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ジュワユーズの救国王子~転生王子の胃痛奇譚~  作者: 夕霧湖畔
第一部 何故か第二王子転生
17/152

11.第三章 要塞城カルヴァン

※次回は2/12日月曜、振替休日投稿の予定です。

  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 どれだけアレスの胃が捻じれようとも、世間的に義勇軍は破竹の大進撃を続けているし、事実そのものに間違いはない。

 民衆は義勇軍を歓迎し、諸国は影ながら協力を命じる事で己が面目を保った。


 北部全土の盗賊団を粗方掃討した義勇軍はしかし、一方で一部諸侯の暴走と失態も隠し切れず肩身の狭い思いをし、内心では自分達の方が格上だとすら思っていた諸侯達は一様に面目を失う羽目になった。


 結果的に彼らはアレスの評判を高め自分達の最上位に据える事で己が矜持を守らざるを得ず、義勇軍は必然的にダモクレス軍を中心にまとまる形となる。


 それは同時に北方諸国はアレス王子を特別扱いする必要が出たという事であり、次第にダモクレス義勇軍を中心に北方が意志統一され始めていた。


 尤も、それらはあくまで後方、諸国の話であり。

 義勇軍は遂に、東部平定が安定する前に、通称『北壁砦』。

 要塞城カルヴァンへと王手をかけるに至った――。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


「早速だが、我々は東部方面軍を先に叩こうと思う。」


「お、お待ち下さい!流石に東部軍と北壁砦の同時攻撃は不可能です!」


 アレスの提案に軍議へ参加する諸侯は慌てて反論した。

 以前と比べて大分論調が柔らかいのは、既に自分達が対等を主張する事は出来ないと自覚し始めたからだ。


「正しくは、東部の増援軍が動き出したから先に叩こうという話だ。

 そもそも北壁軍と砦外で戦えるならその方が楽だろう?」


 一方アレス自身の口調はそこまで変わっていない。何故ならこの場にいる者達は騎士団長クラスなので、王子であるアレスが遜る相手では無い。

 単純に彼らの態度から不遜さが消えただけだ。


「そ、そう言う話なら……。」


 ダモクレス義勇軍の進軍経路に海路が含まれるとは言え、元より北壁砦は無視出来ない。何故なら北壁が健在である限り、東部は自由に北部へ攻め込める。

 中央や東部が海路を警戒しないのは北部にそれだけ港が少なく、冬場は特に大軍の運用に向かないからだ。

 何より退路が船一択に絞られるのは長期的に見て危険過ぎる。


 そもそも義勇軍全軍を一度に乗せる船は流石に用意されていない。

 補給物資全てを下ろしたとしても不可能だ。前回の戦で二千程度まで減少した点を踏まえても、それは変わらない。


「北壁砦の攻略は絶対だ。だが、東部とて今年は余裕が無い。

 追加の増援をするくらいなら、北壁砦を諦める方が彼らの傷は浅い。」


 事前情報で確認した限り、東部方面軍の指揮官はその辺抜かりないご様子。

 よってアレスは、元より正当法で攻略する気が無かった。




 北壁砦と名高い城塞カルヴァンは、本来山岳地に存在する城塞都市の名称だ。


 都市一つが丸々城であり、実質的な陸の関所であり、東と北を遮る壁であり。

 巨大な岩壁を削り、城壁という名の岩山が城への大軍の突入を阻み。

 国全体が常に絶え間なく戦火に晒され続けたが故に、周囲とは隔絶する程の防衛力を誇っていた。


 だが現在の城主マゲッタ卿はそんな背景など殆ど興味が無い。


 何故なら彼は、多大な犠牲を払って北壁砦を落とした、戦死した前東部方面軍の一将軍では無く。

 空いた空席へ時間稼ぎのために滑り込んだ代理指揮官だったから。


 どれだけ堅牢な城壁も防衛施設も、所詮物量で落ちる程度。偉大なる帝国軍には及ぶべくも無いと、鼻で嗤う程度の代物だった。


「何!東部の田舎者が我々を無視して増援に襲撃を仕掛けただと!」


 直ぐに打って出るぞといきり立ったが、一万の兵で漸く陥落させた城塞を空にするなど許される事では無いと、部下達が揃って青褪めた顔で反対される。


「ふん。まあ確かに雑兵風情に狼狽える話でも無いか。

 だが手柄話を前に手を拱くなど、帝国の恥よ。

 まして援軍を派遣された身ではな。」


「ま、まあそれくらいなら……。」


「では半数だ!増援は二千、ならば千を出兵させる!

 所詮敵軍は烏合の衆なのだ、多くても千は越すまい。ならば守りに千残せばどうとでも対処出来る!」


 尚、この戦の敗因が彼の根拠の無い危機管理能力にあったのか。


 それとも帝国軍による北壁陥落に紛れて潜入し、帝国兵の顔して城塞の詳細を事前調査していた某第二王子の狡猾さにあったのかは、後の評論家視点でも意見が分かれる所だ。


 だがどちらにせよ、役者が違ったと言うのは誰もが認める所だ。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


「そもそも、全てを報告したとは言ってない。」


 にやりと勝利の笑みを浮かべたのは某第二王子アレスだ。

 彼は勝手知ったる北壁の中庭で、大勢の決した突入部隊の指揮を執っていた。

 そう。戦況を報告した()()()、アレス王子である。


 北壁が閉ざす前に兵の一部を傭兵として潜入させていたアレス王子にとっては、攻城戦など左程手間では無かった。

 城壁の兵を入れ替えて味方を密かに招き入れれば良い。生粋の帝国兵は元々多くは無かったのだから。


 そして何より、北壁が鉄壁なのはあくまでその狭い隘路と断崖絶壁を駆使した上での籠城戦のお陰であり、大軍の利を生かせない点にある。

 つまり誘き出された帝国軍は、その隘路を使って戦う限り数を生かせず逆に崖路が彼らを追い詰める事になる。


  更にアレスは少数の手勢であれば幾つかの迂回路を用いて敵の背後に出られるという北壁の特性をゲームで把握しており、現地に実在する事も確認している。

 これだけ条件が揃えば味方が優位な崖道を駆使し、増援だけを挟み撃ちにする事も容易くなかった。


 後は追い詰め過ぎない麓近くの道に陣取り、強行突破し易い様に完全に道は塞がず脇道を固める様な配置で攻め立てた。

 自然帝国軍は北壁より遠ざかり、楽な下り道を勢いのままに走り出す。


 こうなれば誰も上に戻ろうとは思わず、何より自然と崖を下る敗残兵を追撃する形になる。因みに脇道は一つでは無い。追撃戦と足止めは数回繰り返される。

 麓に降りてから反撃しようという帝国軍側の余裕は、いつの間にか総敗北の危機感に追い立てられる。敵兵の数を確認する余裕は何処にもない。


「……幾ら脇道を背にして退路を確保していたとはいえ、まさか六百の兵で千三百を壊滅させる事が出来るとは……。」


 尚、伝令ミスという事にして本来の命令より多く帝国兵を出撃させてる。

 奇襲部隊は麓まで帝国軍を追撃して撤退し、勝利の余韻と共に北壁陥落の連絡を受け取った。


「さあ、我が方の退路は確保した。

 我々の奇襲部隊にも北壁の陥落を伝える様に。」



 一方マゲッタ卿を捕縛したアレスは、東部の増援部隊を迎え撃つため城内の制圧を急ぐ。但し既に大勢は決していたので、後は着実に帝国軍を排除するだけだ。


「もしかして、王子は既に他の要所にも密偵を派遣しておいでで?」


 帝国が多大な犠牲を払った北壁砦を簡単に陥落させた手際に、ヴェルーゼ皇女は複雑な思いで帝国兵と元カルヴァン兵を選別させていた。


 カルヴァン兵も現段階では非戦闘員扱いしないと、帝国捕虜へ復讐に走られたら降伏勧告も無意味になる。

 その分カルヴァン兵を優先して治療を受けさせているので、ちゃんと感謝される立場のまま現状は受け入れられている。


 彼女の今の立場は新設されたダモクレス魔術師部隊の部隊長兼アレスの補佐官という扱いだ。義勇軍の大将補佐なら揉めただろうが、表向きはあくまでダモクレスの人材をアレスが補佐として活用しているだけだ。


 よって現状では誰の目にもアレスの行動は公明正大、慈悲深き盟主に見える。

 裏事情を聞いてるヴェルーゼからみれば、空恐ろしいものすら感じてしまう。


「ああ、流石に全て同時進行とは行かないよ。

 だが北壁だけは避けて通れないからね、隙があるなら利用させて貰うさ。」


 こう言っては何だが、帝国兵は評判が悪かった。

 問答無用で降伏したカルヴァン王を処刑したし、国に忠誠を誓う貴族達の中には嬉々として帝国軍に叛意を翻し、アレスに降伏して協力を申し出た者も多い。

 序でにお互いの不正や賄賂の証拠もこっそり密告して頂いた。


 これらは北壁が新しい指導者を迎える際に、とても役に立つだろう。


「ま。何て言うの?

 真の砦とは人であるとは、まっこと良く言ったものよのぅ。」


 傍に居るのはヴェルーゼだけなので、アレスも渾身の悪い笑みを浮かべられる。

 ケタケタと自由に笑える様になって、胃の痛みがすっと引く様になったのだが。


「しばらく笑ったら仕事に戻って下さいね?」


「……はい。」


 突っ込み無く受け入れられるのもそれはそれで寂しいものがある。

 一応気は済んだので、制圧の済んだ天守を出て中庭の様子を伺いに行く。

 するとどうにもこの場が城内で今一番騒がしい様だ。


 どうやら前門に加え城内よりも先に後門の制圧が完了した事で、敵の残存戦力が全てここに集結しつつあった。


「狼狽えるな!此処を突破すれば我らの勝利ぞ!」


 叫ぶ指揮官に応える声は、防戦中の帝国兵にとって気休めにもならない。

 無論彼らの言う勝利とは砦の奪還等では有り得ない。彼ら自身の目的は既に、城塞からの脱出に切り替わっている。


 だが味方も若干攻めあぐねている。義勇軍からすれば既に勝ち戦だ、手柄目当てに死んでは割に合わない。

 

「百も残っていないでしょうに、粘りますね。」


 既に過半数以上が降伏している状況下で意外にも彼らの士気は高く、何より既に大半が城に入った突入部隊に対し、数で劣りながらも優勢に戦っていた。


「集結のタイミングが良かったんだろうな。

 残念ながら、放置は出来ない。」


 この世界、高LV相手の捕縛は不可能では無いが難しい。なので正当な理由があれば、処刑自体に異を唱えられる事は少ない。

 戦場で捕虜を取る事は必ずしも人道的とは言われない辺り異世界感が強い。


 女子供の処刑は忌避される傾向にあるが、男であれば乱を防ぐための処刑は割とあっさり認められる。

 処刑される程の脅威という意味で、彼らの不名誉にはならないからだ。

 更に言えば復讐は未熟者扱いされるが、お家再興は歓迎される。その割に子供の処刑は歓迎されないので、皆殺しは基本御法度だ。


 つまり降伏しない相手を皆殺しにするのは、悪どころか正義と言って良い。

 アレスとしても流石に味方を危機に晒してまで人道的にはなれないので、早々に参戦しようと。突如ヴェルーゼ皇女を突き飛ばして剣を向ける。


「【スラッシュ】ぅッ!!」


 咄嗟に一帯を必殺剣【スラッシュ】で周囲を薙ぎ払い、アレスに斬りかかった男を強引に後退させる事に成功する。


(今の危ねぇ!しかもきっちり避け切りやがった!)


 一瞬で後方から距離を詰めた男はしかし、再度刹那に距離を詰め。

 牙の様に鋭い二の太刀をアレスと斬り交わす。


(今のは『神速』と『連撃』か!北部にいて良い技量の敵じゃねぇぞ!)


 今の流れで急所を切り払われたら、碌に鍛え抜かれていない義勇軍兵など普通にこの男一人で全滅する。

 ゲームだったらスキルの行使は低確率で済むが、こっちの世界では単なる技術。

 狙いや体捌き次第で幾らでも連発可能な、正真正銘の鬼畜性能になるのだ。


 実際身体能力任せに数合を凌いだが、この数秒だけで危く背後を取られかけるし何より先程はヴェルーゼ皇女が殺されかけた。

 そして一方で、アレスは今の独特な太刀筋と実力に覚えがあった。


「ははは!流石は噂の天才王子!オレの剣を此処まで凌いだ奴は初めてだ!」


「北部最強、剣鬼スカサハか!!」


(おかしいだろ!アンタ盗賊団でやる気なさげにしてる筈だろ!

 何で散々今迄探していた相手がよりによって北壁にいるんだよ!)


――剣鬼スカサハ。

 北部最強と名高き7つのスキルを持つ天才剣士。【奥義・武断剣】に加えて『見切り』まで有するため、ゲームでは常に最強で在り続けた最強の傭兵だ。


 ゲーマーの間では経験値泥棒とすら呼ばれ、同レベルなら全ての攻撃を回避し一人で十体以上の敵を殲滅する事もある強キャラだ。

 イラストも優男ながら気怠げな態度で、生活に困って盗賊達に雇われたものの主人公が倍額払えば嬉々として寝返る有難い存在だった。

 因みに登場が序盤なので、金銭交渉をせずに倒そうとすると大抵全滅する。


 続け様に叩き付けられる剣戟は、受け止めるだけで精一杯。それでも辛うじて姿勢を立て直し、力で強引に弾き飛ばし。再度鍔迫り合いに持ち込まれる。

 叩き付ける様に剣を振るわねば一瞬で切り裂かれる。その実感がアレスの背筋に冷汗となって伝う。


「【下位閃光(レイ)】!」


 後方から光の矢が貫き、しかし狙われたスカサハは無傷で躱す。

「あれを躱しますか?!」


 ヴェルーゼが驚くのも当然だ。光魔法レイは下位魔法ながら全魔法最速と呼ばれ視認しての回避は不可能とされる、光の矢を放つ魔法だ。


 アレスに注意を払いながら死角から放たれた閃光を避けるなど、勘が良いでは済まされない。

 まして今の一撃を躱す際にバク転の要領で背後に飛びずさり、既に剣で追撃するには明らかに困難な距離を取られている。


「あッ!」

「今だ!全員門を突破しろ!」


 誰かが叫び、スカサハの後方へ一斉に多数の傭兵が門に殺到する。

 スカサハが門に近付いた事で、周囲の味方が一斉にたじろいで距離を取っていたからだ。その所為で門の前の兵士達が手薄になっている。


「自衛優先!門の方へ敵を押し込め!」


 咄嗟のアレスの指示に、動揺した義勇兵が慌てて武器を構え向かって来る傭兵達から身を守る。闇雲に抵抗しようとした義勇兵も慌てて門から離れた。

 お陰で門の前に集った兵士を槍で突き倒す余裕も生まれる。


「傭兵共と連携しろ!」

「構うな!諸共に包囲して着実に討ち取れ!」


 帝国兵の残党の誰かが叫ぶが、指揮官を狙う余裕も無い。乱戦は辛うじて避けたが敵将を狙わせるにはスカサハが無視出来ない。


 だがスカサハがアレスに背を向ければ、躊躇無く切り込める間合いにいる。


「判断が速いな!この勝負、次に預けたぞ!」


 だが孤立する前に義勇兵の背後に切り込むと、連携して前に出た傭兵達に容易く紛れるが打つ手も無い。精々が突出した傭兵二人を切り伏せるくらいだ。


「門前の兵は左に寄れ!死兵に付き合う義理は無いぞ!」


「て、敵兵をむざむざ逃がすのですか!」

「追撃する!弓兵を揃えろ!

 それ以外の城内兵は残存兵の掃討に回れ!」


 ムキになる武将を一蹴し、撤退が間に合わなかった帝国兵を着実に殲滅する。

 門が開けられている最中だ、口論している間も惜しい。判断に迷った兵も慌てて指示に従い弓兵を中心に集結する。


「グラットン、城内は任せる!

 弓兵による斉射後、我々は追撃するぞ!お前達も続け!」


「「「はは!」」」


 ヴェルーゼ皇女の用意した馬に飛び乗り、先程反発していた武将にも騎乗の指示を出す。流石の彼も、味方の矢に巻き込まれる気は無いらしい。


 城門前に結集した弓兵に号令して斉射と同時に脇を走り抜け、転んだ者や盾を構えた傭兵達へ向かって殺到する。

 殿を引き受けた部隊を、可能な限り素早く掃討せねばならない。


「くそ!本当にふざけた練度だな!」

 ここまでしてやられるとぐうの音も出ないと、アレスは舌打ちした。




 一方。崖道を下る傭兵団の中にも、アレスと似た感想を抱く者が居た。


「くそ。伊達の用兵じゃないな、手際が良過ぎるぞあの王子。」


「ああ。それに思い切りも良い。

 折角不意を打って挑発したのにあっさり集団戦へ切り替えやがった。」


 岩を背に荒い息を吐く傭兵団長の隣に、同じく額の汗を拭うスカサハが同意して水筒を差し出す。生温い水が乾いた喉には逆に飲み易かった。


 まさか即乱戦を避ける指示を出した上、門前まで空けさせるとは思わなかった。


 当初の予定では適当に混戦を維持して有耶無耶の撤退に持ち込む心算が、あれで距離を取られて立て直された結果。

 敗残兵の半数近くが討ち取られる散々な敗走へと追い込まれた。

 被害の大部分は彼等ではなく帝国兵だが、大惨事には違いない。


――実体としては北部最強の雷鳴に怯み、味方の損失を過剰に恐れたが故の咄嗟の判断だったが、傭兵団長にとっては最悪の対応に変わりはない――。


 傭兵団長もいざとなればスカサハに強行突破させれば一矢報いれると思っていたのに、弓兵に追い散らされた所為で完全に梯子を外された形だ。


 かと言ってもし突出して弓兵に斬りかかったが最後、帝国兵は躊躇無く傭兵達を見捨てて門を閉じただろう。

 流石にそこまでの義理も忠誠心も、傭兵達が持ち合わせる筈も無い。


 帝国兵を盾にしつつ恩を売る作戦が、ものの見事に惨敗だ。この状況で恩を売るのは流石に不可能だろう。

 帝国兵は自分達が門を開けなければ全滅だったと言い張るに決まっている。


「で?実際戦った感触はどうだ。」


「不味いな、今迄で一番手強かった。俺以外を出しても時間の無駄だな。」


「マジかよ。オレ勝てねぇじゃん。」


 此処まで負けるともう相手が悪かったと切り替えるしかない。尤も部下の半数近く失った今、団の立て直しは必須だが。


「おい役立たず共、今まで何をやっていた!」

「あ?」


 惨敗の原因となった帝国武将が、スカサハに睨まれて口籠る。


「城門を抜かれたのはお宅らの責任でしょうに。自分達だけで撤退出来なかった大将さんが随分な物言いですな。

 ちゃんと撤退支援の報酬は払っていただけるので?」


「あぁ?!ふざけるな!そんな金がある訳無かろう!

 文句を言う前にとっとと我々の護衛をしろ!

 金が欲しいなら城の奪還で功績を立ててからにするんだな!」


 団長と話して恐怖が薄れたか、好き勝手喚き出す帝国武将の首がスカサハの手で切り取ばされる。

 合図を出したのは勿論団長本人だった。


「良いのか?」


「ああ、本当の雇い主様にも許可は得ている。

 お前ら残業の時間だ!危険手当を帝国兵様が命で支払って下さるそうだ!」



「ああ、うん。お見事な手際で。」


 休息を取って再追撃に現れた義勇軍騎兵が目撃したのは、武器防具全てを剥ぎ取られた帝国軍の死体だけだった。

※次回は2/12日月曜、振替休日投稿の予定です。


 内通者を用意してマップを落せる戦略シミュレーションなんて、存在する訳無いじゃないw

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