第24話:心開
あの後、お母さんに
”勇者になるなら、まずはルークより強くならないとね”と言われた。
リズなりに考えたら、まずはルークを同じことをすればいいと考えついた。
昨日はあの後すぐに寝た。
馬車は未だに動き続けたままで、夜の間にもずっと移動していたんだろう。
外の景色を見るために幕を開ける。
「リズちゃん、ほら話せるじゃん」
「聞いてたんですね…」
幕を開けて目の前にいたのはフェリックスだった。聞かれていたのは別に嫌ではないが、恥ずかしいといえば恥ずかしい
「別に悪いことじゃないだろ?盗み聞き。それに夢が勇者ってこっちも応援したくなるよ」
「余計なお世話です!」
「昨日とは大違いだな。昨日は話すことすら嫌がってたのに。それで、まずはルークより強くならないとねって言ってたよな。ルークならさっき、あっちの方に走っていったよ」
「!?こんな朝早くから!?」
ルークがこんな朝から鍛錬してたなんて知らなかった。
(王国の中でたまに会ってたけど、いつも私がついた頃にはルークはもうやること終わってたんだ…)
「どうした?早くいかないと置いて行かれるぞ?てか、もう置いて行かれてるか」
「―――身体強化」
リズは身体強化を施して、ルークのもとへ向かっていった。
「まったく、最近の若者は元気だな」
「お前もまだ、24で若いだろ?」
と、エル(34)からの鋭いツッコミがあった。エルにも言える立場なのだろうか…
―――
エリスにしょんぼりされた後、見張りを続けた。この旅の目的はハウルの娘を探すためのものだ。ただついていくだけでは、ただのお荷物だ。
かと言って私にできることは少ない。
他の人達は魔法を使って捜索し、魔力探知は使える前提で進んでいる。
夜になってもお構い無しに進む。
魔物を感知すれば、すぐに情報を交換し、いつでも出迎えられるように準備する。
こちらからは刺激せず、あちら側が引いていくのを待つ。
とうとう日が暮れ、エルシアと交代する時間となった。
「ルーク、そろそろ時間ですわね。」
「わかった。ありがとうございます」
馬車の中に入ると、エリスが勉強していた。机の下に布を引いてすこしでも揺れを減らそうとしている。
こんなことになるならもう少し考えてから来るべきだったと思う。
「ごめんなさい、エリス。こんな勉強しづらい環境で…」
「ううん、気にしないで。僕は大丈夫」
「あまり無理しないでくださいね。こちらとしてもすこし心配しているのですから…」
環境が整っていないと、満足の行くやり方が出来ないのは知っている。だからこその心配。
嫌になって逃げ出してしまうのが一番怖い。人を失うのが怖い。
「それとね、ルーク、僕のことあんまり来なかけなくてもいいよ。無視してってことじゃないけど、ルークはルークで剣に集中してほしいからってこと」
「いや、でも本当の目的はエリスを送り届けることですから…」
「ほら、またかしこまって……はぁ…僕知ってるんだからね。ルークが僕がいない時エルシアお姉ちゃんと楽しそうに話してるの。話し方もぜんぜん違うじゃん」
「実はエルシアと腐れ縁でしてね…タメ語使わないと晴れない鬱憤があるのです」
正直に言うと、心を開けていなかったのかもしれない。こっちのほうが慣れてる。そう自動的に解釈して関係性を気づいていたのかもしれない。
でも、多少はタメ語になってきているような気もしなくもない。しかしがでもに変わったこととか
「ふーん、なんか返せない恩がないといけないんだ〜」
「は!?だからって恩を売ろうとしないでよ!」
「へへっ、やっと本性出したね」
「今日はもう疲れているので、先に寝ますね」
「あっ!ずるい!でも本当に今日は大変そうだったし、おやすみルーク。」
翌朝。
寝心地が悪かったせいなのかすぐに起きた。外に出てみるとエルシアが見張りを続けていた。
「おはよう、エルシア。疲れてない?」
「いいえ、外の景色も見れるし、そこまで大変でじゃなかったわよ」
「魔力探知あるし、見えないとこまで見えるからな…それもそうか…」
何度も言うが、この度の目的はハウルの娘の捜索。私達もたびに同行している以上手伝わないという選択肢はない。
ということで、私は昼間に見張りをする。明るくてよく見えるから。夜間はエルシアに一任している。
「ちょっと、走ってくる」
「交代の時間が来たら帰ってきてね」
馬車から飛び降りて、軽く準備運動をする。寝起き一番で走るとは考えてみるとなかなかおかしい話だと思う。
「!?ルークくん?まだ日も昇ってないのに…元気だね!」
準備運動をしていると団員の一人から声をかけられた。
「強くなりたいので!昨日は体力が足りなくて負けてしまったので、その対策として走ろうかと」
「ホント尊敬するよ。将来すごい人になるんだろうね…いま一緒に同行できてるの自慢できちゃいそう」
「いやいや、そんな…」
話してた団員さんから頑張ってねと言われ、準備運動も終わった。先頭からかなり離れたので追いつくため、先頭に向かって走る。
ほとんど最後尾からものの数分で先頭に追いついた。
「お!ルークじゃねえか!エルから献身的なやつだとは聞いてたが本当みたいだな」
先頭に追いついたらフェリックスに声をかけられた。
「日課ですし、強くなりたいので」
「そうかよ。…それともしかしたらリズちゃんが後から追いついてくるかもしれない。その時は相手してやってくれ」
「リズが…わかりました。」
フェリックスからよくわからないがリズのことをお願いされた。とりあえず今は走る。
走ると言っても何もなく、ただ走っているだけ。
朝日が山陰から差し込んできた。
そろそろ折り返して帰っても良さそうだ。そしたらエルシアと交代するか
折り返して暫く進むと、リズの姿が見えた。リズも走っている。
「お、おはよう…ル、ルーク…」
「おはようございます、リズ」
ぎこちない挨拶をされたルークだが、その背景を知らないので特に気にせず挨拶を返す。
「きょ、今日からリズもあなたと一緒にお母さんに稽古してもらうから…」
「そうですか!一緒に頑張りましょうね」
リズにそう告げてその場から立ち去って馬車に戻ろうとしたら
「ねえ、どうしてそんなにルークは強いの?」
ルークにその答えはわからない。でも答えるとしたら
「ただ愚直に毎日鍛錬してただけですよ」
「……ルークのことだし、本当なんだろうね」
昨日、お母さんが言っていた、”あいつはあいつで認めなきゃいけない”という言葉を思い出した。まだすべてを知ったわけじゃないが、それでも尊敬する気になった。
「私はそろそろ帰りますね。エルシアと見張りを交代しなければいけないので」
「そう、なんだ。ありがとね。」
そう言ってルークは騎士団のもとへ戻っていった。
(なんか、リズすごく晴れてる感じがした。多分何かあったんだろう)
かけてきた時間よりすこしかからず騎士団の元へついた。
「おっ!ルーク、早いな。あれ?リズちゃんは?」
帰ってきて早々話しかけてきたのはフェリックスだ。
「私はエルシアと見張りを交代しないといけないので帰ってきました。あの人交代しないと駄々こねると思うので…」
「っはは!そうか!とりあえず、リズちゃんは先の方にいるんだな?時期に会えるなら問題ない。」
魔物の活性化も収まる頃で、襲われる問題もほとんどない。もし襲われたとしても、確認したとおりだとリズは剣を装備していたので対処できるだろう。
大群で襲われない限り、あるいは上位種族。
「ただいま戻りました。エルシア。」
「おかえり、ルーク。……特に文句言うことないわね」
「おかえり〜そしておはよう、ルーク。」
帰ると、エルシアとエリスが出迎えてくれた。
エルシアの”特に文句言うことないわね”が引っかかるが気にしない。
「それでは、交代しますかエルシア」
「その前に、エリスちゃん何かあるのよね?」
「…一緒に、朝ごはん食べない?」
食べます!
エリスから用意されたのはパン、干し肉、水。
こんな場所だから質素なものだが、そこは気にしない。大事なのは気持ちだ。
私にエルシアの分も用意してくれた。その分味がしておいしい。
「どう?場所が場所だからあんまり美味しくないかもしれないけど。と言うか、在庫にあるものを出しただけだけど…」
「おいしいですよ。ありがとうエリス。」
「エリスちゃんが用意してくれたからおいしいわよ」
「っへへ、よかった」
エリスの顔には笑みがこぼれている。思い返せばアヴェロン王国に着く前も同じようなことをしていたが、観光、豪華な食事、不運にも事件に巻き込まれる。
旅をすることから比べると、アヴェロン王国でしていたことは非日常だ。
一週間と少しと短い期間ではあったが、その思い出は忘れられない深い思い出となっている。
そのギャップが今この瞬間を彩っていた。
朝食を食べている間、見張りが留守になっていた。
もう少しこの時間を過ごしていたいが、旅の本来の目的の使命感に駆られ、ルークは見張りに着く。
「それでは、エルシア。見張りを交代しますね」
「ええ、頼んだわ」
しかし、こう過ごせた時間はもう終わる。それにしばらくは安堵することはできないだろう
「皆!よく聞け!昼を過ぎた頃から森に突入する。見張りの数を2人に増やし、警戒を怠るな!食事の時間は各々の判断に任せる。休息もだ!」
エルの覇気ある声で騎士団員の雰囲気に緊張が走る。
そして、森へと入っていく―――
ーーー心開ーーー




