表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
片目の中の君へ  作者: くろーばー
第1章:成長
7/23

第6話:生前の再会

「…エルシア?」


「やっと気づいてくれたぁ。」


「えっと、誰でしょうか?」


「まだ誤魔化すの?もう私の名前を言ったっていうのに?それに君の瞳を通して中を見るとユアンがいるわよ」


「……ここでは、誰かに気づかれるかもしれません」


 再び強風が吹き、目が反射的に閉じる。

 再び、目を開けるとさっきとは違う場所にいた


「ここなら大丈夫でしょ?」


「……はぁ…どうしてここに?」


「ダークエルフの気配を感じて、ここまで3ヶ月かけてやってきたのよぉ…でももうどこかに行っちゃったようだし、君を誘ってみただけ。それでユアンはどうして?」


「ダークエルフの族長がヴァンパイアの毒にやられたそうで、フォール・リーフを摘みに来たらしい。それとここが唯一のアンチド・リーフの群生地みたい」


「それはもうどうでもいいのよ。それよりもユアン転生したのね」


「なぜでしょうね。私自身でも何故転生したのかわからないんだけどね」


「だけど、不運なものよね?記憶を持ったまま転生したのだから、目は開いているけれど左目は見えないのでしょう?それに右腕も失ったまま。そして何よりも、体内魔力が0なこと。」


「悪魔と契約した記憶なんてないんですけどねぇ。魔法が使えないというのがここまで不便なことだとは…」


「生前はあれだけ魔法で活躍したっていうのにねぇ、気の毒よ」


「もういいでしょう?明日の出発は早いんだよ。早く寝かせろ!」


「どこまで行くの?」


「最終目的地はオルヴァ・ヴェレアまで。友達がラフィノスに入学したいというので私が護衛として役回りしたまでだ」


「私もついて行っていいかしら?」


「魔王としての立場はどうする?」


「いやよ、あんな場所でただ座っているだけなんて退屈で仕方ないわよ。」


「…っほんと呆れた人ですよ。初めてあったときはすごく尊敬していましたけれどね。」


「あら?いまも尊敬しているのではないのかしら?」


「…まあいいでしょう。とりあえず明日出発なので、くれぐれも遅刻しないようにお願いしますね」


 ―――宿に戻る。エルシアがついてきている。


「なんでついてくるんですか!?」


「泊まる場所がないんだもん!だから、泊めさせて?」


「魔王かどうか怪しいレベルまで尊厳が失われていますよ…ほんとに…お茶目にもほどがあるでしょ…?」


 とりあえず今日はもう遅いから、早く寝る。エルシアとの会話も疲れる……


 ―――翌朝


 なんか床で寝てるんだけど……エルシアしかやるやつがいない。どこまで私利私欲な人なんだよ…

 日はすでに昇っている。食堂が閉まるまでまだ時間がある。ゆっくり過ごそう。

 とりあえず馬の方を見てこよう。何かあっても困るし。


 ちょうど草を食べていたところだったみたい。こちらが近づいてきたのに気づいてこちらを見て目をパチパチしている。今日からまた頼むぞ!


 部屋に戻るとエルシアが起きていた。


「おはよう、ユアン」


「それと今はルークです。エリスにも前世のことは話していないので、気をつけてください。それとあなたの正体も隠すつもりです。名前はエルシアでいいですが魔王と名乗るのはやめてください」


「朝から難しい話しないでちょうだい。とりあえず、あなたはルーク。私はエルシアね」


「そうです。食堂で朝食が提供されているのでエリスが起きるまで待ちましょう」


「目覚めの魔法でもかけようかしら?お腹が空いて仕方がないのよ…」


「それだけはやめていただきたい。…ほらエリス起きてください。朝食が食べれないまま出発してしまいますよ」


「…るーく…?お腹すいたよぉ〜……」


「おはようございます、エリス。食堂に行って朝食を食べましょう!」


 ゆっくりとした動きで伸びをする。腕を上げて伸びをしているので袖が肘辺りまで落ちている。そこにあるのは細くて白い腕。美しい…

 昨日もこんな感じだったような……


「!?かわいいぃぃ!!!」


 エルシアがエリスに飛びつく。

 エリスが、えっ?えっ?って顔している。これもまたかわいい。エリス、少しの心房だ。この状況を止められる人はだれもいないのだから。


「あなたがエリスちゃんよね?よろしくね、私はエルシア。今日から旅のお供になるわ」


「???」


「そういうわけだ、エリス。今日からお世話になるエルシアさんだ。エルフだから魔法の方は得意なはずだよ。色々聞いてもいいらしいからね」


「エリスちゃん、お腹すいたのよね?食堂で朝ごはん食べようよ」


 ―――食堂にて


「エリスちゃん何食べる?」


「め、目玉焼きで…」


「エルシア、エリスが少し嫌がってますから、少し勢いを落としてください。可愛いのはわかりますですが、暴走しては離れていってしまいますよ」


「ごめんなさい…エリスちゃん。嫌だったよね?」


「いえいえ、ルークからかわいいって言われたので満足ですよ。それにエルシアさん本当はすっごく優しいでしょ?僕の旅についてくれると言うなら嬉しいです!」


 なんとか仲の方は良くなったようで良かった。てか、エリスって私の方からかわいいっていたことなかったっけ?というか、ここまで策にハマっているのか?


 朝食を食べ終えた人から、出発の準備をした。

 エルシアは一文無しなので準備の必要がなかった。本当に魔王なのか?ていうか、ここからエルシアの住んでいるところまで4ヶ月かかるが、どうやって来たのだろうか?

 エリスの方は勉強に使っていた道具を片付けた。部屋の掃除をしてもらった。エルシアも手伝えばいいのだが、拒否していた。わがままだな。この程度でもしたくないなんて情けない

 私の方は、エルシアが旅の仲間になるので食料の不足を考えて調達しに行った。最悪あのエルシアだからエルシアだけ食料なしでもいいが、さすがに怒りを買いかねないので買うことにする


 ―――それぞれ準備を終えて、宿から出る


「それでは出発しますね。」


 日がまだ登りかけの時、私達はベル村を出発した。

 かと言ってなにか起こるわけでもなく、ただただ移動するだけの日々。

 その間に私は魔力がなくても、使える魔法について研究していた。最悪完成できなくてもエリスの入試のときにこんなことを研究していましたという、材料になってもらいたい。


 空気中の魔素を魔力に変換する技術。それなら体内に魔力がなくたって、魔法を使えることができる。威力などは相当落ちると思われるが……


 エルシアとも夜になると研究を手伝ってもらった。本人も完全な知識を持っているわけではないので、参考文献がないと確証は得られないと。


 ―――ベル村を出発した4日後


 出来事が起こったのは夜間。場所は普通の道。大きな岩の横で馬車の中で泊まることにしたときだった


「ユアン、起きて。人の気配がする。危険なことが起きそうな匂いがするわ」


「ほんとお前は鼻が効くよな、予想は的中のようだ、殺意を感じる。…エリスを起こさないようにな。配置は?」


「人数は5人。正面に3人。岩の後ろに1人。右に1人。正面は私が担当するわ。ユアンは右側の一人と岩の後ろの一人を」


「手慣れだね」


「何回誘拐されそうになったことやら…流石に”幼女よりは金にならんけど”と過去に言われたときはカチンと来たけどね」


 ということで私は右側の一人を担当することにした。真剣で人と戦うのは初めて、かと言って手加減するつもりはない。なぜなら、襲おうとしてきているのだから奴らは犯罪者だ。


 人殺しか……こんなときに思い出したくなかったな。

 あのときは仕方がなかったはず…


 ◆◆◆生前◆◆◆

 ―――次元門の調査のとき

 広大な海の中、次元門を探すために荒れ狂う海を超えて調査した。文献では次元門のもとには大陸があると書かれていた。そこを目指し、船を出した。

 調査員に集められたのは

 ユアン筆頭の魔道士軍団、当時の剣聖筆頭の騎士団。

 人数は合わせて12人の少数先鋭部隊


 負けるはずがなかった。個々のレベルはAの中でも最上位に位置する。


 しかし、出会ってしまった。魔王カイザーに。


 この世界で魔王は絶対的存在。真正面から戦っても勝てるはずがない。

 そして悪魔は精神生命体。存在を認識するには外界で魔力を感じ取る必要がある。視覚に頼ることなんてできないのだ。

 そして精神生命体で最も気をつけなければいけないことが憑依されないこと。

 強固な精神力があれば抵抗できるが、心が弱っていると簡単に憑依されてしまう

 憑依されてはもうどうにもすることができない。

 廃人か乗っ取られるか


 幸いにもカイザーは手下のみを私達と戦わせ、自身は身を引いた。


 しかし悪夢はここからだった。

 私の一番弟子が……カイエルが…


 憑依された。


 意味することは、抹殺…


 だから、仕方がなかった。


 ―――しかし今目の前にいるのは犯罪者。何をためらうことはない。


「では、行くわよ」


 エルシアの合図とともに私は馬車から降りた。相手は一人、盗賊としては手慣れていないだろう。


「っは!自ら出てくるとはな。それに右腕もなし、年齢もまだまだだろ?俺も舐められたものだなっ!」


 剣を大きく振りかぶってこちらに向かってくる。隙しかない。それにアレンと比べて動きが遅すぎる。

 さすがアレン。こっ酷くしごかれていたおかげ。


「なっ!?」


 相手の剣を弾き飛ばし、首をスパッ。


 エルシアの方は……遊んでるなぁ…

 岩の裏にいるもう一人の敵を相手するとしよう。


「へぇ?やるじゃん?でも俺は一味違うぜ?」


 相手に身体強化が施される。ただ単純に身体能力が強化されるが、それだけでもこの場面では有効。

 どの程度強化されるかは戦わないとわからない。


「せいぜい、歯ぁ食いしばれよ」


 アレンと同等には速度が追いついたようだな。でも剣の方は全然素人。

 振りかぶりも大きく、動きの方はさっきの相手と何も変わらない。早いだけ。

 身体強化の方は生前学んで来なかった分、様子見と行こうか…


「はっ!なんだよ、逃げてるだけじゃねえか?」


「うるせえな、今集中してるから黙っててくれねえかな?」


 動きは早いが、未だに攻撃の速度は上がらない。威力は上がっているが、エルよりかは落ちる。

 ―――身体強化―――

 魔力を筋肉にエネルギーとして影響を与える。お陰で驚異的な身体能力をエルことができる。

 魔力をエネルギーに変換して、筋肉をいつも以上に動かすので筋肉にありえないほどの負荷がかかる。


 結局のところ、魔力が必要なのは変わりない。負傷した筋肉は回復魔法でどうにかなるね。

 ということでもう用済みなので、排除します。


 エリスの方はどうだろうか……


 きれいに相手を仕留めたいのか、いくつかの魔法を使っている。

 逆に可哀想なほど。


「エルシア?こっちは片付いた。先に寝かせてもらうよ、そっちはちゃんと片付けておいてね」


 馬車に戻って、寝るとしますか。


―――生前の再会―――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ