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転生モブ執事のやり直し ~元悪役令嬢な王妃様の手下として処刑される悪役モブ執事に転生してしまったので、お嬢様が闇堕ちしないよう未来改変に挑みたいと思います  作者: 鳴神衣織
【第1章】モブ執事のやり直し

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25.公爵家の禁書庫1

 三人連れたち部屋をあとにすると、外の回廊ではメアリー様が待っておられた。


「このたびの不手際、大変申し訳ございませんでした」

「よい。お前が気にする必要などない。すべては俺の思慮が足りなかったことが招いた失態だ。気にするな」

「ありがとうございます。そうおっしゃっていただけると、幾分か心労も解れる思いです。今後はこのようなことがなきよう、下々の教育は徹底いたしますので、どうかご容赦を」

「あぁ。そうしてくれると助かる。だが、あまり厳しくしてくれるなよ?」

「畏まりました」


 メアリー様は深々と頭を下げられたまま、身じろぎ一つしない。

 おそらく、旦那様がこの場を去るまでずっとそのままなのだろう。

 私たちは足早に、その場を移動していった。


「ところでヴィクターよ、引継ぎはどこまでいっておる?」

「いえ、それがまだ……」

「まぁ、そうだよな……」


 昨日の今日で、まさかいきなり護衛が来るとは思いもしなかったうえ、この騒動だ。

 護衛の引継ぎ業務など、進んでいるはずがない。


「お父様」

「ん?」

「先程お婆さまからもお伺いいたしましたが、本当にヴィクターは私の護衛から外れるのですか?」

「あぁ、そうなる。まだ復帰してそれほど経っておらんからな、今後もまだまだ治療やリハビリに専念しなければならんし、そのためには業務の負担を軽くする必要がある。アーデよ、幼いお前でもそれぐらいのことはわかるだろう?」

「……はい。完全に治られたわけではないとは存じておりましたが、やはり、まだお時間が必要ですのね」


 どこかしょんぼりされるお嬢様に私はにっこり微笑んだ。


「心配ご無用でございますよ。護衛の任からは外れますが、今までどおり、執事の業務は行いますゆえ」

「本当ですか?」

「えぇ。四六時中お側でお仕えすることは叶いませんが、朝晩と、必ず業務連絡だけは欠かさずお伺いいたしますのでご安心ください」

「わかりましたわ。ではヴィクター、私、いい子で毎日お勉強に励みますから、必ずいらしてくださいな。そして、頭を撫で撫でして褒めてくださいまし」


「はは。撫でるのはさすがに無礼ですのでお約束いたしかねますが、必ずやお伺い参上つかまつります」

「えぇ。きっとですよ? 可能でしたら、お茶のお時間も是非!」

「はい。伺わせていただきます」


 私とお嬢様は何度も笑い合った。

 その傍らでは旦那様が呆れられたように溜息を吐かれておられたが、このくらいなら構わないでしょう。


「――あ、閣下に、それからヴィクター殿……!」


 遠くの方から勇ましい声が聞こえてきた。

 三階サロンの扉前では律儀にも、二名の女騎士と一人の女魔導士、それから侍女のマーガレットだけでなくリセルまで含めた一同全員が揃い踏みとなっていた。

 控えの間で待機しているようにと命じておいたはずでしたが、どうやら、いたたまれなかったようです。


 私たちは軽く挨拶し合ったあと、場をサロンに移動して、今後のお嬢様周辺警備についての打ち合わせなどを行った。

 それが終了した頃にはすっかりと昼を過ぎ、一度旦那様は軍務大臣の仕事で外へと出ていかれたが、夕時、再び戻ってこられた。

 十五時のお茶のお時間を終えられたお嬢様が次のお勉強のために礼室へと向かわれたあたりで、私は旦那様と合流した。


「ここだ」


 無言のまま連れられていった場所は四階の書斎。

 旦那様が普段おくつろぎになっているお部屋だ。


 室内は入って右手側が一面の書棚となっていたが、旦那様が置かれた本をパズルのように組み替えられていくと、突然、書棚の一部が消え、代わりに扉が現出した。

 どうやら幻影魔法による隠し扉が設置されていたようだ。


 旦那様はその後、首から提げられた金属板をノブのない扉へと押し当てられた。

 その瞬間、何もなかった扉表面にいきなり青色に光る魔方陣が現れ、眩しく光ったかと思ったときには跡形もなく扉が消えていた。


「これは……」

「誰にも言うなよ?」

「そのようなこと、するはずがありません」


 ニヤリとする旦那様のあとに続き、中へと入っていく。

 内部は階段となっているようで、壁にかけられたランタンが人の気配に反応したように、下に向かってどんどん点灯していった。

 どうやらひたすら下へと続いているらしい。

 どのくらいの階層を降りてきたのかわからないぐらい、ただずっと付き従った。

 やがて、階段が終わりを告げ、先へと繋がる狭い通路が前方へと延びていった。


「ここだ」


 通路突き当たりの壁にはランタンがかかっている他何もなく、代わりに左右に、重厚な扉が顔を覗かせていた。

 そのうちの左手側のドアを押し開け、旦那様が中へと入っていかれる。


「これは……」


 私はまたしても絶句してしまった。

 広々とした室内。

 その四方の壁すべてを埋め尽くすように、書棚が配され、そこに数え切れないほどの本や巻物が収納されていたのである。

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