6 審問室
「だから俺は違うって! 今来たばかりなんだって!」
ここは『リーヴァリー』の教会。その中にある審問室と言う所。
どういう事をする部屋なのかは、名前の通りだ。
「はいはいそれは何度も聞いた」
部屋の中には机一つとそれを挟むように椅子が二つ置かれている。とても殺風景な部屋で柵が取り付けてある窓が一つと、その反対側に出入りの扉が一つだけ。
黒い修道服を着た神父は扉側の席に座り、その後ろに同じ黒い修道服を着たシスターが立っている。窓側の席には黒い髪に赤い瞳、頬には大きな切り傷を持ち、薄汚れたグレーのジーンズに青いT=シャツを着た三〇代過ぎの男が座っている。
「じゃあ何でさっさと解放してくれないんだ!」
「だからそれもさっきから説明しているように、あんたの身元を確認するまで解放できないんですって」
神父は呆れたような口調で言う。
「がー! こんな事しとる暇なんてねーのに! 何で捕まらなきゃなんねーかな」
「だからそれは──」
「あーはいはい分かってますって、言わずとも聞きましたからそれも何度も」
この町は現在、厳重警戒態勢を取っている。
理由は昼過ぎに市場の真ん中で起こった殺人事件と爆発事件が原因。教会の聖職者は皆、事件解決または事件の再発防止のため、調査及び警備に狩り出されていた。そのため、町の住人ではない『不審』な人物はこうして連行され、身元を調査されるのだ。
「ったく、何で俺が不審に思われるんだよ」
「それは自分の格好を見てから言ってください」
溜め息を付いた神父は後ろに立っていたシスターに何やら書類を渡している。
それを見ていた男は一見落ち着いているように見えるが、内心かなり焦っていた。理由は彼がこの町に来た事と関係している。
(ちっ、なんつータイミングの悪さだ)
神父から視線を反らし、男は歯軋りした。
(悪すぎて嫌な予感しかしねーぞ)