7 一筋の光
静寂が支配する夜の大通りに、一筋の光があった。
その光は剣のように鋭く、強靭だった。
一筋の光は動き回っていた。それこそ目で追うには速すぎるスピードで。数秒、その場に光の残像が残るほどに。闇の中に蠢く複数の黒い影を切り裂きながら。
赤い液体が宙を舞う。混乱しているような低い悲鳴が聞こえる。
次々と地面に沈んでいく影と、その場から一刻も早く逃げ出そうとしている影と、光に対抗しようとする影が入り乱れる。
しかしそれを遠くから見たら、虐殺の現場でも眺めているような一方的な光景だった。
虐殺を行っているのは一筋の光。虐殺に遭っているのは複数の黒い影。
それはまるで光と影の戦いだった。
いや、光による影への一方的な制裁、と言った方が正しいかもしれない。
一筋の光は一つの影を切り裂くと、また新たな影を追って動き出す。
すると一筋の光に対抗していた影の一つが、赤い炎を叩きつけようとする。
轟ッ!! と荒々しく燃え盛る赤い炎は、しかし決して光には届かない。なぜなら炎を出している付け根から斜めに切り落とされ、代わりに絶叫と赤い液体が溢れ出していたからだ。
影を切った光は、また新たな影に狙われる。
巨大なハンマーのような鈍器が一筋の光の上に襲い掛かった。だが光は動じない。その巨大なハンマーを影ごと両断すると、その後ろに銀色に輝く槍と剣を構えていた二つの影の間に一瞬で移動し、横に一線する。
飛沫が舞い、影は倒れて動かない。
徐々に減っていく影。一筋の光は影を切り裂く度に黒く染まり、一回振るって汚れを落とす。
悲鳴、絶叫、怒号に轟音。そして無言がその場の支配権を奪い取る。
両断し両断され、無言に怒号し悲鳴する。
そしていつしか影は消えていた。全滅したのか、どこかに逃げていったのか。一筋の光は標的を失ったことによって動きを止める。
再び静寂が夜の大通りを支配する。
一筋の光は夜空を見上げているように見えた。だが次の瞬間には光は消えていた。
そこに残っているのは、無残に切り捨てられた大小さまざまな影の残骸だけだった。
台詞がないですね、はい。しかも短いしぶっちゃけこれだけじゃ全くわからないと思いますが伏線なんでこれも。




