ!」
「謝罪などしては失礼だろう。余はただ感謝するだけだ――ありがとう」
「…………ああ言えばこう言う」
ゼクスの『不意打ち感謝』に、頬を赤く染め、憎まれ口を返すツンデレメイド。
「でも、一日中部屋の中に居たら、身体訛りません?」
「いや。夕方、人通りが少なくなってから武器屋の看板娘のミューちゃんに会いに行くついでに、日課のトレーニングをしているから問題ないぞ。訓練を一日休むと取り戻すのに三日かかるから、休むわけにはイカンのだ」
「つ、ま、り、私が汗水垂らして、日が沈むまで情報収集してる間にアンタは毎日欠かさずその武器屋の看板娘に会いにいっていたと?」
「…………イエス、デス」
立ち位置変更――ゼクス、ベッドから床へ/姿勢は正座のまま。
静かな怒りを宿した笑顔で、足を組んでベッドに座るエルフィ。
……そんなメイドに対して、自然と土下座のような体勢で両掌を上に向ける王子様だった。
本当は、その少女――ミューちゃんのお願いを聞いて、この村でこっそり起こっていた『神隠し事件』を調査・解決していたりしたのだが……いまさらそんな事言ったら、絶対「なんで私に内緒でそんな危険なことしてるんですかーっ!」と怒られるに決まっているので内緒。言わぬが華ってやつです。
「…………で、いくつですかその看板娘?」
「数えで六歳……デス」
「…………うん。わかってたけどね……ハァ……」
そのブレない恋愛姿勢にため息しか出ねぇ。
声に呆れが混じったのを察知/好機――ゼクス言い訳開始/姿勢はそのまま。
「武器屋の親父さんは『大きくなったら嫁にもらってくれ』と言ってくれるのだが……大きくなったら嫁にはもらえんので困る」
本気で悩んでるから始末に困る。
この国中の乙女達の為に、本気でこの未来の最高権力者を『始末』したほうが良いんじゃないかと悩むエルフィだった。ハーレム作るとか言い出したら困るし、世間体が悪すぎるから。
「…………ハァ。王子、前々から言おうと思っていたのですが、人は成長するのです。そんな外見にこだわるような上っ面の恋愛はもとより不可能なのですよ」
「解っているさ――だからこそ、解っていても諦められないからこその理想だろう」
「良い事言ったような顔すんな!」
遠い瞳で窓の外を眺める想い人の姿に、『何もかも投げ出して遠くに行きたいな~』と、エルフィさんは思った。それでも見捨てない彼女は、恋の病的に既に手遅れ。
「余は、いつか永遠の美幼女を見つけ出してみせる!」
ガバッと立ち上がり、声高らかに宣言。
小さな宿屋の狭い部屋に響き渡る声は、哀しいぐらいヤる気に満ちあふれていた。
ちなみに、この二人は一緒の部屋に寝泊まりしています――ゼクスがエルフィに気を使わないのではなく、メイドの方が強引に決めた結果/職業を建前にした強行――年頃の男女が同じ部屋で寝泊まりすればって期待/バッチコイの精神/それなのに……毎日こんな感じだった。
「……はいはい。二次元にでも逝ってください」
結果、呆れを通り越して達観に突入したとしても、誰が彼女を責められよう……。
「――で、話を戻すが、その武器屋で情報集した結果、魔女の住処がだいたい解ったぞ」
「え、うそ!?」
否定から入るエルフィさん。
そんな専属メイドに地図を広げて説明する御主人様。
「誰に聞いても『魔女の正確な居場所』は知らなかった。それはエルフィも同じだな?」
「は、はい」
「だが、魔女がホウキに乗って空を飛んでいる姿を見た人はたくさんいた」
「ええ。よく飛んでるそうです」
「その方向を聞いて、線で結んだのがコレだ」
地図にはたくさんの線が引かれていた。
中には見当はずれな方向に行ったり、カーブを描いているものもあったが、その大多数は国境沿いのある一点で重なっている/外敵から国を守る『魔女の住処』は必然的に国境付近/むしろ彼女達がいる場所が国境――その条件とも一致する。
「じゃあ、ここに魔女が一匹住んでるんですか?」
「情報からの予測だから断定はできない。とりあえず他に有力な情報がないなら、行って確かめてみるのが手っ取り早いだろう」
「よっしゃ! じゃあ、思い立ったが吉日で案ずるより産むが易しです! いまから行きましょう! さあ、行きましょう! とっとと出発準備してください! 置いてきますよ!!」
王子に『準備しろ』って言うメイドは自分の存在を否定していると思う。
そして、メイドに言われるがままに出立の準備を始める王子は哀しい。
村から国境までは東に十二時間ほど。
地図の上では近いのだけど、山道で勾配があるために時間がかかるのである。
ゼクス達が宿屋を出立したのが夕方七時――だから、目的地に到達したのは朝七時だった。
「朝日が眩しいですね」
「うむ。眩しくて目がショボショボする」
眠そうなゼクスと爽やかエルフィ。
それもそのはず、メイドのエルフィさんはゼクス王子の背中でぐっすり快眠だったのです。
出立したのはいいけれど、歩いて二時間ぐらいしたら「疲れた~」と言いだして地面にへたり込んだエルフィさんを、背中におぶさって歩いた優しい王子様(苦労人)。
ちなみに、ゼクスはエルフィに異性を感じていないので背負うことに抵抗がありません。
胸が当たっても無問題/むしろ背負いにくくて邪魔に思う始末――無駄にデカいし。
――巨乳を否定するワケではないが、やはり胸は慎ましやかで、ささやかな方が良い。
完成されたものより、未完成で未熟なものに心惹かれる漢。つるん、ぺたん♪
「で、ここが目的地でいいんですか?」
「うむ。どうやら予測通りだったようだな。アレが証拠だな」
ゼクスが指さした先――
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!
――二人に向かって迫ってくる巨大なカタマリ/鋼鉄の竜。
かなりの距離があるのに、うるさいぐらいの轟音――その自重で地面を砕く『破砕音』/それだけの質量を有する巨体――全長九メートルくらい(目測)。
「な、なんですかアレっ!」
「カラクリ仕掛けのドラゴン――ゴーレムと言う奴だな」
予想外の敵襲に慌てるエルフィ。
初めて見るゴーレムに瞳をキラキラさせるゼクス。
「逃げましょう、王子!」
「興味深い。見ろ、あの中身がむき出しの部分――歯車とか機械がいっぱい詰まっているが、いったいどうやって動いているのだ? 余達を敵と認識できる仕組みとかもすごい技術だ。余は……余はアレを一回分解してから、もう一度組み立てたくてたまらないぞ!」
男は何歳になっても機械仕掛けが大好き。
たとえ組み立てられなくても、一度は分解してみたいと思うのが男の性なのである。
くっついているモノはバラバラにしたい。関節とか! カップルとか!!
「子供みたいなこと言ってないで! 死んじゃうでしょ! やだ、やだ、やー!!」
そんな男の生き様が理解できなくてエルフィは泣いた。
幼児退行して泣いた。
でも、ゼクスは『身体は大人、頭は子供』はノーサンキュー。
むしろ、『身体は子供、頭は大人』が大好き。バッチコイなのである。
「……泣くな、エルフィ。そんな本気で泣かれると、さすがの余も罪悪感を感じる」
誰よりも同じ時間を共有した幼馴染の泣き顔に、さすがのゼクスも考えを改めた。
「しかたないな……剣をくれ、エルフィ」
「……ちゅるぎ?」
舌が回らず赤ちゃん言葉。
ちなみに、エルフィさんのクールな外見はその口調に絶望的に合ってませんでした。
ゼクスが『これが美幼女だったら!』と思ってしまったとしても責められないほど似合ってない。口調・口癖・語尾は自分のキャラを把握して、的確なものを選択しないと恥ずかしい結果になります。要注意事項。
「ああ。その背中に背負ってる余の剣を――」
「けんで、アレと……戦うの!?」
信じられないバカを見たって感じの瞳。
そんな視線に――『ホっ』とした自分自身に恐怖を感じるゼクスだった/調教進行中。
「……し、心配無用。問題無い」
言葉をそこに置き、ゴーレムに向かう。
ゴーレムとの距離――約十メートル/剣の間合いは二メートル弱。
差し引き八メートルをダッシュで詰める!
こちらから接近してもゴーレムの行動は変わらず――ただひたすら全速力で、真っ直ぐゼクス達の方向に突き進む/下手な小細工無し――その鋼鉄の巨体での体当たり/特攻!!
それは小細工がないからこその脅威。
だが、青年は不敵に笑い――自分の四倍以上ある巨体相手に真っ直ぐに突き進む。
望むのは、力と技の真っ向勝負。
「たとえ作り物といえども、主の命を護るそのあり方に敬意を――」
心がないからこそ、その存在意義をまっとうしようとする姿勢を美しいと感じる。
そんな感傷的な考え方をするのがゼクスという男。
人形にすら墓を作る――人と物を区別しない男。
だからこそ、彼は油断しない。
単調な攻撃しかしてこないカラクリ人形相手でも、全力全開で応える。
距離三メートル/急ブレーキ/剣を構え――
「必殺剣スターダスト・インパクトぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっ!!」
――叫びと共に振り下ろす/『ガン』と音をたて弾かれる剣――弾かれた剣を軌道修正/再度攻撃――連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃/連撃――ただひたすらに斬りつける。
ひたすらに、ひたすらに、ひたすらに――
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ――――ギンッ!!
――その巨体が止まるまで、その装甲が砕けるまで、その存在を終わらせるまで。
それは瞬くような一瞬の間におこなわれた連撃。
エルフィはその光景を綺麗だと思った。
ゼクスの連撃は速すぎてエルフィには見えなかったけど。
だから、綺麗だと思ったのは技ではなく、ゼクスの周りでキラキラ輝く光。
その技――『スターダスト・インパクト』は硬質の装甲を斬るのではなく連撃で削りとる。その結果、星が太陽の光を反射して輝くように、周囲に飛び散った残骸が太陽の光(夜間は月光)を反射し煌めく――それゆえに、その技は『星屑』と名付けられた。
残ったのはバラバラに砕け散った機械仕掛けの竜。
そして、その残骸の中、悠然と立つ漢の姿。
「……必殺技とか使えちゃうんだ」
呆れ半分なのは、自分が『見惚れた』事を隠すため。
でも長い付き合いなので、ゼクスにはエルフィの心が手に取るように解った。
だから、エルフィの為に話題を逸らしてあげることにする。
……お気遣い紳士である。
「エルフィ、生身の肉体と、作り物の身体の一番の違いはなんだと思う?」
「…………………………………………………………………………柔らかさ!」
長考後――自信満々にこの答えに行き着く成人女性。
……恐ろしい才能である。
ゼクスは本気で不憫に思えて瞳を潤ませた。
「エルフィ……戻ったら学校に通えるように取り計らってやる。きっと……まだ間に合うよ」
「あー! テメー、いま私を哀れんだだろ!!」
可哀想な境遇にある子は、哀れみの視線に敏感。
そして、自分の境遇を認めたがらない。
……ついに耐え切れなくなって涙をこぼすゼクスだった。
「――答えは生きているかどうか、かな?」
そんな哀しい二人に向かって、空から答えが降ってきた。
見上げるとそこには――空に浮かぶ人影/箒に乗って浮遊できる、人の姿をした人外の姿。
それはエルフィが捜し求めた存在――
――……ハズレですね。
――……ハズレだな。
――じゃ無かった。
空――その蒼穹に溶けるような『水色』を纏った女性。
エルフィが会いたかったのは『ロリコン』か『モテモテ』の呪いをかけた魔女。
つまり白か黒の魔女なので、水色はハズレ。
……ションボリだった。
でも、気まずい雰囲気が消えたのでゼクスとしてはラッキーだった。
さらに言うなら、話を解ってくれそうな相手が現れた事に感謝の気持ちでいっぱい。
「ああ、そうだ。生きているものは常に自然治癒をしていく。無茶な動きをしても時間経過と共に回復していくからこそ、複雑な動きに耐えられる……いや、違うな。多少壊れても治るから大丈夫、と言ったほうが正確か」
「ソレに対して作り物――これは金属製なわけだけど、金属は動けば動くほど歪んで劣化していく。その結果、もっとも負荷のかかる、もっとも重要な部分が、もっとも壊れやすい弱点になる――点のような弱点だけどね」
普通、敵の『一部』を砕いただけでバラバラになるハズがない。
最も負荷のかかる部分――『要』の一点が砕けたことにより、その巨体を支えることができなくなって『自壊』したからこその、この結果。
大黒柱が折れたら家が潰れる理屈である。……スケールは違うが。
「余はそれを『崩点』と呼んでいる」
それを『たいした事してないよ~』って感じでいうゼクス。
だから、エルフィはなんか自分にもできそうな気になった。
もちろん、コレはゼクスが達人だからできるのであって、メイドごときにはできません。
「目に見えないソレを、どうやって見つけたの?」
「簡単だ。『デザイン』と、『どういう動きができるのか』が解かれば、計算で割り出せる」
興味津々な顔で尋ねる水魔女に『簡単なことだよ~』って感じで答えるゼクス。
「アハハ。それを簡単だといえるアナタは規格外すぎると思うよ」
「アナタ方が授けてくれた力だ。誇るようなものではない」
「ノンノン。私達はキッカケを与えただけ。既にそれはアナタの力ですよ、王子サマ」
心底楽しそうな顔で、水魔女が頭を垂れる。
臣下の礼。
ただし、空からなので立ち位置的には上から目線である。
見上げていたエルフィは首が痛くなってきたが、ゼクスは鍛えているから大丈夫。
「……アナタは?」
「改めて自己紹介を――私は五星の魔女、第五位『フュンフ』――あなたに優しさを刻んだモノ、だよん☆」
水色の魔女の家。
そこは思った以上に大きな家だった。
そして……想像以上に残念なゴミ屋敷だった。
「ひゃあ! なんかグニュってするもの踏んだぁ!!」
「それはたぶん…………聞かないほうがいいかな。うん」
「え、私なに踏んだの!? よけい気になるじゃない!」
ゴミをかき分け、ズンズン進む水魔女。
よく解らないモノを踏むことに恐怖し、立ち止まるエルフィ。
そして、テキパキと掃除し始めるゼクス――三者三様/困難に直面した時の考え方を体現。
「そこらへん勝手にいじっちゃダメだよ! ゴチャゴチャしてるように見えても、ちゃんと解るようになってるんだからネ☆」
整理整頓ができない人はみんなそう言う。
だからゼクスはそんな戯言を無視して、掃除、掃除、掃除!
ちなみに、ちゃんと整理整頓するコツは、いらないモノを捨てることです。
一時間後……なんとか座って話ができるぐらいの空間を確保する事に成功。
発掘したソファに座り、お茶を飲む三人。
ちなみにティーセットはゼクスの荷物の中にあったモノを使用しました。
わざわざ旅にそんなモノを持って来ているのは『じっくりお茶を飲むくらいの余裕を忘れないため(建前)』であり、ついでに『怒りやすいエルフィ対策(本音)』でもある。
「なかなか美味しいね。いい感じだよ」
「うん。私も王子の入れるお茶大好き。毎日、私のために入れてほしいな」
「うん。あんまり自己否定するな、エルフィ。なんか悲しくなってきた」
ゼクスのお茶は水魔女にも好評だった――『ピロリロン♪』と好感度アップ。
ちなみにこのお茶はゼクスが自分の好みで作ったブレンド。こだわる性格です。
「お茶飲んで落ち着いたところで――本題入っていいかな、魔女さん!」
「……このメイド、なんで上から目線なの王子?」
「……当たり前の教育も受けていない可哀想な子なのだ」
ソファの上に立って、水魔女を『ビシっ』と指さすエルフィ。
そんな失礼過ぎる姿に――帰ったら力を入れて教育関係に取り組むことを決意するゼクス。
――本人は手遅れでも、第二、第三のエルフィを生み出さないために!
「王子、なんかムカつくから殴っていいですか?」
「ああ。今の決意を忘れないために殴ってくれ」
…………メイド、ホントに殴りました。
顔は傷が残るって理由で腹を殴っているあたり手馴れております。
「王子、私はアナタが泣くのを止めるまで殴るのをやめない!」
ゼクスはそんな『ワケの解らないこと』を言うエルフィが心底可哀想で涙を止められない。
エルフィの方は、そんな『同情』が心底悔しくて――主君の腹をひたすら殴り続ける。
…………哀しい、悲しい、すれ違いだった。
ちなみに、エルフィのパンチごときではゼクスの腹筋にダメージを与えられません。
逆にエルフィの方が拳を痛めて、半べそかいて……このやりとりは終了。
「……ヘンな主従」
それを眺めていた水魔女は呆れて『ポツリ』と呟く。
もっともな感想――しかし、こんなバカなやり取りが出来る二人の信頼関係を羨ましくも思えるのだった。他の魔女達がアレだから余計にそう思う。ホント、恨めしい……。
「――それで、今日は私になんの御用なのかな、王子サマ?」
かなり恥ずかしい主従のコミュニケーションも終わり、いざ本題。
「王子の『呪い』を解いて欲しいんです」
ゼクスに聞いているのに、答えたのはエルフィさん。
水魔女もいい加減この二人の関係が解ってきたので、波風立てずそのまま続ける。
「呪いって……モテモテの呪い?」
「それ!」
「残念。それはフィアちゃんがかけた呪いだから、私には無理なので~す」
二十年前の白魔女と同じ答え――というか、『呪い』の話はこの魔女にとって『どうでもいい終わったこと』なので、時間がどれだけ経っていても意味なかったりする。人間、自分に関係無いことはどこまでも無関心になれるモノです。魔女だって元は人間。
でも当事者にとってはそうもいかない――だから、その『答え』にあんまり期待はしてなかったけど、しょんぼりするエルフィさん/でもめげずに『次』である。
「じゃあ、ロリコンになる呪いの方は?」
「……それ、呪いじゃなくて『祝福』なんだけど」
「違わないでしょ?」
「大違いだよ!」
怒って立ち上がる水魔女。
指を『パチン』と鳴らすと――白い板が出現/ホワイトボード。
「祝福は『才能を開く』魔法なの! 能力を与えるんじゃなくて、能力を成長しやすくする魔法――だから、それで手に入れた能力は全部その人のモノなんだよ! 大違いでしょ!!」
ホワイトボードに説明文(絵付き)を書いてノリノリ解説。
説明は解りやすいのに絵が残念/やたらとムキムキなマッチョをリアルに描写/肉、汗、輝き――ぶっちゃけキモい。
「……つまり?」
説明をイマイチ理解できなかったおバカなエルフィがネタバレを要求。
隣のゼクスは、心の中で哀れむ――顔には出さないように全力でセルフコントロール!
「――鍛えられた肉体や明晰な頭脳が既に王子の一部であるように、ロリコンも王子の個性」
個性。
それはナンバーワンよりオンリーワンな印象を与えてくれる魔法の言葉。
でも、個性的なことが必ずしも良いことではないというのが現実の悲しいトコロ。
「…………………………こ、個性って言えば許されるほど世の中甘くないのよ!」
エルフィさん、ちょっと騙されそうになったけど、騙されなかった。残念。
ゼクスと水魔女が心の中で「チッ」と舌打ちしたのは言うまでもない。ホント残念。
「王子も黙ってないで何とか言ってやってください!」
突然話を振られて、心の中で舌打ちしたのがバレたのかと焦るゼクス。
でも、そんな焦りを表に出さず、爽やかに応える/再び全力全開のセルフコントロール☆
「個性的っていうのは他の人とは『違う』ってことサ。でも、『違う』ってことは悪いことじゃなくて、『違う』からこそ、支え合える――とても素敵なことなんだよネ☆」
「なにそのキャラ!?」
爽やかに上っ面な言葉でありました。
……さすがに無理があったと反省し、咳払い一つ。
一転、真面目な顔になって――
「安心した」
――本心を告げる。
「はぁ!?」
その突然の言葉に驚くエルフィさん。
口を開けて『ポカーン』なマヌケ顔。
そして――そんなゼクスの態度に興味を惹かれたような表情をする水魔女/興味津々。
「フュンフ殿が余に与えた祝福は『優しさ』――余の心の在り方、で間違いないか?」
「うん。そだよ~」
「……もしも、魔法を解除することで、余から『優しさ』が無くなるのだとしたら……余は自分を信じられなくなるところであった」
その言葉に、エルフィと水魔女は気づく。
この青年がこっそり抱えていた、現在の自分が魔女達の魔法で作りだされた『作りモノ』の存在ではないか、というアイデンティティーに対する不安に。
それをずっと抱えていたからこそ、彼は物と人を区別しない。できない。
……なんか唐突にシリアスな雰囲気――対応に困る/狼狽える水魔女&エルフィ。
「…………う、うん。そう。そうなの! 魔法はキッカケ!! ……心を奪って人を操り人形にする事はできても、人格を保ったまま人の心を操作する事はできないんだよね!」
間接的な『誘導』はできても、直接的な『操作』は人格崩壊一直線な危険行為/禁忌。
それほど人の心――『魂』とか『誇り』ってヤツは繊細で難しくて理解不能なモノなのだ。
「人の心を変えられるのは人の心だけ……………………愛とか友情ってヤツだけなんだよ」
「クサっ!」
ホントに失礼なメイド様。
そんなメイドの心を力尽くで変えてやろうと、水魔女が魔方陣を描きながら呪文を唱え始めて……身の危険を察知したエルフィはゼクスの後ろに退散。盾にしたとも言う。
文字通りの板挟み――ゼクス的には『ヤレヤレ』な展開/でもスルーできない状況。
「……フュンフ殿。余とアナタの高尚な会話を残念ダメイドに理解しろという方が可哀想だ」
「――はっ!! 言われてみれば確かにそのとーり!?」
「…………………………………………アンタら泣かすぞ」
「お茶のおかわりはどうかな? エルフィも、お茶でも飲んで落ち着け」
二人のために、お茶のおかわりを注ぐ王子様。
その優雅な仕草に見惚れ、大人しくなるエルフィ&水魔女。
これこそ、 ゼクスがお茶の入れ方と一緒に執事に教わった奥義――苛立つ女性を落ち着ける王宮奥義『ティー・ブレイク!』である!! 類似技として『コーヒー・ブレイク』がある。
「まあ、バカなメイド相手に本気で怒るのも大人気ないよね~」
「まあ、年齢不詳なお婆ちゃん相手に怒るのも体裁悪いかな」
一息ついたと思ったら、再び戦闘開始。
――…………余は無力だ。
「あらあら……私は確かに中身は千年以上生きてるお婆ちゃんだけど、外見はピチピチ。アナタみたいに若さだけが取り柄の中身ノータリンより『受け』はいいでしょう?」
「あはは……うっさいよお婆ちゃん。限りのある人生だからこそ命は輝くんだから! アンタ達のメッキなんて、私の本物の輝きの前では無力! むしろ哀れって感じだよ!!」
「あらあら…………世間では二十歳超えたらもうオバサンらしいわよ?」
「あはは…………ソレどこの世間? アナタの妄想世界のお話かな~?」
――………………なんかお腹痛い。
ストレスである。
どうやらこの二人、お茶を飲みながら悪口を考えていた様子。
元から頭の良い水魔女はあまり変わってないが、エルフィの悪口はパワーアップしていた。
「……ウルサイわね。そもそも、なんで私がアナタなんかにグチグチ言われなくちゃいけないの? 呪いかけたの私じゃないのに。私、『優しさ』ってけっこうナイスな祝福あげた良い魔女さんなのに! そもそも王子がロリコンで困るのは『王国』であってアンタじゃないでしょうが! それなのに、それなのに…………うき―――――――――――――――――っ!」
水魔女がキレた。
不老長寿で千年以上生きている魔女様が、若者にグチグチ言われてキレました。
……歳を取れば人間落ち着くというのは絶対ではないようです。
水魔女のお気楽そうな雰囲気、反転――絶対零度の瞳がエルフィを刺し貫く/本能が生物としての格の違いを思い知る/恐怖で金縛り状態――それでも意地で抵抗/開口。
「わ、私だって……王子がロリコンだと困るんだもの!」
「なんで? なんで、アナタが、困るの?」
冷徹な声で、追い詰めるように問い詰める水魔女様。
なんか聞いちゃいけない感じだったので耳をふさぐお気遣い紳士・ゼクス。
エルフィはそんなゼクスを横目で確認/覚悟を決めて深呼吸――そして、『告白』する。
「それは……その………………………………………………私が王子にラヴだから?」
「メイド風情が、身分を考えなさい!」
即答――『ピシャリ』と一蹴!!
さすがにショックを受けて『シュン』となるエルフィさん。
星の王国は建国数十年な歴史の浅い国だけれど、さすがに孤児のメイドが次期国王と結ばれるほど甘くはない。王族の権威に関わる問題なので……それこそ、民主政に移行して国民に主体を譲るぐらいしないと絶対無理な夢物語。
……でも、エルフィにだってそんな事は解っている。
解っていて、それでも夢を見たい、夢見る乙女(二十代前半)なのだ。
「それに、そもそもアナタは王子のストライクゾーンから大きく外れているんでしょ?」
「だ、大丈夫だもん! 見た目なんかより大事なのは心! 跡継ぎ作る時だって王子は天井のシミでも数えていてくれればコトは済むんだから!! 口ではイヤって言っても身体は正直だって同僚のくれた本に書いてあったもん!!」
「……ソレ、思いっきり『心』無視してない?」
王城で働くメイド達の間では王族がメイドにいやらしいご奉仕をさせる読み物が流行っていたりします。身分差とかあると燃えるらしい。だから、エルフィは同僚の人気者。
――…………な、何か対策を立てないと実力行使で襲われてしまう。
……耳を塞いでも漏れ聞こえてくる二人の会話に、心底恐怖するゼクスだった。
「……と、とりあえず、話を戻してもいいかな?」
「ええ。ちょっと、私も大人気なかったかな……うん。大丈夫、大丈夫。問題なしだよん☆」
「ところで私達、そもそもなんの話してたっけ?」
「――余の呪いを解くって話」
「…………うん。始めっからね」
このやりとりのほとんどが無駄だったっていう哀しい事実。
まあ、ゼクスの不安を取り除くって意味では有意義な時間だったとも言える。
でも、『呪いの解呪』を目的にしているエルフィにとっては無意味で無駄足な気分。
……つまり、人にとって有意義な時間が、他の人にとって無意味っていう、よくあるお話だった。受け取り方は人それぞれっていうアレです。
「単刀直入に聞く――黒き魔女、フィア殿はどこにいる?」
エルフィさんに任したらダメだと解ったので、ここからはゼクスが話を進めます。
「……そうだね~。たしかに呪いをかけた張本人なら、解くことも簡単に出来ると思うよ。まあ、素直に応じてくれるかはともかくとして……」
「応じてもらう! 力尽くでも!!」
「……え? どうしちゃったの王子? なんか顔がマヂだよ」
「この呪いだけは、解かなくてはいけない――それが解った」
エルフィが茶々を入れても、華麗にスルーして続けるゼクス(シリアスモード)。
「ああ、そうだ。女性の自由意志を奪い魅了するなんて、間違ってる。間違ってるんだ!」
――……エルフィに襲われる前にモテモテの呪いを解呪しなければならない!
本音と建前……ではなく、両方とも本心。だから、その言葉には負い目も引け目もない。
「いやいや、自由意志を奪っているわけじゃないよ~。その『呪い』はあくまで王子の体質を変えて、異性を惹きつけるフェロモンを出すようにしてるだけだから」
「……意味分かんない」
「無知なメイドにも解るように説明するのは難しいわね……えっと、王子から嗅ぐと『エッチな気分になって王子の赤ちゃんが欲しくなる匂い』みたいなのが出てる……って感じかな?」
ちょっとおバカなエルフィに、丁寧に解説してくれる水魔女さん。
笑顔で解説――喧嘩は同レベルの相手じゃないと成立しないというから、実は気が合うのかもしれない/もしくはただの説明好き/その両方な可能性も高い。
「その結果、王子のことを好きになるのは……たぶん『自己を正当化』するための無意識の防衛本能ね。出会ったばかりの男の子供を産みたいって思ってしまう自分を『ふしだらな女』だと思うよりも、王子に一目惚れしたからだって思ったほうが自分を納得させられるでしょ?」
「……なんか、そういうネタバレって嫌かも」
それは、かなり救いのないお話だった。
魔法でも変えることのできない『心』を、自身の『誇り』を護るために自らねじ曲げる/そんな行為を周囲に際限なく振りまく――まさしく『呪い』としかいいようのない災厄。
「そうね。やっぱり呪いは解かなきゃダメかもね。…………なんか私もそろそろヤバイかも」
「え!? 呪いって魔女にも効くの!?」
「そりゃ効くわよ。魔女だって人間だもの」
「…………フュンフ殿、余の股間をさするのは止めていただきたい」
「離れろ! この泥棒猫!!」
いつのまにか両手に花状態。
左腕――水魔女/がっちり掴まれて身動き取れず/頬を紅潮させてもたれかかっている。
右腕――エルフィ/その大きな胸の谷間に挟まれて動くな危険状態/柔らかホールド。
そんな二人に挟まれて……トラウマで気分が悪くなってきて真っ青なゼクスだった。
「あ、フィアちゃんの居場所教える交換条件で私を王子サマのお妃様にするとかどう?」
「何言ってんのよ! というか魔女って結婚できるの?」
「できるわよ。人間だもの」
「…………フュンフ殿、余は少女しか愛せない漢。愛のない結婚などする気はない」
「そういえば、さっきから大っきくならないわね」
「うむ。今まで黙っていたが、既に余は十三歳以下の女性にしか反応しない身体なのだ」
「……ま、末期症状!?」
「ちょっと、王子! ソレ初耳なんですけど!?」
それは、普通に一歩引くレベルのカミングアウト。
そのあまりにあんまりな言葉に――
「……い、いいわ。フィアちゃんの居場所、教えてあげる」
――協力を決意してくれた水魔女さん。結果オーライ。
部屋の奥から一枚の紙切れを持ってくる――この国の地図/国を囲むように描かれた円/その中に星型の図形――五芒星/5つの頂点――現在地である東の国境に水色の印。
そして、北に白。東南、橙。西南が緑。最後に――
「うわっ、正反対!?」
――西の頂点に黒い印。
「まだ城に戻るまで三週間近く残っている。期限には十分間に合うだろう」
「そうですね。でも、善は急げです、早速旅立ちましょ――ふぎゅ!?」
立ち上がって駆け出そうとするエルフィ――の足を引っ掛けて転ばす水魔女。
顔面から『バタン』と転倒/追撃――倒れたエルフィの背中を優しく踏みつける。
「まあ、待ちなさい。フィアちゃんに会う前に、聞いて置いてほしい話があるんだから」
「……聞こう」
その表情が、あまりにも深刻だったのでゼクスも真剣に応じる。
水魔女、エルフィさんを開放――起き上がる前に再び席について、ゼクスと会話再開/シリアスな雰囲気/割り込めない空気に、ひとまず言葉を飲み込むエルフィさんだった。
「あの娘は……『黒き魔女・フィア』は悪い魔女なんかじゃないのよ」
それは、エルフィには認めがたい事実。
だから、当たり前のように噛み付く。
「で、でも、伝染病の村を『病気がうつる~』って見捨てたって……」
「魔法で怪我は治せるけれど、病気は治せないの。そういう時は知識を利用して薬を作るんだけど……そのために急いで家に帰った時のセリフがそれだったかな? ちゃんと特効薬開発して、村人全員の病気は治りました~、メデタシメデタシ☆ ってオチだから安心していいよ」
「猫は?」
「その伝染病の感染源が鼠だったの」
「行き倒れた旅人を見捨てたって話は?」
「自力で進めるギリギリの距離に『水』と『食料』と『しばらく生活できるだけのお金』を置いてね。面と向かって良い事するのは恥ずかしいって考えてる恥ずかしがり屋さんだから」
「ラブラブだったカップルを破局させたのは?」
「後で解かったんだけど、男が結婚詐欺師だったの。彼女の方も後で知って、フィアちゃんに感謝して、男に絶望して、百合に走って、新しい彼女と新しい恋に生きてるから……安心?」
「や、焼き芋は?」
「大規模な火を焚くと、上昇気流と煤煙で雨を降らせる効果があるんだよ。雨乞いの儀式☆」
なんというか『アナタ達を助けたくて助けたんじゃないんだからね!』とか言い出しそうなツンデレ救世主っぷりだった。
――……だから、みんな笑ってたんだ。
情報収集したときに村人達が笑いながら話してくれた理由がわかって納得のエルフィ。
しかし、それだとなんで『悪い魔女』なのか解らない。
「……悪い魔女じゃないじゃないですか」
「あの娘はね……王様に『ちんちくりん』呼ばわりされて悪の道に走ったのだけれど、根が善人過ぎて……結果、自称『悪い魔女』な『ツンデレ救世主』になってしまったのよ!!」
「なんですってーっ!?」
「…………元凶、父上なのか」
真実に驚愕するエルフィと、罪の意識を感じてうなだれるゼクス。
ちなみに、二十年前の話は、王国にとって都合の悪い部分は改変されて伝えられています。
だから、黒き魔女は理由なく『悪い魔女』と言うのが世間一般の常識。
――……当事者にすら真実を伝えないとは……まあ、女の子を『ちんちくりん』呼ばわりした結果、息子に『呪い』がかけられましたとは言えないか……。
「だからね王子、あの娘をあんまり叱らないでやって欲しいの」
「……ああ。わかっている」
「いや、それとこれとは話が別でしょ。私は親の罪を子供にかぶせちゃダメだと思う」
空気を読まないエルフィさん。
しかも、いつもは感情論で喋るくせに、こんな時だけ正論な始末の悪さ――たぶん先程水魔女にやり逃げされた復讐/あえて空気を読まなかった確信犯。
ゼクスと水魔女の目が合う――アイコンタクト成立。
「……だからね王子、あの娘をあんまり叱らないでやって欲しいの」
「……ああ。わかっている」
「やりなおしたっ!?」
空気を読まない子は空気扱い。
それが正しい対処方法なのである。
もちろんエルフィはスネたけれど……そこらへんはどうでもいいお話。