悪魔の囁き
読み手側によってはホラーに感じるかもしれません
苦手な方はご注意下さい。
少し私の昔話を聞いてください。
ある所に家柄の良いお嬢様がいました。
それはそれはとても美しく清らかなお心もつ素晴らしい女性でした。
私にとってその女性は、まるで天使――
いや、天使の生まれ変わりと言ってもいい程に心酔してました。
その女性はただの使用人の私を「親友」と言ってくれ、愛でてくれました。
とても素敵なお方、私の憧れの人……
私は気づかぬまにその女性に対して良かぬ思いを秘めていたのです。
いつもと変わらない月の綺麗な夜でした。
でも少し違ったのです。
今日は相も変わらず美しいお嬢様の15の誕生日でした。
でもお嬢様の横に立つのは私ではなく、美しい男性でした。
お嬢様は15の誕生日と同時に決められた男性と結婚する事になっていたのです。
その男性はお嬢様と幼少期の頃から仲が良くとてもお似合いでした。
ですが、私は知っていたのです。
お嬢様がその男性との結婚を望まれていないという事を――
いえ、私の妄想とかではありません、本当の事なんです。
お嬢様は、違う男性に恋焦がれていたのです。
私がよく知る男性です。
今日はいないけどいつもはお嬢様の隣に付き添う男性です。
かわいそうなお嬢様……
私はお嬢様を愛していますが、無理強いはしません
愛しているから……
お嬢様の幸せを願うんです。
愛しているから……
お嬢様を幸せにするんです。
愛しているから……
お嬢様を幸せにできるんです。
私は、自分のした事に後悔はしていません
お屋敷が騒がしいのも今の私には関係ありません
お嬢様は私に向かって「魔女よ!」と泣きながら叫んでいますが
それももう今の私にとっては関係ありません
私の事を嫌いになってもいいです。憎くなってもいいです。
私が愛しているから……
お嬢様の服が真っ赤に染まります。
倒れている美しい男性に寄り添います。
私は部屋を出て、お嬢様が恋焦がれている男性を探しました。
自分が何をしたらいいのかもう分かりません
私は魔女なのでしょうか
お屋敷から人々の気配がなくなります。
徐々に私の服も真っ赤に染まります。
でも魔女の私には興味のないものです。
お嬢様に恋焦がれている男性を見つけました。
でもその男性はまるで悪魔を見るような目で私を見ます。
私はその男性にお願いをします。
「あなたはお嬢様を守って……幸せにしてください」
私は──
悪魔は、お願いと言う名の契約をさせました。
契約をした男性は命の変わりに魂に《お嬢様を守る》という宿命を持つ事になりました。
宿命はその名の通り、生まれ変わっても死んでもずっとついてまわる呪いでした。
果たしてお嬢様にとって幸せだったのでしょうか
本当の所は悪魔には分かりません
ただ分かる事がひとつあります。
悪魔はお嬢様を酷く愛してしまったという事だけです。
生まれ変わって時代も変わって二人は出会えたのでしょうか
またその話は別のお話──
これは短編ですが、
一応、現在連載中の「アリスの教団」と関係性があります。
よければ今後ともよろしくお願いします。