第7話 【選抜試験2】
「準備はいいですか?」
「はい」 「おう任せとけ!」
「では開始!」
模擬体が雄叫びを上げた瞬間、会場にいた複数の受験者が同時に動いた。
「よし、俺が先に!」
炎を纏った青年が虚獣へ突撃し、炎弾を放つ。しかし表面を焦がす程度で弾き返される。
「くそっ、硬ぇ……!」
別の受験者は風を操り、素早い動きで死角を狙う。だが一撃を与える前に尻尾で弾き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「ぐあっ……!」
観察席の隊員が静かに言った。
「平均的なB級の力だな。突破力が足りない」
その時、虎ノ介は迷いなく前へ。
「任せろや! 【雷槍・轟】ッ!」
槍に奔る雷が稲妻の竜となり、一直線に虚獣へ突き刺さる。
轟音が響き渡り、戦場の大地が抉れた。
その破壊力はまるで暴風そのもの――見る者すべてに“圧倒的な力”を印象づけた。
「……くぅっ、まだ立つんか!」
虚獣が雷に焼かれながらも踏みとどまる。
虎ノ介は歯を食いしばり、さらに雷を纏って前進した。
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その横で、凛は一歩も動かず虚獣を見据えていた。
瞳から光が失せ、氷の結晶が静かに舞い始める。
「……冷却、開始」
その声は感情を失った機械のようで、同時に人外の冷たさを孕んでいた。
次の瞬間――戦場全体が白く凍りつく。
虚獣の動きが鈍り、息すら凍る。
彼女の放つ冷気は「攻撃」というより「存在の侵食」。
観察席のA級隊員が息を呑む。
「あれは……戦っているんじゃない。氷に“飲み込んでいる”……!」
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「よっしゃああ! 今度こそ仕留めるッ!」
虎ノ介が雷を纏った槍で突進する。
全身を雷鳴と光が包み、巨獣の胸を貫いた瞬間――氷の檻が一斉に砕け散る。
凍結と雷撃が重なり、虚獣は断末魔を上げて崩れ落ちた。
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戦闘終了の合図が鳴り響く。
他の受験者たちは呆然と二人を見つめていた。
「……これが同年代の力、なのか……」
「勝てる気がしねぇ……」
虎ノ介は汗を拭いながら豪快に笑った。
「はぁ~~気持ちええわ! やっぱ全力でぶちかますのが一番や!」
一方、凛はふっと微笑みを浮かべる。
さっきまで冷酷に戦場を凍りつかせていた少女とは思えないほど柔らかな笑顔。
「……良かった、虎ノ介くんがちゃんと決めてくれて」
そのギャップに、観察席の隊員たちは言葉を失った。
「……あの二人、方向性は真逆なのに……どちらもA級の枠に収まりきらない」
虎ノ介達の番が終わった次の模擬戦では....
「次、俺の番か……」
人混みから、一人の青年が歩み出る。
漆黒の制服の袖を捲り上げ、赤い瞳を細める。
「……【紅蓮の王翼】」
瞬間、背中に炎の翼が展開された。
熱風が吹き荒れ、場内の温度が一気に跳ね上がる。
「な、なんだこの熱……!」
他の受験者が思わず後退する。
炎の翼が閃くたびに、空気そのものが斬り裂かれる。
次の瞬間――虚獣型模擬体の首が燃えながら宙を舞った。
観察席がざわめく。
「……あれは圧倒的だ。池上や福宮に匹敵するかもしれん」
「いや……異能の完成度はむしろあの二人以上だ。制御力が異常だ」
虎ノ介は目を輝かせて叫んだ。
「うおぉぉ、めっちゃかっこええ! 炎の翼やって! 燃えるわ!」
凛は冷たい目で青年を見つめる。
「……危うい炎。でも、あの人……躊躇がない」
遥翔は、胸の奥に重苦しい感覚を覚えていた。
(……あいつ。何か、俺とは違う……純粋な強さを持ってる)
朱雀は振り返り、無言で三人を見やった。
その目は、敵を見るでもなく、仲間を見るでもなく――ただ「競い合う者」を見ている目だった。
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