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片目の中の君へ  作者: くろーばー
第1章:成長
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第11話:始動

 ”!?……………”


 口元に布を当てられ、声を上げられないように、呼吸ができないように、意識を奪うために……


 目を布で隠し、自分の居場所をわからないように、自分で安易に行動できないように、理性を奪うために……


 手足を縛って、連れて行った場所から出ていかないように、手が使えない不自由さを痛感するように、精神を奪うために……



 エリスが目を覚ます。

 でも目の前は何も見えない。あたりを見回しても何も見えない。声を出そうとしても、口が覆われていることに気づく。

 すると、自分は捕まったのだと感づいて、目も覆われているんだとそう思った。

 連れ去られて、早2時間その間もずーっと付けられていたとなると、肌の感触も慣れてくるというもの。


 匂いを嗅ごうとしても、鼻あたりに布が呼吸できる程度に覆いかぶさっているので、匂いも何も感じない。あるのは布の匂い。


 次は体を動かそうとする。これもまた動かない。手足も完全に縛られ、かなりきつく縛られている。体の一を間違え続けていると血が止まって壊死してしまいそうなほど。

 逆にこれくらいじゃないと拘束にならない。


 でもエリスにとってはなんの拘束にもなっていない。捉えた人たちは中々に間抜けな人たちなんだろう。


 ―――魔力探知…


 エリスが静かにそう唱える。そこから判明したのは、今エリスがいるのは2階建ての家の屋根裏。2階には3人ほど、1階には守りが厳重で隠れている人を含めて12人ほど。

 そして自分のいる屋根裏には自分と同じように拘束されている、エリスと年が近い子どもたちが横になっている。体内に流れている魔力量の弱さからかなり弱っていることが分かる。

 屋根裏に危険人物がいないと感じ取れたので、


 ―――ウィンドカッター


 エリスの手足を縛っている縄を切って解く。

 屋根裏にいた子どもたちは、弱っているので探知への反応が薄いので正確な数は数えられなかったが、実際にその光景を見ると、おぞましいことになっていた。


 (…っ!? な、なにこれ……ありえない…)


 子どもたちが山になって、積み重ねられていた。足元を見ても、横になっている子供がいる。おおよそ数えると30人。

 大人も多少混じっている。


 (…っ!これが人がすることなの!?…許せない…)


 一人ひとり生死を確認していく。驚かれて下の階にいる人間たちに気づかれないように、慎重に確認していく。できれば全員助けたいそう思っていることだろう。

 しかし、事はすべてうまく行かなっことのほうが多い。

 あまり驚かれることがない大人を中心的に確認していく、もし気づかれて下の階の人たちが来ても戦力になる。返事があるようなら、拘束を解く。

 肩をゆっくり優しくたたいて、


「大丈夫ですか?あまり大きな声を出さないでくださいね。いまから解きます…」


 拘束を解く前に、騒がないという約束をしてから拘束を解く。じゃないと嬉しさのあまりに叫んだり、踊ったりして気づかれる可能性がある。

 ”大きな声を出さないでください、まだここは敵の本拠地です。”

などの言葉をかけ、まだ緊張を解かないようにと促す。


 大人は総勢4人。それぞれ会話ができるので、これからどうしていくか話し合う。

 とりあえず敵の特徴について話し合った。でもみんな気づいたら捉えられてここにいたそうで有益な情報は得られなかった。

 敵の企みは奴隷としての売却が一番想像がつく。

奴隷売買という単語が出てくると、さすがの大人でも動揺せずにはいられなかった。エリス自身もそうだ、こんな目に合うなんて……そう思って仕方がない。

 それ以上に込み上げてくるのが、恐怖。言われなくても分かるだろう。


 そして、みんな誰かからの助けを求めている。でも、人質として捉えられている以上行動を起こすにもリスクが伴う。一人だけだと言っても、本拠地がバレると考えると考えているので他の人を連れて逃げられる


 相手を知らなければこちらも何もできない。一人がそう言ったので、これ以上の話し合いは無駄だと切り捨てて、唯一下の階へとつながる扉を塞いだ。

 侵入を防ぐために。


 あとの子どもたちはとりあえず解放してあげ、静かにしているように言い聞かせて救助を待つ。

 でも、この事件が明るみになるまで時間がかかると予想される

 故に、これだけの子どもたちを捉えたのにもかかわらず、まだ街では騒ぎが起こっていないということからかなり隠密に事を進めてきたはずだ。


 (…ただ待っているだけだと、助かるまでに時間がかかっちゃう…それにここには食料も何も無い。水なら僕がどうにしてあげられるけど、空腹から精神が安定しなくなって取り返しがつかないところまでいっちゃうかもしれない。)


 待っているだけでは、こちらが消耗されるだけ。

 奴隷として販売するなら、生かしておかないといけない…


 (…もし、敵の目的が本当に奴隷売却なら、死なせるわけにはいかない……!?…食料を渡しに来る!?)


 ドンドンドン!!!

 部屋の中に響き渡る。恐れる子どもたち、大人は近くにある武器になりそうなものを持つ。

 扉を開けられないようにしたと知っていても、この強引にドアを叩く音にさらなる恐怖が立ち込める


「あれ?鍵でもかけたか?」


「お〜い、早くしろよw」


「こんな短時間で死んじまうわけねえだろ?それに拘束してるから、自分で死ぬこともねえしさw」


「普通、腹減って死ぬのがオチだろうがw」


「……?おい、鍵は空いてるぜ?まあぶち壊して入ってもいいだろw」


 (……まずい…このままだと、)


「やっぱ開かねえぜ?なんか詰まってるのか?」


「…?引きドアじゃね?」


 (もう耐えられない……)


 ―――スチームエクスプロージョン


 ◆◆◆ルーク&エルシア視点◆◆◆


 ルークが屋根の上を走っていると、エルシアが空を飛んで爆発が起こった方向へ向かっているのを見かけた。

 エルシアも向かっていると思って、ルークは安心する。

 爆発が起きた場所に警備隊が集まっているのが確認できる。騒ぎに駆けつけてきたようだ。


 しばらく屋根の上を走り、爆発の起きた目的に辿り着く。

 確認できたとおりに警備隊が一つの建物を囲うように配列している。


 (…指揮を取っているのは……エル!?冒険者じゃなかったのか?)


 少し遅れて、エルシアが到着する。エルが異様なエルシアの魔力に反応して、エルシアを一点に観察する。エルシアも敵ではないとアピールしているが、その信用はかなり薄い。


 (…エルシアを疑っているのか?もし、疑いが晴れないままなら戦いになりかねない…)


 エルシアとエルが戦ったら、被害が拡大する一方なのは明白。だから、ルークはエルシアに近づき、エルに向かって、的ではないとアピールする。


「ルーク!!」


 女性にしては低く、大きな声でルークの名を叫ぶ。

 腰に備えている剣を手に掛けつつ、エルが、ルークの下へ向かっている。

 ルークもエルシアもそれに動じない。何も抵抗しない、私達は仲間であると……


 エルが途中で仲間であると気づいたときにはすでに、剣を抜いていた。しかし、今更攻撃を控えるように動きを止めるには短すぎる時間だった。


 ルークとは半年の間、師弟の関係だった。エルもそれなりにルークに思いが入っていた。

 一緒に生活していた時の、ルークのひたむきに努力する姿に才能を感じていた。


 それに、エルとルークには片手がないという共通点があり、それに初めての弟子だった。少ない時間ではあったが、エルの心のなかに残った部分は大きい。

 だから、冷静に判断することができなかった。


 エルシアはこのような場面では賢明で聡明だが、人の心を読むのは難しい。だから、まだ敵と思われていると勘違いし、エルの攻撃を避けず受ける。

 エルは、僅かな時間で急所を避ける。


「…君、何を避けているんだい?」


 エルシアの魔王たる態度だ。

 なにか余裕があり、絶対的なオーラを感じる一言。絶対的な存在からは出てこないだろう口調にギャップを感じる。

 ルークから見れば、何も感じないが…


「ええ、この選択は正しいと思っています。ルークと……お二人は仲がいいのだと感じ取りました。私の勘違いで、このような自体になってしまったことは、謝罪させてほしい。申し訳なかった」


「気にするでない。」


 そうエルシアが告げ、刺された箇所に回復魔法をかける。


「ルークと私らもこの作戦に参加させてもらいたい。私達の友人が巻き込まれている可能性があってな…」


「ああ、こちらからも頼む……」


 エルが作戦の指揮場まで戻っていく。


「見栄張りたかったんだろうと思って、口出さなかったけど正解かな?w」


「ふふん!たまには魔王らしいところ見せないとね。

 それよりも、エリスちゃんはここにいるみたいね。魔力探知でエリスちゃんの姿が見えるわ。」


「ああ、私からも見えている。道中不思議な力を手に入れてね。」


 さっきの雑談はエリスの生存を確認できたからだ。ぼんやりと姿が見えていて、はっきり指先まで見えているわけではない。

 そのぼんやりとした姿が動いているので、無事なことに確信を持てた。

 しかし、爆発の影響もあってか砂埃のような煙が立ち込めている。


「だけど、あの警備隊たちは馬鹿なのかしら?この建物は屋根裏を含めて3階、下から制圧していくと敵は上へ上へと逃げていって、エリスちゃんたちに被害が出てしまうじゃない。」


「エルのことだし、そのあたりは考慮して作戦をねっているだろうさ。彼女だって、Aランク冒険者なんだ。そこまで馬鹿じゃない。それに指揮をしているほどだし、経験もたくさんあるだろうさ。」


 エリスの救出はなんとかうまくいきそう。

 敵の位置関係は2階で色々している。3階には倒れている人が2人。人質として捉えられている人は、3階に溜まっている。


 ルークの作戦としては、ルーク自身身体強化を使えるようになった身として、3階の見張りが手薄な今のうちに人質を避難させる。全員避難完了できしだい、下の階から警備隊が突撃し、3階へ追い詰める作戦。


 敵の能力を知らない分にしては十分な作戦だと思われる。しかし、3階から逃げれるほどの力を持っているとしたら、逃げられるに違いない。

 警備隊としては捉えたいのが本音だろうし、これはできる限り避けたいだろうな


「エルシア、なにか案はあるか?」


「こういう作戦を練る系は苦手なのよ。」


 エルシアはあくまで魔王。エルシアの国では兵を持っているが、指揮権はエルシア自身は持っていない。その役割は元帥がになっている。

 最終決定権は持っているが、重要なときではない限りそれは使われない。

 故に、エルシアは作戦のような軍事的、戦略は苦手である。


「3階に敵はいないみたいだが、今のうちに助けておくか?」


「そうわね……そうしてもいいけれど、避難先が微妙よね…」


 ルークたちが今いるのが屋根の上、3階を見る分には十分な立ち位置。

 しかし、この場所も危険といえば危険である。落ちればひとたまりもない


「なあ、エルシア少し遠いが、あの城壁の上はどうだ?あの上なら、警備隊とかがうろついているだろうし、安全に捕獲してくれるだろう」


「ここから比べたら遠いってことね。全然近いし、問題ないわね。下の警備隊は何をしているのかしらね…早く行動しないと、人質の危険にもかかわるというのにね。まあいいわ、早速避難させていきましょ」


 ルークとエルシアによる人質の避難作戦が始まった。

 爆発が起こったのはルークたちのいる方向から逆向きに放たれたので、ルークたち側から中に入る道はない。だから逆向きに周り中へと入っていく


―――始動―――


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