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湿った空気は上昇気流で上空へ行き、雨や雲に変わるという。
同様に、彼女の身のこなしは軽やかで今にも天にも昇りそうだった。
その振る舞いはどこか湿った気持ちを隠す様にも見えた。
別れの挨拶をした彼女の姿は見る見るうちに町の賑わいの中へと溶けて行った。
本当に置いて行かれた。
有無を言わさず置いて行かれたわけではない。
ラピュタンに一応の同意はさせた。多少強引ではあったが。
こうなったらなったで彼もすんなりと状況を受け止める。
「ボクも急がなきゃ……」
ラピュタンは迷わず女神像へと歩み出す。
そしてゆっくりとひざまずくと手を合わせる。
そして、いつものように深い瞑想の中で願いを唱える。
それは小さな小さな声で。
「女神様、どうかボクに友達をください……どうかボクに友達を……どうかボクに友達を……どうかボクに……」
ラピュタンは同じ文句をひたすら繰り返していった。
彼の願いとは『ともだち』を得ることだった。