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「父さんにお使いを頼まれても、アンタはそうやっていつも上の空よね?」
ラピュタンが女神像を気にして、ナミの話に集中していないことを指摘する。
「た、たまにお祈りが気になって迷子になったことは認めるけど……」
じとっと目を細めたナミがラピュタンを見下ろす。
「そうね。迷子にならない為にも、ここにいてくれると私も安心なのよねぇ」
「でも宿を見つけてから来たほうが安心だから、ボクもいく!」
ここで食い下がらねば、ナミが自分を置いて去って行く予感に包まれた。
「いいのよ、やせ我慢しなくても!」
ナミは腰を落としてラピュタンの目線にぐっと近づいた。
やせ我慢と言われたことに対し、ラピュタンは大きく首を横に振る。
そんな彼の反応をよそにナミは優しい微笑みを投げかける。
「だから宿探しはボンパに任せておけばいい。私は色男を探しに……コホッ」
年頃の姉の思考を察し、ボンパは宿探しを一人で引き受けたみたいだ。
あとはナミが10歳のお荷物をどこで切り捨てるのか。
もし、これまでにも繰り返されてきた仕打ちなら、ラピュタンはそう抵抗せずに従っていただろう。
きっとこの仕打ちは初めてのこと。
ナミは笑みを解いて距離を置き、幼い彼に突き付けるように言葉を続けた。