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-柚希6才-さつまいも日和

「こら、熱いから近寄らない」

「はあ~い」


……返事は立派なのに、意味が無いらしい。 僕はいま、6歳の息子、柚希と一緒にオーブンの中のさつまいもを眺めている。


 本当は台所でやっても良かったのだが、買ったばかりのさつまいもを大事そうに抱えて「ぼくも、みるの~!」と人質ならぬ芋質をされては仕方がない。

渋々、僕の目線の高さにあったオーブンをリビングの床に置いた……燃えないよね?


 オーブンの目の前で正座している柚希は、オーブンの暖かさでほっぺが赤くなってきているのに、それでもどんどんと顔を近付けるから、僕は温まるどころか冷や汗との戦いだ。定期的に柚希の左肩の洋服をグイッと掴んで遠ざけてやらないと、いつか本当に火傷してしまいそうだったから。


「おいもさんまだかなぁ~」

「アルミホイルで包んでるのにたのしいか?」

「ん!たのしい」


 ふ~んと、言いながらほっぺに手を当てて、僕は息子の顔見る。 目をキラキラとさせながら、何が楽しいのかじっと見続けてみるが僕にはわからない。


「ぼくね~ようちえんでね~みんなでおいもけーき!こんどつくるの!」

「……へぇ~、楽しそうだね」

「うん! たのしみなんだ~」


 とつぜん始まった会話に僕は一瞬だけ言葉につまってしまった。 それにしても、そうかスイートポテトか。


「美味しくできたらいいな」

「ん!おと~にもあげるの~!」

「本当か? それは嬉しい」


 会話の流れでふわふわな息子の髪の毛をぽんぽんと撫でると、目をぎゅっと細めて満更でもなさそうな笑顔をみせてくれる。 やっぱり僕は君の笑顔が大好きだ。


「んもう~おとーなぁに」

「んーっなんでも、ないよ……おっと、お芋さんそろそろいいかな?」


 今度は、強めに頭をポフポフとしてから僕はミトンを手に、息子と場所を交換する。 「熱いからちかよらないでね、本当に」と一言加えながら。

 そしてオーブンから、お盆の上に1本のさつまいもを乗せる。シャカシャカとアルミホイルの音。 隙間隙間から白い煙がもわもわと出ている。それから、甘そうな香り。 全てが100点満点だった。


「ん~美味しそう~!」

「美味しそうだな~」


 右手はミトン、左手に濡れ布巾。ローテーブルのお盆からそっとさつまいもを持ち上げる。半分に割ろうと両手に力をかけるが、2つの装備をもってしても、熱さが手のひらに随分と伝わってくる。


「あちち」

「あっちち? おと~大丈夫?」

「ん、平気だよ」


 とは言いつつも、あまりの熱さにじんわりと目に涙が溜まってしまうがなんとか、ふわっと芯が半分に割れた。 とろりと蜜の溢れる、綺麗な黄色とオレンジのグラデーションが姿を現した。あまりの美味しそうなそれを見て、思わず喉をごくんと鳴らしてしまった。


「わぁ~すごーい」

「すごいな」


 息子の言葉にニコニコとしつつ、割ったさつまいもを1度お盆に戻してから僕は急いでミトンを外す。 真っ赤になっている両手をパタパタと仰がせる事で少しでも熱さを和らげたかった。


「おと~だいじょうぶ?」

「へーき……ちょっと冷めるまで待ってようか」


 そう言って、ソファーに2人で座る。 なんだか少し疲れてしまって、あくびをひとつ。


「おいもさん、たのしみだねー」

「秋は、絵本にご飯に運動、だからね」

「そーなのー?」







【でもやっぱり、秋は食欲の季節からはじめないと損だろう】

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