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転生モブ執事のやり直し ~元悪役令嬢な王妃様の手下として処刑される悪役モブ執事に転生してしまったので、お嬢様が闇堕ちしないよう未来改変に挑みたいと思います  作者: 鳴神衣織
【第2章】禁呪魔法

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41.失われた素材を求めて1

「ところで、この馬車はどこへ向かわれておられるのですか? どうも、方角がお屋敷の方ではないように見受けられるのですが」


 車内がおかしな雰囲気となってしまってからしばらく経ってからのこと。

 唐突にスカーレット女史が問いかけてきた。


「あぁ、そのことですか。少々野暮用でしてね。今から宝飾店や石材店に顔を出そうと思っているのですよ」

「宝飾店?」

「石材店ですか?」


 スカーレット女史とミカエラ様は、同時にそう声を発せられる。

 今回、わざわざ私自らが街に赴いた理由は二つある。

 一つは当然、お嬢様のパーティートラブルを解決するためでしたが、もう一つは極めて個人的なこと。

 そう。

 例の魔導高炉に必要な材料の調達にある。


『セレアル』


 失われた素材とは記載されていなかったから、必ずどこかで手に入るのでしょうが、現代人にとっては無価値なだけの石ころに過ぎない。

 そのため、発見されてもスルーされてしまう可能性があるため、どの鉱山、もしくはどの地面に埋もれているのか皆目見当もつかない。

 だから人海戦術を使うなり、自分の足で探し回るしかない。


「少々探している鉱物資源がありましてね。酒問屋との交渉が予想より早く片付きましたので、時間いっぱい探してみようと思いまして。そういうわけでして、スカーレット女史。それからミカエラ様。少しばかりお付き合いいただけますか?」

「承知いたしました」


 代表してスカーレット女史がそう答えられた。


「では、まずはここから探してみましょうか」


 事前にあたりはつけてある。

 どこに立ち寄るかは御者に指示してあるので、まずは大商業地区に軒を連ねる大商会に立ち寄った。

 この街区で最大手の宝飾品店であり、公爵家自らが管理している商会でもある。


 シュレイザー公爵家は宝石売買や宝石採掘に関する既得権益を持っており、この国でそれらの売買に携わろうとした場合、必ず公爵家の許可が必要となる。


 もし無断で行った場合、密輸や密売と同義となるため、厳しく罰せられる。

 教会が管理している酒類同様、流通量も管理しているので値崩れなどが起こらないよう配慮がなされていた。


「こ、これは協会長殿のところの……」


 馬車から降りて早速店内へと入ろうとしたところ、入口付近にいたスーツの店員が大慌てとなって腰を折った。

 どうやら馬車の紋章を目にしたようだ。

 酒問屋同様、よくしつけられていて感心ですね。

 さて。問題はその上の者ですが。

 他にも従業員がいたらしく、その者が急ぎ、支配人を呼んできてくれた。


「これは……! ようこそおいでくださいました。歓迎いたしますぞ」


 私と同じでタキシードを着た支配人と思しき品性に優れた男性が慇懃に迎え入れてくれた。

 やはり、シュレイザー公爵家が管理する商会なだけはある。

 さすがに酒問屋のような無礼な態度にはならなかった。


「いきなりのご訪問で申し訳ありません。少々急ぎ、手に入れたい石がありましてね」

「ほほう。石でございますか。して、どのような?」


 店内へと移動した私たちは、禁書に書かれていたとおりの特徴を支配人に伝えた。

 見た目は灰色で、割っても中は光もせず、金属的光沢もなく、魔力反応もない。

 一見すると、本当にただの石ころだが、ただ一点、特徴的なところがある。


「割ったときに、透き通った青い縦縞がある、ですか」

「えぇ。現在の鑑定器具ですと、魔力反応もほとんど出ないような代物ですが、実際には極僅か、魔力が宿っているのです」

「なるほど」


 魔鉱石状態だと、魔力反応が微弱でわかりづらいのだが、禁書に書かれているとおりに加工すると、その縦縞がすべて魔力として活性化し、液化したときに金属内にすべてが溶け込み高密度の魔法金属へと変化する。

 そういったおかしな特徴を持っている魔鉱石だった。


「う~ん。これまで長年、この道に携わってきましたが、耳にしたことはございませんね」

「やはり、そうですか」

「えぇ。採掘場へもちょくちょく顔を出して状況を確認しておりますが、そういった石が出たという話は報告に上がってきておりません」

「なるほど」


 となると、やはり覚悟はしていましたが、見つけ出すのは相当厳しいのかもしれませんね。

 一縷の望みを託して、この禁術を完成させることだけに注力して動き出しましたが、私はやはり、このまま何もなせずに朽ち果てていくだけなのでしょうか?

 ですが――

 お嬢様の幸せな未来を確定させるためには、ここで諦めるわけにはまいりません。


「それでは本日はお忙しいところ、誠にありがとうございました」

「いえ、お役に立てずに申し訳ございません」

「いえいえ。では失礼いたします」


 再び馬車へと乗り込んだ私たちは、次の目的地である石材店へと向かった。

 こちらは墓石や石のまな板、石畳、大理石、かまど、レンガ、その他諸々の石材を取り扱っている店舗である。

 残念ながらこちらは採掘ギルドが管轄となる王家が直接管理している店舗となる。


 既得権益とは違うが、王家が絡んでいる以上、やはり、ギルドを通じてしっかりとした業態の一括化が図られている。

 そういった意味では安心して取引できる業種ではあるものの、公爵家の管轄ではないため、あまり融通は利かない。


 先程の宝飾店より更に西へと向かった西城塞門付近に店舗を構える大型石材店で馬車を降りた私たちは、店内へと入っていった。

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