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転生モブ執事のやり直し ~元悪役令嬢な王妃様の手下として処刑される悪役モブ執事に転生してしまったので、お嬢様が闇堕ちしないよう未来改変に挑みたいと思います  作者: 鳴神衣織
【第2章】禁呪魔法

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33.リセルとの面談1

 昼時となり、お屋敷内が慌ただしくなった。


 基本、使用人は自身がお仕えする主や公爵家の方々がお食事を終えるまで、食事はできない。


 そのため、母屋四階の公爵家専用大食堂にお集まりになった大奥様を始め、奥様、お嬢様、二女のリリアンローゼ様、公子様が食事を終えられるまで、壁となってひたすら待機するのみ。


 本来であれば、私も他の専属侍女たちとともに壁の人となることを義務づけられている。

 しかし、このような身体となってからは特例を与えられ、自由を許されていた。


 そのため壁になる必要はなかったのだが、本日はこのあとリセルと話をすることになっている。

 最初は控えの間で待とうと思っていたが、久しぶりにお嬢様の食事風景を拝見したくなったので、こうして馳せ参じたというわけだ。


 お嬢様は私の姿を目にされると、大変嬉しそうになされた。

 お声がけしてくださろうと動かれたようだが、しつけに厳しい大奥様と奥様がギロリと睨まれたため、ひくっとなって、食事に戻られた。


 その後、本日遅番のマーガレットがリセルと交代し、一時的に、お嬢様に付き従って席を外した。

 その隙に私とリセルは隣室の控えの間で手早く食事をすませてから、三階にある控えの間に入った。


「お昼休みに申し訳ありませんね」

「いえ……私としましては特に問題ありませんので、お気になさらないでください」

「そうですか? でしたらよいのですが」


 このお屋敷には一階以外の各階に、使用人控室がいくつか設けられている。

 一階はいわゆるお客様対応のための階層なので、普段はあまり使われていない。


 しかし、二階以降は旦那様を始め、奥様やお嬢様方が普段おられる場所となっているため、いつでも応対できるようにと、常につきっきりの専属使用人以外でも控えていることが多い。


 そのためのお部屋である。

 今私たちがいる場所もその一つだ。


 中はちょっとした小会議室や休憩所のような作りとなっており、南北に出入口の扉がある。

 中央に小テーブル、その脇に椅子が四つほど置かれている。


 大体椅子の数だけ中で待機していても窮屈さを感じない広さがある。

 ここで打ち合わせをしたり、ときには使用人の教育に使われたりすることもある。

 お屋敷の警護にあたる騎士などが詰めていることもある。


 大抵は、お嬢様方がお勉強やプライベートな時間をお過ごしになりたいときや就寝時など、邪魔にならないようにと控えていることが多い。

 控えの間とはそういう場所だ。


「それでは早速で申し訳ありませんが、本題に入らせていただきますよ」

「はい。ご随意に……」


 テーブルを挟んで向かい合うように座った私たちだったが、リセルは妙にそわそわしているように感じられた。

 いつもは沈着冷静で、ほとんど顔色一つ変えず業務に当たっているというのに、なんだか妙に落ち着かないようだった。

 色白で素朴な凜とした顔色がやや朱に染まっているような気さえする。

 はて?


「まずは最近のお嬢様回りについて伺いましょうか。何か変わったことはありましたか?」

「いえ……特に目立ったことはないように感じられます。以前同様、とてもお元気でらっしゃいますし、活発にお勉強などにも取り組んでおられるご様子です」

「なるほど。それは結構なことですね」

「はい。ただ、もし一つ気になることを挙げさせていただくとすれば、立ち居振る舞いにございましょうか」

「立ち居振る舞い?」

「はい……あの、その……」


 それ以上言葉にならないようで、言い難そうに口ごもってしまった。

 はは~ん。

 これはあれですね。

 言葉にすると無礼に当たる、そういうお話ですか。


「よい。遠慮せず申しなさい。業務連絡ですので度が過ぎなければ不敬には当たりません。きっと、旦那様もお許しになってくださることでしょう」

「は、はい……で、では……」


 リセルはそう前置きし、一度深呼吸をしたあとで、


「今のお嬢様は……その、本当にお可愛らしいのですっ……」

「はい……?」


 私は目の前の女性が何を言ったのか理解できなかった。


「今なんと?」

「いえ、ですから、お嬢様がとっても可愛らしいんです! 以前はどこか、お淑やかながらも粗野なところもございまして、本当にわんぱくで手に負えませんでしたが、今はなんだか、一つの目標に向かって一生懸命前を向いてらっしゃる、そんな気がするんです!」

「そ、そうなのですか?」

「はいっ」


 胸の前で両手を組み、目をキラキラさせながら熱弁するという、今までに見たこともないような姿を前にして、思いっ切り度肝を抜かれてしまった私を余所に、リセルは更に続ける。


「ヴィクター様! あれはきっと、恋をしてらっしゃるのですよ!」

「なっ……こ……」


 私はそれ以上続けることができなかった。

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