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みじかい小説

『みじかい小説』051 / ひとひとりの ~1000文字にも満たないみじかいみじかい物語~

掲載日:2025/12/10


今日も夫と町を歩いていて、ベビーカーを押すお母さんとすれ違った。

ちらりとそちらに視線をやってから夫の顔を覗き見ると、夫もそちらに視線をやっている。

「私たちも、考えなきゃね」

「うん」

それきり、会話は途切れて無言の散歩が続く。

そんな休日を何度か過ごしたある日のことだった。


「ねぇ、今週の日曜は、二人で子供について一緒に調べものしてみない?まずは知識を入れるのが大切だと思うの」

私の提案に、夫は快く賛同してくれた。

子供を持つか持たないか、持つなら何人を計画するかは、人生を左右する一大事だ。


「では、まずは妊娠から出産まで、母親の体の中で何が起こるのかを調べましょう」

日曜日、私はまずその点からスタートした。

妊娠時に夫がどれくらい援助してくれるかは、一生覚えていることだと友人からよく聞いていたので、ここは外せないと思ったのだ。

二人でパソコンを前に、「つわりが来るんだよね」「でもそれって最初の方だけなんじゃない?」「破水って痛いのかな」などと言いながら調べてゆく。


次に、夫が「では次に、赤ちゃんの具体的な生態について調べたいと思います」と提案した。

夫の誘導に従い、赤ん坊が一日に何回おしっこやうんちをするものなのか、おむつはどのようなものを使うのか、ベビーカーは必要なのかなど、まるで自分たちの間に赤ん坊ができたかのように調べてゆく。

そうしているうちに、だんだんと二人のテンションがあがってきて、次は幼稚園、いや、小学校、塾はどうだ、中学校は私立に行かせるのか、高校はどうする、大学の費用はといった具合に話が展開していった。


一通り調べてから、それをまとめたものを二人で見返して、大きくため息をついた。


「人一人育てるのに、こんなにお金がかかるんだね」

私がぽつりと言うと、

「その前に、俺ら二人が健康体で育児に耐えきることが前提だよな。うかうか風邪も引けねえよこれ」

と夫が言った。


「なんか今、両親にめちゃくちゃ感謝」

「それな」

結局、この日はそんな感想を共有して調べものを終えた。


こんな日をいくつか超えた先に、実際に赤ちゃんを育ててゆく日々があるのだと思うと、なんだか果てしない試練が課されているように思えてくる。

でもきっと、この夫となら乗り越えていける。

私はパソコンに向かう大きな背中に、スクラムを組むつもりで、がばと抱き着くのだった。


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