1.第一章 ゲーム開始前、転生直後。
※お正月連続投稿。4日まで毎日一遍投稿致します。
※本日は19時に既に一遍、プロローグを投稿しているのでそちらからご覧頂ければ幸いです。
遥か昔。かつて世界は竜族と巨人族と人族が世界の覇を競っていた。
やがて巨人が滅び、竜族が支配する世となった時。最も強く邪悪な龍、魔龍ヨルムンガントが現れ、己に逆らう生き物全てを駆逐し始めた。
余りに残虐な魔龍の所業に、人族の英雄は竜達と盟約を結び、全ての種族を一つに束ねて魔龍ヨルムンガントに対抗した。
魔龍は己の身体から眷属を産み出し、全ての種族が協力して尚も一進一退を繰り返した。しかし神は全ての種族が団結する姿に感動して、これぞと神は己の手から離れた筈の世界に再び奇跡を起こす決意を固めた。
奇跡の名は、三神具。神は最初に世界を一つにした人族に奇跡を齎し、ヨルムンガントを討ち取る力を与えた。
三神具を得た世界の住民は死力を尽くして魔龍の眷属を退け、ヨルムンガントの討伐に成功する。しかし肉体を失って尚も復活を果たそうとする魔龍の魂を三神具の力を借りて封印に成功し、ようやく世界に平和が訪れた。
英雄達は竜達と語らい、人は平地、竜は山と棲み分ける事にした。
英雄達は人々を導き、一つの王国を築いた。それこそが今に続く全ての王国の祖にして英雄達が築いた最初の王国、聖王国ジュワユーズである。
そして。――数百年の歳月が流れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
『ふ、ふははははっ!遂に、遂に封印を破ったぞ!!
これで我は、世界の全てを我が物となせるっ!!!!!!』
数年前、とある王国が災害によって滅びようとしていた。
王は世界に復讐を誓い、魔龍と契約して世界全てを滅ぼす力を手に入れた。
王は魔龍王ヨルムンガントを名乗り破滅の力を自国の兵士に与え、数年の歳月をかけてヨルムンガント帝国を築き上げた。
魔龍王は逆らう者全てを皆殺しにして様々な邪法を駆使し、陰謀を強行。
破竹の進軍を続け、遂には魔龍の眷属たる邪竜を呼び出し、聖王国ジュワユーズまで陥落せしめた。
これにより世界の国々は団結の手段を失い、帝国は大陸全土へと兵を分散させて世界征服へと乗り出す。
従う国々には重税と徴兵を課し、逆らった国、耐え切れなかった国々は全て余す事無く滅びの道を歩んでいた。
これは、そんな時代に滅亡の危機へ追い込まれた小国の王子の英雄譚――。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「王子に転生じゃないのかよ!主人公って言ったじゃん!」
ゲームオープニングを走馬灯のように思い出しながら。
たった今転生者としての記憶を取り戻した少年アレスは、天に向かって魂の叫びをあげた。今の某、孤児である。
肩の力が抜けると膝が崩れ落ち、L字姿で暫しの間、放心した。
「…………ふぅ。落ち着こうかアレス。クールになるんだ。
君は記憶を取り戻したばかりじゃあ無いか?んん?そうだとも、君は先ず自分の置かれている立場を、正確に把握する必要があるんじゃあないかね?」
因みに声を出しても誰も応えてはくれない。さて、現実逃避終了だ。
尚、親兄弟の覚えは無し。思い出せる範囲だと、あれれ山中で野草や果物食べて生きてた記憶しか無いぞぅ?アレ逆に何でだ?
いや、正直これは嵌める心算も無かった落とし穴かも知れない。
先ずは最初の違和感から思い返そう。
事の起こりは転生直前の初期キャラメイク。
先ず主人公は初期職を選択、次に天稟と呼ばれる才能とスキルを、初期能力値と相談しながら選択するのが通常のゲームの流れ。
この辺はゲーム開始前、名前を設定する時に決める。
そしてゲーム開始時に主人公はオープニングイベントで身体に魔術紋を継承している王家の血筋だと知り、自身が正当な王位継承者だと教わるのだ。
紋章は俗に言う王家の血を引く証拠となる、各王家固有の特殊体質だ。
まあ秘伝とか秘術とか、とにかく普通の魔法では再現出来ない能力を持つので、これが王位継承者の証ともなっている。
まあ全十種しかないので大抵は複数の紋章を継承してるし、王様は自分の紋章を後継者に写す事が出来ます。
まあゲーム的には凄キャラの証なんで、実は一つなら結構継承しているユニットは多いんだよね。血縁を臭わせるギミック的な扱いもされてたり。
で。ぶっちゃけアイテムBOX持ちの王家が主人公の実家ダモクレス王家です。
あと広域マップ感知という、戦闘エリア内の様子が分かる固有魔法付き。
モロにゲームの都合を血筋に絡めた素晴らしい特殊能力(ご都合主義)でつね!
『お?紋章が選択可能になってる?』
目の前に表示された設定画面を操作すると、本来順不同な筈の選択順も自由で、しかも主人公は習得出来ない筈の天稟やスキルも習得可能になっていた。
あとキャラメイク最大の難関である初期値と特徴数が全く連動していない。
『んん?コレひょっとして全部選べる?
各特徴を習得限界数、能力値上限まで獲得出来たりするの?
初期値次第で殆ど選べなくなるコレを全部?』
これは凄い。ラスボス専用技能以外、味方が習得可能な全技能が獲得出来るじゃないですか。え、自由選択ってこういう事?
『え?良いの?自重しないで限界まで取るよ?』
ぶっちゃけ即死対策必須だしLVあるし。
LV1でLV50の敵と遭遇したらどんなスキル有っても負けるし。
必殺とかいうダメージ倍増スキルを持った地味に出る雑魚キャラがクリティカル出すだけで、同LVだと過半数くらい即死するゲームだしね。
ダンジョンと闘技場を駆使して常に敵以上のLVで挑むのが常識のゲームです。
これの現実化って下手なデスゲームより地獄よ?
ま。LVさえ上げればリンチ食らわない限り、全員生存してマップクリア出来るバランスな分、他のマシな筈だけどね?
コンボ前提RPGとか会話ウインドウ無し乙女ゲーとかリアルスペック必須とか運次第で攻略不可とか、絶対やってられませんですよ。
そもそもゲームでは在り得ない状況でも戦術戦略的には有りな状況が遭った際、どう物語が変化するかも分からない。
リアル化というのはそういう事だろう。物語も合理性のあるゲームを選んだ。
なので天稟には半神の血統、半魔の血統、怪人の資質というお前種族なんやねんというシナリオ的に在り得ない特徴を限界数三つ全て選択したスリーポイント。
うへへ。魔法も成長速度も初期スペックも反則級ですわ。
そして王家の紋章って最大五枠あるんだよね。
ゲーム的にも主人公的にも必須の枠は二枠固定。ぶっちゃけ無いとどうなるか分かんないのでこの二つだけは変更無し。
原作はイベントで一枠しか拡張出来ないが、敵は最大五枠のボスが登場します。
なので王家(BOX)、治世(マップ)、軍神(技強化)、賢者(魔力強化)、魔王(魔防強化)の計五つをスラムダンク致しますね。
げへ。大部分の紋章は初期値強化系なのです。全枠取るのが大正義!
(スキルは全26種中の10枠、これも全部最初に埋められるのか。
イベントや店で獲得出来るけど、キャラ専用も多いんだよね。勿論敵専用も。)
敵専用は選択肢に無いので関係無し。まあイベント変わっても困るしね。
ステータスに影響無いなら後に回す必要も無し。というより専用スキルは獲得出来た記憶が無い。キャラ特徴ですから当然ですね、選びます。
『竜気功』全ダメ半減。ほぼボス専用スキルとか超欲しいですね。命大事。
『鉄心』全状態異常を無効化。ぶっちゃけ個別に状態異常防ぐ方法とか即死攻撃以外無いですしね。毒も麻痺もこれ一つ。ぽちぽちぽち。
(『鑑定眼』とかいう主人公限定のステ看破スキルは外せないし、合せて十枠とか厳選するしか無いじゃないですか。)
げひひ。後で獲得出来るスキルは他の味方に回せます。今獲って無駄になる事はありません。ボクだけが幸せになる訳じゃないよ?
主人公強いとみんな幸せ!
『うん。ステ補正だけでバグキャラかな。
でもワタクシ、初期値にも当然妥協しません?』
特に魅力、学識、体格の状態値とかいうイベント用ステ(体格除く)!
作中で上下するとか殆ど変化無いし!キャラごとにイベントが設定されている事はある(成人とか)けど、ほぼ主人公関係無いし!
上限10pで無修正だと15pしか分ける分無かったから、5pずつの魔法使いにしたら魔法使えないし!他で魔法使いキャラメイクしても無駄なんですよ!
魔法使いは学識6必須!高位魔術は7p無いと習得出来ないんですよ!
戦士系は小柄な5pとか重武装不可!武器にも制限掛かりますよ!
ハイ、才能やスキルを削る理由、分かりましたね~?
え?魅力?一部アイテムとかイベントが魅力次第で発生、非発生しますね。
(察しの良い方は気付いたかな~~~?
一部『状態値変化イベ』が、魅力低いと『発生しません』。)
器用貧乏はここでイね!と言わんばかりのリセットポイントでございます。
あと低魅力限定イベントもちゃんとあります。指揮官って人気商売なんだから、謀反系デメリットなのは当然だよなぁ?
『あれ?最大20pだと思ったけど、22pあるなぁ。』
魅力7、学識8、体格7、と。
ワテクシ、魔法の使える騎士を目指しておりますの。
ここまでpがあるなら器用万能だよね。9p以上必要なイベントって流石に覚えが無いし、ゲーム的にも現実的じゃないもん。
(そう。思えばこの辺で気付ける要素は一応あった。)
pが半端って事は、表に無い何かが反映されている可能性があったのだ。
『それじゃ初期職……、ハイロード?何それ知らない。』
何故か初期職が消失。説明を読むと隠しクラスだったらしい。
……あれ?記憶に無いなぁ。
『領主職。通常の手段では昇格出来ず、初期状態で基礎クラス、ハイクラス、特殊クラスの特徴を選択可能。以降転職は出来ない?』
主人公が確定イベントで変化するのが特殊職ロードだった筈。似ているけど微妙に違うのは何でだろう?
『ん~?ハイロードを選んだら、全成長ルートが決まっちゃう職業になるの?
でも昇格による数値が最初から加算されるだけ……なら問題無いのかな?』
むしろ強い?……なら、いっかな。と思ったので、ぽちり。決定。
そして!転生、スタート~~~!
記憶を取り戻したのは今五歳。森の何処かで孤児でした。
(あっはっはっは~~~!そりゃそうねぇ!お前それ何処の王族だよ!
王家に産まれたら『秀才だけど平凡王子』の設定が超絶バグるよ!浮気疑われて捨てられても当然ですね!でもどうすんだよ!)
そうだよ冷静になったら原作設定から既に外れまくってるよ!
原作通りとか有り得ない長所だらけだよ!大陸最強か!潜在能力はなッ!!
落ち着けワシ。未だだ、まだゴールじゃない。スタート前にコケただけ。
先ずは現状を確認しよう。
『鑑定眼』は自分のスペックも確認出来る主人公必須のご都合スキル!
現状把握は一番大事さ!序でに所持品も確認だぞ!
意識飛んだ。
……いや。ステータスは事前の設定通りなんだわ。でもな?
(所持武器欄:聖杖ユグドラシル、神剣アヴァターラ、神剣ウロボロス。)
三!大!シナリオ!超、重要アイテム!
物語の根幹!起点!ラスボス復活用アイテムぅぅッッッッ!!!!!!!!!
(え?コレ持ってたらラスボス復活出来なくない???
コレわたくちこの世界に来る意味あるぅ????)
最低の想定。『盗難品』扱い。
ヨルムンガント帝国が草の根分けて殺ちにきまちゅ。
最悪の想定。『増えてる』。
奪われたら最悪、見られたらイベント確変マシマシ。
(あ。胃液が刃物になって胃壁を襲撃してる。
今なら余裕で血反吐吐ける。)
……………………溶けるわ。
まぁ。それはさておき五歳なら既に帝国は成立中かな?
先ず、生きねば。
※お正月連続投稿。4日まで毎日一遍投稿致します。
※本日は19時に既に一遍、プロローグを投稿しているのでそちらからご覧頂ければ幸いです。
主人公は顔芸がお得意なお調子者、魅力高いのでそこそこイケメン今幼児ですw
※2024/1/9 誤字修正出来ず。治世が順番変えてもルビ付きになる……。
後書きにもルビ移動しているので運営に確認を依頼します(汗)
※1/11 修正確認。対応ありがとうございます。
バグでは無く「漢字の後の()の中に平仮名や片仮名を入力するとルビになるという仕様」とのお話でした。
漢字と括弧の間に半角で縦線|を入力すると本文通りになりました。
どうやら「入力補助機能以外でのルビ入力方法」に該当した様です。後書きや前書きにもルビ入力出来るって書いてありました。
正直気付いてない以前に想像もしてませんでした。入力補助ってそういう意味だったんだ……(汗)。