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アルス×マグス  作者: KIDAI
第三章 すれ違いと交差
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7 焦り

 時刻は既に午後六時を回っていた。

 太陽は地平線の向こうに沈み、闇が町を飲み込み始める。


「ちくしょう! いねえ」


 ユアンはホテルのロビーにいた。だが明かりが灯り、戸が全開だったにも関わらず、中には誰もいなかった。


「あのじじい、こんな時にどこいってんだよ!」


 落ち着きがなくなっているユアンは、荒い足取りでホテルの三階――昨日ユアンとキャロルが借りた部屋に向かう。そして勢いよく扉を開け放ったユアンだったが、


「くそっ」


 そう吐き捨てただけだった。

 部屋の中もロビー同様、誰もいなかった。端っこに自分とキャロルの鞄が置かれているが、触られた形跡はない。それは昼食を食べに行ってから、誰もこの部屋に入ってきていない事を意味していた。

 その後も他の部屋や風呂場など、様々な場所を探し回った。しかし結果はどれも同じで、誰一人として見つける事ができなかった。


「まだ、帰って来ていない」


 その事実に、ユアンの焦りは増すばかり。

 ホテルの外に出ると、町の中央へと進路を取る。


「後は、教会と広場だけ」


 拳を握り締めて、彼は再び走り出す。


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