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ジュワユーズの救国王子~転生王子の胃痛奇譚~  作者: 夕霧湖畔
第三部 聖都奪還前婚約闘争
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68.終章 聖都奪還を目指して

※元旦四日目投稿。12/31日からの一日一話投稿中です。

  ◇◆◇◆◇◆◇◆


「本当に、俺達を無傷で解放してくれるのか?」


「勿論だ。武装全てを失った者達は戦死した者として扱う。常識だろう?

 我々は相場の半値で君達の装備を買い取る。それで君達は帝国軍という証拠が無くなり、晴れて自由の身になる。

 後はその金で自由に中央部を脱出なりすると良い。お互いに得をする取引さ。」


 何も敵と戦うだけが戦争じゃ無いんだよ?

 もし彼らを討ち漏らせば、残った者達は盗賊として辺りを荒らすでしょう。

 ですがここで全員を納得させた上で帰国させる事が出来れば、彼らは再び戦線に参加するために高い金で装備と兵糧を整えてくれるでしょう。

 それは帝国の財政を更に圧迫してくれるでしょう。徴兵は只では出来ません。


「因みに港町には高額と引き換えに帝国に脱出出来る裏組織があります。」


 え?ダモクレス船籍?ええ、義勇軍の裏を掻くために帝国船籍が偽装しているんですのよ?我が商会は帝国で繁栄した商会ですもの。

 皆様を逃がすために、我々は安くない賄賂でルートを維持しておりまぁ~す☆


 あぁ。でも彼らが帝国内で無事に故郷に帰れるかは分かりませんねぇ?何せ今の帝国は脱税と賄賂だらけの盗賊天国。武器の無い彼らが盗賊達に襲われたら。

 いえ。そもそも故郷に帰り着くために、彼ら自身が盗賊になるのかも知れませんねぇ?だって武装の無い貴族の安全なんて、誰も保障してくれませんから。


 うけ、うけけけけけ!


「俺の知ってる戦争と違う……。」


 敵軍の装備を回収して部隊の合流を阻止したアレスは、小部隊を見つける度同様の方法で敗走する敵を無傷で削り続けていた。

 流石に帝国の装備を中央部で買い揃える事は出来ないため、彼らは帝国本国に戻る以外の選択肢は無い。そもそも普通に売れば足が付き、本隊と逸れた時点で兵糧も心許無い。無理に聖都へ辿り着きたいとは思わないだろう。

 因みに本隊は追撃の準備を整えている最中だ。休息中とも言う。


「因みにこの帝国軍装の装備はどうするんですかな?」


 ワイルズ王が恐る恐る訪ねる。聞きたくないという表情とは裏腹に、聞かないと安心出来ないという不安が全身から漂っている。義勇軍諸侯に限らず、聖王国諸侯も概ね同じ印象の様だ。


「武器は柄や鍔を外して紋章を取り除いて我々が再利用します。

 防具に関しては壊れてる分は鋳潰して、無事な方は後日帝国領にて高値売却して元を取りますよ。」


 違う、そうじゃないと諸侯の皆さんが口元を抑えながら顔を横に振る。

 敵国、敵国相手なんですよ。帝国の財布を絞る事は、次の増援を阻止して時間を稼ぐ、有効な戦略の一つなんです。飯が無ければ遠征は出来ぬ。


「アレス王子、あと何回追撃を繰り返すお積りですか?

 如何に交代制とはいえ、兵達の疲労も馬鹿には出来ないかと……。」


「ああ。目安としては敵が聖都に到達するまでですね。

 そこで聖都を包囲して籠城の構えを取らせたら一段落です。兵を引き上げて問題無いでしょう。」


「せ、聖都に敵を追い込む気ですかっ!?」


 聖王国諸侯が色めき立つが、アレスは冷静に対応する。


「聖都にはまだ敵の守備隊が万単位で残ってますが?」


「そ、それは……。」


「敵が聖都に戦力を集めれば、他の地域は自由になります。

 聖都を奪還する前に、我々には休息が必要かと思いますが?」


「あ、あれ?」


「せ、聖都の周辺にも帝国兵は残っている筈だが……?」


「ええ。だから聖都に籠城させて、周囲と分断するんです。

 聖都を孤立させれば、後は周辺を各個撃破出来ます。

 それとも聖都近隣を敵が自由に包囲出来る状態で休息を取り、敵が奇襲するか再襲撃の準備を整えるまで待ちますか?」


「い、いや。それは……。」


 あれ?と首を捻る諸侯達。どうも彼らは先の展望があって抗議の意思を示した訳ではなさそうだ。

 尚、何故か義勇軍諸侯達は訳知り顔で聖王国諸侯達の肩を叩く。


「分かるかね?アレス王子と話す時は、常に先の展望が必要だ。」


 あれ?戦略の話をしてたよねぇ?何か変かな?


「戻って来たか、アレス王子。」


 進軍中に別動隊が用意した天幕で休息を取っていたパトリック第三王子が、共に適当に休んでいた諸侯達と共に体を起こす。

 因みにリシャール殿下は一旦ベンガーナ兵と共に城塞に戻って貰った。

 流石に色々急な出撃となった事だし、後方は混乱が抜け切っていない。

 既に緒戦の決着は付いたものとして追撃隊の総大将をパトリック殿下に任せて、今回の事後処理を始めて貰っている。


 後、追撃で全軍が動いたのは初日だけだ。合流中に二度襲撃した結果、帝国軍は容易に合流出来ず、各個に立て直しながら本隊を探す様になったからだ。

 結果、先程の様に各部隊から逸れた一団に裏工作の余地が生れる。

 何せ次の戦場は聖都だ。聖都に逃げ込む兵は少ないほど良い。金なら後日、幾らでも回収の余地はある。


「本隊の位置は確認が取れました。次はブラキオン大公でしたね?」


「ああ。全く老人遣いの荒い奴だよ。」


「ははは、まあ御領内の者達に手柄を立てさせるためです。

 ここは頑張ってあげて下さい。」


 敵が分断された結果、ダンタリオン皇太子の居る軍を交代で二大公が追撃。片方が休息という手筈となった。

 これは防戦を続けて手柄を立てる機会が少なかった両大公への配慮という形ではあるが、同時に一番守りの厚い相手を任せているのは変わりない。

 とはいえ、一番手柄は皇太子なので彼らとしても拒否したくないというジレンマに悩まされているところだ。愚痴の一つくらい安いものだろう。


「では、次の別動隊の担当は誰だ?」


 東西国ラッドネル王太子が疲労困憊という顔で体を起こした。今回の様な連戦と長期に渡る遠征を経験した者は殆どいない。当初こそ手柄を焦っていた王太子ではあったが、今は程々で良いのだと軽い悟りの境地に至っていた。


 因みに分断された部隊の配分は大部隊であれば、クラウゼンとドールドーラ連合軍か旧義勇軍の両軍が交代で。小部隊は両軍の中で適当に、という配分だ。

 手柄が欲しい者は積極的に声を上げ、休息が欲しい者は発言を控える。

 それが二日目の流れであり、三日目は全軍の動きが鈍ってはいた。




「さて。漸く聖都に敵本隊が到達したな。」


 因みに平原で強襲を仕掛けたが、聖都から援軍が出陣したタイミングでこちらは早々に引き上げた。今は帝国軍が合流し、皇太子の生還を喜んでいる最中だ。


 だからこそ。帝国軍はこちらが城の近場で陣を敷き始めていても、阻止のために軍を差し向ける様な余力は無い。

 眼と鼻の先に味方の軍が集まっている以上、皇太子を入城させた後は全部締め出すなどと、流石に許される筈も無いのだ。

 例え目と鼻の先だろうと撤退する軍の邪魔をしないのなら、自ら刺激して城門を閉ざさねばならぬ事態を招く訳には行かない。


 そもそも、敗戦の詳細すらこれから判明する段階だろう。寧ろ城に逃げ込む邪魔をしないという事は聖王国軍にも左程余裕が無いとすら思っているかも知れない。

 そうなれば後でどうとでもなると判断する可能性もある。

 とはいえ全貌が把握すれば、更に出陣はし難くなるだろうが。


「〔鮮血魔狼団〕団長殿は、流石に逃げ込まれたかぁ……。」


 世界最強の傭兵団と名高い〔鮮血魔狼団〕だが、戦ってみた感じ全ての兵が強兵という印象は無かった。だが総数五千以上は明らかに傭兵団の域を越えている。

 その実体はと言えば。


「まさか幹部連中以外は看板を貸しているだけとはねぇ。」


 敗走した帝国兵から聞き出した情報によると、彼らは補充兵と称して現地の傭兵団をまるごと自分達の部隊として雇い入れるという。入れ替わりも激しく時に戦地を移動する際には条件付きで隊の離脱も許可しているらしい。

 そんな傭兵団の集合体で、末端が強い帰属意識を持ち合わせている筈もない。

 恐らく側近と思しき連中はそれなりに討ち取ったし、与えた損害こそ大きかった筈だが再起不能に追い込んだとは言えないだろう。

 故にルトレルを逃した以上、因縁は断ち切れなかったと考えるべきだ。


「俺達の今後の動きは?」


「聖戦軍本体が到着するまでの見張りだなぁ。

 聖戦軍が到着したら、門を固めている部隊に襲撃を仕掛ける。」


 十中八九有り得ないが、それで落とせるならそのまま決着だ。


「じゃあ敵に門を塞がせてから包囲する形か。」


「そういうコト。」


 聖都という殻に閉じこめさせたら、後は中央部全体の解放を優先する。

 それで補給線や国内流通の復活だ。


 城攻めは背後を突かれる恐れを無くしてからで十分だ。焦って補給が滞ったまま聖都という難攻不落の要塞を攻め、消耗したところに敵増援。それが最悪。

 逆に言えば、聖都を長期的に封鎖出来るなら、帝国からの増援を先に片付けると言う手も選ぶ余地がある。の、だが。


「それは、帝国が援軍を寄越さない可能性があるって事か?」


「普通にあり得るだろう?今帝国本土は国内がかなり荒れている。今年一杯援軍を出す余裕が無くっても不思議じゃない。」


 スカサハが呆れた声で、成る程なと頷いて立ち上がる。このまま眺めていても戦局は変わらないと納得したのだろう。

 少し休んでくると言って高台を後にする。


 入れ違いに一人、隣に座る。


「確認します。あなたの秘密は、先日の一件じゃありませんね?」


「ああ。もうこの際、大司教様を救出した時にまとめて話す事にするよ。」


 大司教イザベラ。

 ゲームではイベントで話すだけの、しかし原作でもトップクラスの重要人物。

 かつて魔龍ヨルムンガントを捕らえた、封印魔法ラグナロクの継承者。

 そして。正史では魔龍が既に復活している事を、皆に知らせた人物だ。

※元旦四日目投稿。12/31日からの一日一話投稿中です。

 三ヶ日で終わりと思ったかい?今日が土曜日じゃ無かったらそうしたさ……。

※明日も投稿予定です。理由は今回で第三部終了するので、次回は第四部序章になるからです。予約投稿じゃ無かったら絶対不可能な所業ぞ……(吐血!


 裏工作の内容は敗走部隊を装備を対価に帝国本土へ脱出させる行為の事ですw

 あれれ?決戦の地に戻る兵が妙に少ないな?金無し脱走兵が大量に西部へ流れ込むな?まさか素手で戦えとか言わないよね?武器だけやたら足りないな?

 ハイ!また価格高騰!という工作w

 え、帝国が皇太子に援軍を出さない可能性が在るって?なんでだろうね~?



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