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片目の中の君へ  作者: くろーばー
第1章:成長
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第3話:旅の始まり

 エリスとの長い長い旅が幕を開けた。

 最初は大きな目標として最も近い王国、アヴェロン王国に向かう。もしかしたらエルに出会えるかもしれない。そう思うとワクワクして仕方がない!

 最近になって、色んな人と関わり心のなかで思う言葉が砕けつつある。人の影響は恐ろしい…

 しかし、会話では未だに敬語を使ってしまう。印象としてはいいので、直そうとはあまり思っていない。


「エリス、旅の内容は聞いていますか?」


「うん!まずはアヴェロン王国に向かうんだよね。」


 旅をするうえで私が懸念することは2つ。

 右腕について聞かれることが多いと思う。アレンからは魔物に襲われて失ったということになっているが、本当は元々失われている。旅の途中で耳が痛くなるほど聞かれると思うが、冷静に事情を話せば理解してくれると思っている。

 今更というような感じではあるけれど、エリスには本当のことは伝えていない。

 そして左目がないこと。家の中では8年という年月を過ごしているため、家の間取り、家具の位置などが正確にわかる。空間認知力が家の中では高い。慣れてるからね。

 でも旅となると全く知らない土地を知ることになる。オルヴァ・ヴェレア王国に着けば生前の記憶を頼りにどうにかなる……と思いたい。


 気にすることはこれくらいかな…魔法は剣でカバーすればどうにかはなる。


 1ヶ月間の旅路予定を発表します!

 スノロム村から出発し、2週間弱かけて王国に向かいます。

 食料などはすでに積んでおり、少し余裕がある程度の食事が2日に一回できる。食料の保管はエリスに一貫してお願いしており、食料を冷凍することで保存期間を伸ばすことに成功。

 エリスの氷魔法があるおかげで成り立っているので感謝です。


 王国についたら、衣服の調達、食料の調達をする。

 私の勝手ですが、今の服装に不満があって…いかにも田舎育ちの剣覚えたて冒険者のような風貌です。

(薄灰色のグロップドパンツに、痩せた黄緑色の半袖。腰にはベルトを巻いた服装)

 生前は魔道士として行きてきた間柄、ローブを身にまとっていないと気がすまない性分でして……


 アヴェロン王国に向けて1日目―――


 朝早く出発したので朝に慣れていないエリスは昼ごろまで仮眠を取っていた。

 スースーして寝ていていて可愛らしい

 見通しが良く、道もある程度舗装されている状態の道を通ったので魔物に襲われるということはなかった。

 それに魔物は夜行性なので昼間に襲われるということはめったにありませんけどね。

 昼になると、エリスが馬車の中で簡単に料理をしてくれた。

 パン、焼いた肉、スープ、果物を振る舞ってくれました。馬にも水や、道端の草、果物を食べさせて一旦休憩を挟んだ。

 午後になるとエリスは勉強を始めた。私自身も暇というとあれですけど、暇です。


「エリス?紙とペンを貸してくれませんか?」


 快く承諾してくれた。ペンは途中で使い物にならなくなってしまう可能性もあるのでとりあえず、5本ほど持ってきてくれたそうだ。紙はいくらでもあるとのこと。

 紙とペンがあれば理論上での魔法の研究ができる。実験はできないけれど…


 生前、魔力を使わない魔法というものを研究していた。不可解な点を残しつつ、魔法は魔力が影響を与える環境下のもとで起こる現象と定義づけて研究は終了した。

 完璧に理論を完成させたわけではないので、学会には発表しませんでした。

 日もそろそろ沈むという頃になりました


「エリス、今日はここまでにしましょう。夕飯の準備は順調ですか?」


「もちろん!こんな環境だから満足できる料理はつくれないけどね」


 夕飯はパンとスープ2杯。エリスの水魔法で食器洗いを済まし、この馬車に書かれている対魔用結界の魔法陣を発動し結界を張って寝た。

 しかし、結界とは考えたものだな。大抵の魔物なら近づかせずに済むのだから。

 そう考えると人は怖い。盗みを働こうとする奴らなんてなおさらだ。


 2日目―――


 相変わらず、生前の習慣か?生まれ変わってからの努力の結晶か?朝が早い。あと数十分もすれば日が昇ってくるだろう。その間に朝食を作るとしよう。

 今の私は魔法が使えないので、料理に使う炎も、飲料用の水も生み出せないので、コップと干し肉、パンを用意する程度しかできない。

 準備が終わり、日が昇るのを待っていると、エリスが起きてきた。


「おはようルーク…今日も早いね…」


「朝食の準備はできてるから、コップに水注いで一緒に食べよう?」


 朝食を食べ終わったら各自でそれぞれの準備をする。

 私は馬の健康状態のチェックと、馬車のチェック壊れているようなら修理する。あとは素振りなどしている

 エリスは、対魔用結界を解除する。ずっとつけていればいいというわけでもなく、多少は人間にも害はある。ほんのちょっとのことだが、積み重なると病気になりかねない。

 エリスが馬にヒーリングをかけ、今日もまた旅がふたたび始まる。


 アヴェロン王国に向かっている途中でスライムを見つけた。

 エリスに見せてあげようと声をかけたが、”ちょっと待って”が来た。

 そうこうしているうちに通り過ぎて、ようやくエリスが”?どうした?”と聞かれ、

「ううん、なんでもない」

 で返した。邪魔して悪かった気持ちが勝ってしまう。エリスに悪気はないのだ。頑張っているんだから。この件について感傷に浸るのは自分だけにしておくとしよう。


 今日の昼食もエリスが用意してくれました。パンに焼き魚、果物、スープ。

(この世界では昼食が一番量が多い。昼食中心文化)

 午後は特にすることもないので少しペースを上げて王国を目指した。


 今夜は別の旅に来ている人たちと出くわした。

 彼らが言うには対魔用結界を持っていないそうで、護衛を3人ほど雇っていた。

 対魔用結界を共有する条件に、夕飯と夜間中の見張りをお願いすることにした。


 3日目―――

 今日も今日で朝が早い。馬車の外に出ると見張りの人が立っていた。3人で連携して一晩中見張っていたのだろう。全く頼もしい人たちだ。


「おはようございます。昨夜はありがとうございます。」


「いえいえ、僕達の務めですから。このくらいどうってことないです!」


「貴方がたはどちらに向かわれるのですか?」


「フロストベール地方に向かっています。依頼者の意図はわかりませんが、迎え届けることさえできれば問題ないので」


 フロストベールか…名前の通りとても寒い。それに名前にベールがついていることから、隠れた秘境として知られている。彷徨えば辿り着くなど行き方は不確かなまま。

 現地の人のみ行き方を知っているそうなので依頼主は出身者なのだろう。


「ありがとうございます。お気をつけて」


 別れの挨拶と感謝を済ませ、エリスと朝食を済ます。馬の体調管理と、馬車の点検を入念に行い、出発する。

 ここから2日ほど同じような生活で進み続けた。


 5日目―――


 そして今日は久々の村についた。時間は昼。

 ベル村と言う。元々ここに村はなかったが、ここの土壌と少し寒い気候が農業に向いており、村として栄えた。

「エリス、ここに一日中滞在しましょう。馬の方も疲れているようですし」


 まだ食糧の方は不足してないが、もしものことも想定して少し買い足しておくとしよう。

 今日は休養目的で滞在しているので、思う存分楽しむ


 泊まる宿は一部屋だけ借りた。料金は安く、それ以上の価値はあるような部屋で、当たりを引いた気分

 借りる前に

「同じ部屋だけど、大丈夫そう?」


「うん。大丈夫。もしかしてルーク気にしてたりするの………?」


 流石に気にしすぎか?

 いや!俺が嫌いって訳で気にしている訳じゃ無い。エリスもすでに6歳…気にすることも多少なりともあると思っての配慮。


 昼飯は宿に近いお店で食べた。さすが農業で栄えた村!破格の安さでこの量!そしておいしさ!文句のつけどころがない!!

 昼食を食べたあとは各自自由時間とした。エリスは宿部屋で勉強をしている。

 私はというと、服屋へ向かいローブを探しているところ。


「えーっと…ローブはありますか?」


「兄ちゃん、剣士みたいな風貌だけど、ローブがほしいのかい?」


「はい…色々理由がありましてね。っはは…」


 店員さんは何は深堀りしてくることもなく、淡々といろいろなローブを紹介してくれた。

 これと言って気に入ったものはなかった。ローブがないと生きていけない、というわけではないので王国までは

 我慢しよう。


 日が暮れてきたので宿に戻ることにした。

 相変わらずエリスは勉強に勤しんでいた。ほんとによくできた優秀な子だ。


「エリス?そろそろ夕飯の時間なので、食堂に向かいますよ。」


「あとちょっとだけ待ってくれない?あともう少しでキリの良いところなんだよ」


 ―――エリスのキリが良いところまで待っている間

 今は、魔力が人体に与える影響について勉強しているようだ。

 対魔用結界がいい例だろう。対魔用結界は魔物を寄せ付けないためのものだが、実際としては結界外一定範囲の魔力を乱すためのもの。

 抽象的な言い分だけれど具体的に話すと、魔物とは魔力で構成された生き物である故その殆どは魔力でしかない。

 そうすると、対魔用結界は本来結界外の魔力を乱すもの。魔物にとってこの乱れは不快に感じて仕方がないという。体の体積に対して魔力の割合が多いほどその不快感は増加していく。魔物は95%以上が魔力なので近寄ってくる可能性は殆どない。

 対して人間は、3%が魔力で構成されている。個人差はあるが、対魔用結界程度でこの割合で不快に感じることは少ない。

 例外として魔力の濃度によっては乱れる隙がない場合がある。その場合は不快に感じることはない。

 簡単にいうと空気か水かってこと。温めた時に粒子の運動量の変化しやすさ。

 人間の3%は魔力で構成されているが、その濃度は非常に高い。なので対魔用結界程度で不快に感じることはめったにない。

 ドラゴンや、巨人ジャイアント、エルフなどの高位種族はいい例。

 天使エンジェル悪魔デーモン精霊フェアリーは魔力からできているわけじゃないので例外。


 少し語りすぎてしまったが、知識を振り返ることも学ぶうえで重要なこと。


「ルーク?キリのいいところまでできたから食堂に行こう!」


 夕飯はパンとハムのような軽い主菜、スープが出された。寝る前に沢山食べると寝れなくなるから、正直にこのくらいの量がちょうどいい。

 大浴場がこの宿はあるそうなので、後で入ろう。エリスはどうかな…?部屋は同じでも良かっただろうけど、お風呂は流石に嫌がると思って、

「この宿、大浴場があるみたいだから入ってくるね」

 と一言告げて、大浴場に向かった。


 ふぅ……この5日間戦闘があったわけではないが、かなり体が臭いというか不快だったのでさっぱりできてよかった。

 肝心のエリスは、部屋で勉強をし続けていた。久しぶりの部屋の中だというので少しやる気が入っているのだろう。


「エリス、この5日間一回も風呂に入ってないでしょ?多少は臭ってたりするから、風呂に入っておいて損はないよ?」


 悪気があって言ったわけじゃないけど、少し傷ついた顔が見えた。別に嫌がらせじゃない。ほんとに。

 今日は少し早いけど、ふかふかのベッドがあるのだから一足先に寝かせてもらう。


―――旅の始まり―――


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