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転生モブ執事のやり直し ~元悪役令嬢な王妃様の手下として処刑される悪役モブ執事に転生してしまったので、お嬢様が闇堕ちしないよう未来改変に挑みたいと思います  作者: 鳴神衣織
【第4章】蒼天の禍つ蛇

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70.魔導機兵もどき

魔導機兵(マギアソルダート)もどき』


 私はそう呼んでいる。

 あの禁書に載っていた巨大人型兵器である魔導機兵は、現代では再現不可能な幻の()()()()()()()である。


 仕組み自体は単純なのだが、圧倒的に材料が足りない。

 電子基板だの魔導回路だのといった専門的な部品はいっさい必要ない。


 複雑にパーツ構成された魔法金属製の部品で組み上げ、まるで血液のような役割を果たす流体魔法金属(ステラリウム)を全身に巡らせるだけである。


 あとは操縦者自らが魔力を使って流体魔法金属を操れば、手足のように動かせるようになる。


 ただそれだけのこと。


 しかし、肝心の部品が現在流通していない魔法金属でできているうえ、流体魔法金属も膨大な量が必要とのこと。

 何より、それを操るための魔力も技量も現代人ではまったく足りていない。


 そういったことから作りたくても作れないうえ、作ったとしても誰も扱えないのだ。

 それでも、私はこの魔導機兵の技術が何か別のことに応用できるのではないかと考えている。


 たとえば、お屋敷を警護するゴーレムやガーティアンのような、現在知られる魔法造物生命体を遙かに凌駕するポテンシャルを有する金属生命体、あるいは、魔導機兵のように自ら操縦するタイプの兵器に。


 そのための実験として作り上げたのが、目の前にある巨大な物体――人の一・五倍ほどの大きさもある魔導機兵もどきだった。


「ミカエラ様。こちらの進捗状況はどうなっておりますか?」


 私のすぐ真横に移動し、同じように魔導機兵もどき『ガーディアンTYPE〇一』を眺めていた紫のローブを着込んだ彼女に声をかける。


「そうですね。ヴィクター様から頂いた設計図どおりに一応組み上げてはみましたが、肝心の動力部分がまだまだ不完全なようです」

「そうですか」


 私は軽く溜息を吐きながら、どうしたものかと思考を巡らせた。

 このガーディアンはいわゆる試作品なため、見た目はただの木彫り人形のような木偶(でく)の坊。


 しかし、その素体を構成する金属には、ちゃんと高価な魔鉱石がふんだんに使われている。

 そのため、木偶の坊であっても、性能だけ見るとそこらにいる凶悪な魔獣や魔物を遙かに凌駕するポテンシャルを秘めている。


 が、残念ながら肝心の動力――つまり、これを稼働させるための魔導機関をどうするかが決まっていなかった。


 魔導機兵の試作品ゆえ、普通に考えれば流体魔法金属を流し込み、それを操作するという発想になるわけだが、いきなり操縦して人体実験をするにはあまりにも危険過ぎる。


 かといって、こんな魔力の塊のような物体に金属生命体化させたものを流し込み、自動稼働させたらもっと危ない。

 凶悪な自動人形兵器もどきができあがってしまうからだ。


 想定したとおりの動きをしてくれればよいが、そうでなかった場合は……。


 そんなわけで、普通のガーディアンタイプの金属生命体はいくつか既に実戦配備してあるものの、この魔導機兵もどきに関してはまだまだ研究の途上だった。


 もし、これを実用化させられたら、相当な戦力となるのは間違いないのだが。


 ――ただ、そのようなものを陛下が目にされたら、なんとおっしゃるかですね。


 それだけが問題だった。

 このガーディアン製造研究に関しては当然、旦那様は既に了承済みだったが、陛下からは何も許可を頂いていなかったからだ。


 この技術は出所か出所だ。

 下手に情報漏洩などしたらとんでもないことになる。


 しかし、研究を続けるためにはどうしても大量の魔鉱石を仕入れなければならないのと、この時代ではただの石ころとしてしか認識されていない『魔鉱石セレアル』を安定供給させるルートを確立させなければならなかったという事情もあったため、本当に極一部の情報だけは陛下にもお伝えしてある。


 王国内の鉱石事業を一手に管理している採掘ギルドが王家直轄だったため、根回ししなければならなかったからだ。

 その結果、陛下は事情をくんでくださり、なんとか秘密裏の交渉は成立したものの、条件を付けられてしまったのである。


 魔鉱石やセレアルを融通する代わりに、私や公爵家がこれらの魔導研究を行って武具などの強化に成功した暁には、その技術を王宮にも転用するようにと。


 更には、ときどき王宮の仕事も手伝うようにと。

 ただのお嬢様付き筆頭使用人でしかないというのに、私に何をしろとおっしゃるのか。


 ――はぁ。


 思い出しただけでも肩が重くなりますね。

 どうやら私が見出した力に、陛下はいたく関心がおありのようです。


 私としてははた迷惑な話ですが、相場より安価で研究材料を仕入れられるのであれば飲まざるを得ない。

 何より、ただの石ころ同然のセレアルが、市場に出回らずに直接買い付けできるならそれに越したことはない。


 魔導高炉の材料として使用した魔鉱石ではありましたが、それ以外にもまだまだ利用価値の高い鉱物資源らしいですからね。

 それが必須となる様々な古の秘術も存在するらしいですし。


「しかし、本当に……これを見て陛下がどんな言動をお見せになるか。それだけが心配です……」

「はい?」


 溜息交じりの私の呟きに、ミカエラ様がきょとんとされた。

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