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ジュワユーズの救国王子~転生王子の胃痛奇譚~  作者: 夕霧湖畔
第二部 義兄弟で主導権譲り争い
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35.第九章 闇司祭の罠

  ◇◆◇◆◇◆◇◆


「はいっ!ドーンッ!!居たよ!来たよ!やっとだよ!」


 アレス王子、只今隠し砦です!知ってましたか?《治世の紋章》には射程距離があるんです!そう、ここに来ないと調査出来ない隠しイベントがあるんです!

 そう、勿論これはゲーム知識です!


 役に立っている様で役に立たない原作知識!チートと言いながらいつも背後から刺してくる!それが原作知識という裏切者の名です!


「遂に、遂に見つけたぞ、暗黒教団の隠れ里を……!」


 全く影も形も出て来ない、けれど()()()()()、暗黒教団です!

 彼らって実は、今話題の皇帝様が魔龍ヨルムンガントに自我を乗っ取られた元凶なんですの!今や帝国の諜報機関の一翼を担い、徐々に国教として表舞台に出始めている暗黒教団は、魔龍ヨルムンガント復活のため暗躍する先兵なんですのよ!


 そしてそして何と!本来であれば、イストリア王国を実質支配していたのは東部方面軍の総大将ブリジット伯爵等では無く。


 実質洗脳状態にあった()()マウザー将軍でも無く、暗黒教団から参謀として着任した闇司祭ゴンブリさんだって知ってましたぁ?


 ブリジット伯爵なんて、今国境際でわちゃわちゃやってる帝国敗残軍達の総大将な扱いだったんですよ?イストリア城に全集結していた彼の腹心武将達って、殆ど全員が東部各地に散らばった、各地()()()()()の方々だったんですの!



……わぁ、物凄いボスラッシュだったね?後で知ったら超イジメだったわ。



 そんな失われた脂汗滲み出る過去はさて置き、東部編では各地で暗黒教団の影がチラつき始めます。各地で武将達に力を与えて強化し、発狂させて。

 彼らは戦場をより凄惨な代物に変え、義勇軍を叩き潰すために暗躍…………。


 いや、本当に影も形も今の今迄見当たらなかったよ?!

 さては薄々気付いてはいたけど、オイラ達の進軍速度早過ぎたんだね?!


 彼ら色々話が進むにつれ、新開発した【闇神具】っていう敵強化アイテムをばら撒いて義勇軍に立ち塞がるんだけどさぁ。


(それって進軍早過ぎると、開発進んでないって事なのかな?かな仮名カナ?)


 いや悪い事じゃないんだよ。でも困る事もあるんだ。何せ今義勇軍で暗黒教団の脅威を説いても『そんな都市伝説の話されても困りますぅ』って話だよね?


 ホラ表向き暗黒教団って()()()()()()から。魔龍ヨルムンガントが眷属を従えて人も支配していたって()()が残っている()()だから。


 でも実はぁ?東部ってサブマップ多めでぇ、半分以上も戦う前に帝国が撤退した地域があるんだよなぁ?帝国抜きに東部諸侯が、敵対する訳無いよなぁ?

 しかもこの先に、教団の隠れ里と東部二つ目のダンジョンがあるんだよなぁ~?


 わっかるかなぁ、この戦力不足感~~~?

 ぶっちゃけ中央部にクラスチェンジしてない部隊ってマジ戦力外なのよぉ?


 うぅん〔白蛇の大洞窟〕って20LV以上はキツイかな?クラスチェンジは25LVが大体標準で、確実なのは30LVなのよ。

 まあ全部隊25LVにしたいなら隠しダンジョン〔悪魔宮殿〕は必須かな?主力だけでも30LVにしとかないと、後辛いんだよなぁ~~?


 割と急いでるけどこの先更に山奥。寄り道、したいなぁ~~?

 原作なら暗黒教団への逆襲って、ちゃんと口実があるんだけどなぁ~~?


 けれどヤッタね!遂に見つけましたよボス闇司祭ゴンブリさん!

 けどあれ?ここって只の樵小屋?隠れ里は大体位置分かったけど、何でコイツ城に向かうでもなく、里に戻るでもなくこんなところに?

 もしかして単に彼、移動中?いや食事中か。

 ま、まぁ?何も企んでないって事は無いよね?間に合ってないとか無いよね?


 一旦必要な情報は集めたので意識を体に戻す。

 目が覚めたベットの脇にはダモクレス騎士のアランとエミールが、後ろを向いたまま扉を見張り護衛をしている。

 彼らの役目はアレスが紋章使用中の警戒と、代わりの伝言を受け取る事だ。


「戻りましたか、アレス様。」


 果たしてアレスが体を起こすと、彼らは早速第一砦に集合していた諸侯軍が本城攻略に乗り出した旨と、ランドルフ第一王子発見の一報を報告する。


「いや。合流は後だ、準備だけさせておいてくれ。

 何事も無ければ彼らだけで本城は落とせる。こっちは第三者の介入に備えて遊撃隊として待機しておく。」


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 城門を破壊した義勇軍が、アカンドリ城内に突入した。

 先制攻撃で城壁の弓兵に奇襲を仕掛けた時点で、彼らに城門を守る手段は無い。

 城壁を掃討する部隊が中庭で魔狼ガルムの管理を引き受けて、乗騎を降りた部隊が続々と宮殿の中へ突入して行く。


 城壁周りを担当するのは既に大将首を挙げた北部軍が中心だ。無理をする必要が無い彼らは、敢えて揉めずとも国王討伐の手柄を譲る余裕がある。

 勿論王が外に逃げ出した場合は、彼らとて一切遠慮する積もりは無い。


 だが先陣を切ったカラード東南候軍を始め、東部義勇軍は着々と敵兵、敵将を討ち取って城内を進む。

 防衛側の志気は低く、しかしそれも玉座の間に付くまでの話だった。


「重騎士隊、前へ!入り口前を何としても確保せよ!」


 玉座の間は門こそ大きめとはいえ、軍が突入するには狭い。玉座周りに集結したアカンドリ兵達は一対他で当たれる現状に士気を持ち直し喝采を上げる。

 向こうには少ないが弓兵も居り、出入り口を破壊出来ない現状では極めて有効な防衛手段として機能している。


 だが敵には魔法使いも少ないため、重装備のナイトやファイターを突入させれば簡単には無力化出来ない。

 故に徐々に義勇軍は着実で堅実に、謁見の間への突入数を増やしていく。


 そこへ一人の伝令が、所属を示す旗を掲げて飛び込んで来た。


「で、伝令!伝令です!

 敵将ランドルフ王子、別動隊により討ち取られました!」


 周囲からおぉと歓喜の声と動揺が広まる。義勇軍にとっては朗報で、城内の彼らにとっては援軍の見込みが途絶えたに等しい。

 だがイストリア王は油断するなと軽く叱責し、敵に意識を戻させる。


「もはや貴殿の命運も尽きたぞ、アカンドリ王!

 素直にこのまま降伏するのであれば、配下の命までは奪うまい!」


 王の宣言に対し、動揺したアカンドリ兵が王の方に意識を向ける。

 だがアカンドリ王は低く堪え切れぬように、徐々に大きく笑い声を漏らす。


「へ、陛下?」


 盾の陰に隠れている兵達が王の異変に気付いて振り向き、息を呑む。

 アカンドリ王の顔は異貌とすら言える程に、醜悪な笑みへと歪んでいた。


「クハハハハハハハハハッ!!」


 まるで我慢出来なくなった様に盾にしていた騎士の背を跳ね上がり、アカンドリ王が義勇軍の重騎士に襲いかかる。

 叩きつけられた戦斧が咄嗟に構えた騎士の盾諸共に兜を叩き割り、脇を走り抜け更なる獲物へと斧を叩き込む。


 だがその膂力は明らかに他のアカンドリ兵達と比べても隔絶しており、並みいる義勇兵達が慌てて迎え撃つ先から弾かれ、叩き飛ばされていく。

 その狂乱振りにアカンドリ兵達すら後に続くのを忘れ、息を呑む。

 だがそれでも我に返ると騎士の一人が突撃と声を上げ、前線との乱戦が始まる。


「な!あ、あれはまさか《自滅の斧》?!

 一体あんな物をどうして?!」


 邪法によって怨霊を注ぎ込まれて作られたと言われ、強大過ぎる力は時に使用者を狂わせ自らを傷付ける事もあるという呪いの武器。

 殆どの国で取引を禁じられた呪いの武器といえど、山賊国家と揶揄されるアカンドリでなら取引があっても不思議では無い。


 だがそれを王族、国王自らが振るうとなれば別の話だ。事実アカンドリ王は既に正気を失っている様に見える。

 何より騎士の一人が放った【真空斬り】を、弾ける様に一瞬広がった魔力の壁が完全に弾き散らすのを見たカラード東南候が驚きの声を上げる。


「な、〔鉄壁紋〕?!まさかアカンドリ王はジェネラルなのか!}


 〔鉄壁紋〕とは魔術的に『鉄壁』スキルを再現したもので、かのスキルの素養が無い者にも修得させられる王家の紋章にも似た秘術だ。

 しかも今のは装備に刻まれたものではなく、明らかに肉体に宿らせた力だった。


 そしてジェネラルというハイクラス修得者のみが昇格出来る特殊クラスにのみ、肉体に『鉄壁』か『魔障壁』の一方を宿す事が出来るという。


「狼狽えるな!『鉄壁』が有効なのは物理のみだ!

 【下位放電(サンダー)】!」


 カラード東南候が放った雷はしかし、先程とは違う硬質の光の壁が放電を遮る。


「ば、馬鹿な!今のは『魔障壁』か?!」


 イストリア王は『鑑定眼』に近い効果を持つという魔法の杖《鑑定の瞳》を再び構えて、杖の瞳越しにアカンドリ王を透かし見る。


【LV25。ジェネラル。『反撃、鉄壁、魔障壁、暴走』。】


「馬鹿な。スキルが増えているだと……?」


 イストリア王は既に玉座の間に突入した時点で一度、かの王の能力を確認した。

 間が悪く周囲への警告こそ間に合わなかったが、その時は間違いなくスキルは『反撃』と『鉄壁』の二つだったと断言出来る。


 当然ながらスキルは戦闘中に閃いたり簡単に体得出来る様な代物ではない。

 それどころか修得が容易と言われる『必殺』スキルですら、生涯修得出来ずに終わる戦士も多い。技術を学んだからと言って、必殺に至るとは限らないからだ。


 加えて『鉄壁』と『魔障壁』。

 どちらも我が身に攻撃を届かせる事無く無効化出来る、殊の外修得難易度の高いスキルだ。両者どころか〔鉄壁紋〕すら完全な体系化は出来ていない。

 強いて言うなら防具に〔鉄壁紋〕を宿しても結局は使い手を選ぶという事。

 『魔障壁』だけは魔術師が秘伝として教わる事があるというくらいか。


 その両方を自在に操る今のアカンドリ王は、理論上あらゆる攻撃を無傷で凌げる事になる。そのアカンドリ王がもし。


 人の身を外れた反射神経を有しているとしたら――。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


「ふむ。何とか間に合った様ですね。

 流石に時間が足りなかったので、中々強引な手筈となりましたが。」


 小さな誰も居なくなった見張り台の奥、闇司祭ゴンブリは暗がりの中で目を瞑り手に握る錫杖に意識を集中し続ける。


 脳裏に描かれる景色はアカンドリ王の背後、影からのもので。

 手に握る《闇の錫杖》に魔力を送り、ゴンブリは《闇の指輪》越しにアカンドリ王の現状を認識していた。


 《闇の指輪》と《闇の錫杖》。

 それらは【闇神具】と呼ばれる〔暗黒教団〕の秘宝であり、所有者を魔龍の忠実な僕へと染め上げる呪いの呪具だ。


 【闇神具】は瘴気で侵食する事で所有者に力を与える。より大量の瘴気を宿す程その恩恵は強くなるが、強過ぎる瘴気は対象の自我を侵食する。

 本来は時間をかけて徐々に馴染ませる事で信者達に恩恵を施し、教団は信徒を増やしているのだが。


 今回のアカンドリ王はあくまで義勇軍に損害を出すための捨て駒だ。

 長々時間をかけている余裕も無かったのは確かだが、それ以上に教団にとっては義勇軍の出現と勢力の拡大は急だった。


 突然降って湧いた不測の事態に対し、教団は予定を変更して威力偵察を命じた。

 それが闇司祭ゴンブリの今回の密命だった。


「全く、教皇様は何を狼狽えているのやら。

 神より賜りし我が秘術を以ってすれば、相手はたかが東部と北部の田舎騎士共を壊滅させるくらい容易い事だと言うのに。

 さぁいでよ我が眷属、レッドドラゴン!」


 地面に生贄の血で描かれた魔法陣に魔力が満たされ、光り輝く紋様と化す。

 場の空気と輝きが揺らぎ、巨大な影が赤い実体を以て姿を現す。

 咆哮を上げ拘束された鎖を引き千切らんと暴れる巨躯は、下手な砦よりも大きく赤い鱗は並の甲冑よりも遥かに頑丈で。巨大な翼はその巨体を上回って広がって。


 火吹き竜ことレットドラゴンは、世界最強種族の呼び声高いドラゴン種族の中で特に気性が荒い事で有名な幻獣だった。


 だが闇司祭ゴンブリは顔を顰めただけで、狼狽える事無く錫杖を掲げる。

 錫杖から放たれた瘴気が竜の首の中に注ぎ込まれ、竜の正気を蝕み汚染して、獣と変わらぬ狂気へと堕とし込む。


「大人しく我が神の僕となれレッドドラゴン。《闇の指輪》が貴様の体内に埋め込まれている限り、お前に正気が戻る事は無い。

 さあ行け!アカンドリ城に攻め込んだ義勇軍の背後を突き、全て諸共に皆殺しにして来るがいいっ!!」




「うぉおおおお!東部でレッドドラゴンとかアカンやろがぃッ!!

 全種族が装備LV3で『竜気功』持ちな空飛ぶチート種族やぞォッ!!」


「うわぁぁっっっ!ホントに寝惚けたみたいにしか見えない!」


 見張りを交代した傭兵・剣姫レフィーリアは、飛び起きながら頭を抱えるアレスを一瞬で正気に戻す言葉の槍を放った。

 主人公の焦りと動揺は、周りに分からない何かが理由である事が殆どですw

 この奇行に慣れて要点だけを話させるコツを掴んだ時、あなたもめでたくアレス王子の側近ですw

 だって大抵の状況には備えているし……。


 後この世界、多分邪竜信仰罪とか普通にある。まあ本人が否認出来る程度の信仰心なら採用されない程度じゃないかな。

 他の罪状無かったら一々捕縛しないだろうし。

 信仰の破棄要求するくらいなら素直に処刑するので、死刑囚なら自白しても一切デメリット無いですw



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